20年ぶりに家族みんなで買い物に行った話

父方の祖母が亡くなった。原因は癌だそうだ。
手術しようにも体力的に厳しく先延ばしにすることしかできなかった。


年末年始に帰省した際祖母に会う機会があったのでおよそ10年ぶり、母方の祖父母の葬儀以来顔を見に行ったばかりだった。
父方の実家は相当な田舎で交通手段が乏しく、高速道路で片道2時間の距離。中学になってからまとまった時間がとれずそれっきりだった。

容体が悪いのは前々から知っていたがコロナ禍で父親すら面会することもできず。
日に日に悪くなる一方で今のうちに・・・と提案されたのが年末だった。


正直自分はじじばばが大の苦手である。
知らぬ間に「老害」などと揶揄する言葉もネットで生まれ、多用せずとも嫌悪の対象だったので全面的に否定はしなかった。
老化により判断力が鈍る・大声で喚く・加齢臭・・・周りに迷惑かける前にこの世を去りたいと思うほど。

加えて変な話、自分はB専?とかいう癖もないのだが父方の祖母は美人のように思えた。
皮膚が垂れることもなく肌も綺麗で、実際に写真など見たことはないが若い頃から大きく変わってないのだろうな、と思わせる風貌だった。
遠方というのもあり恐らく10回も会ってないだろうが優しく温かい人だった。


祖母の葬儀のために東京から約2時間半。そこから葬儀場まで父親が運転する車に乗るのだが、家族みんなが揃ったのは母方の祖父母の葬儀以来。


家族と父親とで亀裂があるのは以前書いたことがある。

それだけに今回の葬儀も行くかどうか正直迷っていた。
冷たい話が年末年始に一度顔を見たから行かなくても良いのでは、とすら思っていた。
しかし嫌悪の対象なのは父親であって祖父母ではない。
結局断る理由もなく渋々参列することになった。
参列者の中で一番遠くから来てるのが自分なのに、行きの新幹線の中で受付を頼まれたりと不満が募る道中だったが。


新幹線の本数が少ないので葬儀までの時間に猶予があり、向かうまでの間にお茶出し用の茶菓子だとかを買いに行くことになった。


ショッピングセンターに寄り会計を待っている間にふと気づいた。
葬儀という形ではあれど家族みんなで買い物に来たのって、もしかして20年ぶりなのでは?

父親と別居したのはまだ短いが車に乗って家族みんなで買い物した記憶がほとんどないのだ。
軽食はどこだとか田舎だから通り過ぎたおもちゃ売り場で貴重なものがあるか気になるだとかしょうもない会話を聞きながら。

本当の家族ってこういう感じかな、と。どうしても想像してしまった。


葬儀は大きな問題なく無事に終わった。

次に全員が揃う時はあるのだろうか。

寂しさは一切ないのだが、帰りの新幹線でほんの少しだけ疑問が浮かんで、間も無く眠りについた。

婆さん、安らかに。

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