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【中国オッサンマガジン】ミルクボーイ風漫才/お題:「鎮」

♪Because We can, can, can…(例の出囃子) 

「「はいどうもー、よろしくお願いしますー」」

「ありがとうございますー。今、1元以下のお釣りがあるときに出てくる小っちゃい飴ちゃんをもらいましたー。こんなんナンボあってもいいですからねー。ありがたいですねー」

「いやー聞いてほしいねんけどな。オカンが、中国の行政単位の名前を忘れたって言うねんな」

「中国の行政単位の名前を忘れるってどういうことよそれー。じゃあ一緒に考えてあげるから、オカンが言ってたその行政単位の特徴を教えてよ」

「オカンが言うには、中国の行政区分では最小の郷級行政区で、中国全土にだいたい20,000箇所くらいあるんやって」

「おー。その特徴は鎮やないか。最小の行政単位でだいたい20,000くらい言うたら、それはもう鎮で決まりやないか。すぐわかったやんかこんなん」

「いやでもな、オカンが言うには、地下鉄がバンバン走ってるらしいねん」

「あー、ほな鎮とちゃうか。鎮に地下鉄がいっぱい走ってるわけないもんね。むしろ「ここに地下鉄の駅ができるらしい」とかいう噂で不当に不動産価格が上がってるのが鎮であって、実際に走ってるのはこれはもう鎮とちゃうわ。決まりやな」

「いや俺もそう思てんけど、オカンが言うには、風景が基本的に赤土色らしいねん」

それは鎮やな! 赤っぽい中途半端な高さの建物と、ガタガタに積まれた小さい工場のレンガと、舗装されてない道から立ち登る砂煙で視界が赤茶けてるのよ! それはもう完全に鎮! 決まりや!」

「俺も鎮やと思てん。せやけどオカンが言うには、日本人駐在員が暮らしていくのに何の不自由もないんやって」

ほな鎮とちゃうやないか! 鎮にエリート日本人が満足するような日系スーパーやら日本と変わらないおもてなしを提供する高級日本料理屋なんてあるわけないやないか! あるのは市場を多少小綺麗にしただけのローカルスーパーと、日本か韓国かどっちつかずの焼肉屋と、サーモンとマンゴー寿司を激推ししてる日本語が怪しい寿司屋だけ! もう分からへんわ、他になんか特徴言うてなかったんかいな」

「オカンが言うには、ボロボロのシェアチャリが稼働してるんやって」

ほな鎮やないか! 交通が発達してむしろ邪魔者扱いされてる城市と違って、現役でシェアチャリが愛用されてるのは鎮やわ! しかもマナーが悪いから鍵が壊されてたり、QRコードにタバコが押しつけられて読めなくなってたり、GPSを頼りに探しに行ったらチャリが人ん家の中に置いてあるんが鎮やないか! もしこれ以上シェアチャリの治安が乱れるなら、俺は動くよ! 他には?」

「オカンが言うには、インスタ映えしそうやって」

ほな鎮とちゃうやないか! 鎮に港区女子がキャッキャするようなバエるスポットやらスイーツのお店があるわけないやないか! あるのはTwitterに入り浸るオタクしか好まないような写真映えしない工場区と、どうやって生計を立ててるか不思議なくらい客が入ってない汚い沙県小吃と、乱立しすぎてどれが本物か偽物かわからんようになったミルクティー屋だけや! そもそも鎮でインスタ使えへんしな! あ、でもそれは城市も同じか! もうどないなってんねや!」

「いや俺も全然分からへんねんけどな、オトンが言うには、ニューヨーク五番街ちゃうかって言うててんけど」

「いや絶対ちゃうやろ! もうええわ!」

「「どうも、ありがとうございましたー」」

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