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「フォックスコン大暴動」で思い出した、中国社会の仕組みのこと

今月のはじめ、Apple製品などの組み立てを請け負うフォックスコンの運営する、河南省鄭州市にある工場で、ワーカーが大量に逃げ出した件について扱いました。

そのフォックスコンで、また新たな問題が起きています。22日ごろから、同工場区ではワーカーたちによる大規模な抗議行動が起きているようです。

前回の「大逃亡」は、コロナに関する感染の恐怖が広がったことと、その対応のずさんさから、ワーカーたちが自主的に工場区を離れていったというものであり、混乱はあったものの、人々は基本的には穏便に行動していました。

しかし、今回は勝手が違うようです。多くのワーカーが群れを成して暴れ回っており、あるものは武器を持って周囲を破壊しまくっています。そして、それを大量の警察官が鎮圧しようとしてまた血が流れるという、まごうことなき暴動の様子がそこにあります。

SNSに出回っている動画では、暴徒と化したワーカーが警察車両をひっくり返すものや、警察が催涙弾らしきものを使用している様子を捉えたものまであります。

本質は労働問題っぽい

日本のニュースではこの件を「ゼロコロナへの抗議か」としているものがありましたが、中国語圏で出ている情報を総合する限り、この件の本質はおそらくゼロコロナではなく労働問題です。

おおまかなストーリーはこんな感じのようです(中国語で拾った情報をつなぎ合わせて書いているので、信憑性はそこまで高くありません。話半分で読んでください)。

前回の「大逃亡」を受けて減少したワーカーの穴を埋めるために、同工場は給料などの条件を大幅に上げてワーカーを募集しました。そして実際に相当数の人が集まったようなのですが、その人々がいざ働き出すにあたって契約内容が勝手に変更され、以前の条件に戻ってしまった、ということが起きていたようです。

当然、好条件のために働きに来たワーカーからすれば「話が違う」ということになります。そこで、本来もらえるはずの手当などをめぐって工場側とワーカーの間で交渉が行われていたが、その交渉が失敗し暴動にまでなってしまった、ということのようです。

これを書いている時点(24日午前)では、ワーカーたちに一定の金額の手当て(一人当たり8,000〜1万元程度?)が渡され、それを受け取った人から順次工場を離れるなり、工場に残って働くなりをそれぞれ決めている、という状態のようです。

ただ緊張状態は続いており、支払いが滞ったりすればいつまた暴動が始まってもおかしくないといいます。

この過程で工場の管理側なり、暴動を押さえようとした政府筋の人間が防疫をタテにワーカーに隔離を言い渡したり、その隔離したワーカーにロクに食事を与えなかったというような、ゼロコロナを援用した理不尽なこと自体は起こっていたようです。

それだけでもクソみたいな話ですが、ワーカーの怒りの矛先はそういったことをしたフォックスコンという会社そのものに向いているのであり、ゼロコロナに対して抗議しているというのはあまり適切ではない、と言えそうです。

中国の労使関係と緊張感

なんにせよこれ以上の混乱なく自体が収束することを願うばかりですが、僕はこの件について見聞きしたことで、中国社会のある仕組みのことを思い出しました。

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