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ローミング とハンドオーバー、言葉の使い方と動作の違い(4G/LTEとWi-Fi)

4G/LTEや5Gの仕事に取り組み始めたての頃、話が噛み合わないことがありました。"ローミング"という言葉を使っていた時の話です。
私はWi-Fi関連の仕事をしてきた経験があったので、その時の感覚で言葉を使うと、全然、異なることを示していたのです。相手の方も、こんな言葉の定義の違いがあるとは全く思ってなくて話していたのでしょう。
なので、言葉の整理をしておきます。

  • 4G/LTEとWi-Fiでは同じ用語でも異なることを示している:ローミング

4G/LTE, 5Gの世界と、Wi-Fiの世界では、同じ「ローミング」という言葉を用いても、事象は異なることを示しています。イメージを下図に示します。

・4G/LTE, 5Gの世界:
 ローミングというと、ある通信事業者1を利用している方が、移動先で異なる通信事業者Aの通信サービスを利用することを示します。一方で、同じ通信事業者1内のアンテナ1から、移動して異なるアンテナ2に接続先を切り替えて通信を継続して利用することをハンドオーバーと言います。

・Wi-Fiの世界:
 あるアクセスポイント(上図でいうアンテナ1)で利用中に移動して異なるアンテナ2(上図でいうアンテナ2)に接続先を切り替えて通信を継続して利用することをローミングと言います。

4G/LTEのハンドオーバー、Wi-Fiのローミングは、事象としては似てますが、動作原理が全く異なります。

  • 4G/LTE(ハンドオーバー)とWi-Fi(ローミング)、動作の違い

・4G/LTEのハンドオーバー:
 アンテナ(基地局)側は端末が測定・送信してくる近隣通信環境の測定結果に基づいて、ハンドオーバー先を探し準備して、当該端末にハンドオーバー実行を指示します。切り替えのタイミングで、切り替え前のアンテナ(基地局)は送信未完了のデータを切り替え後のアンテナ(基地局)に転送して、ハンドオーバー後に端末に送信できるようにもしています。
(実際には、ハンドオーバーが基地局内か、基地局間か、モビリティ管理エンティティ間かでそれぞれ動作手順がある。)

・Wi-Fiのローミング:
 端末が接続先アクセスポイントを切り替えるのは、端末の実装依存です。動作の仕組みを厳密には規定していません。私の経験上、端末が受信している電波強度を主要素の一つとして、その他、通信状況など一定の閾値を設けて、端末がアクセスポイントを切り替えるのが一般的のようです。IEEE802.11k/802.11v.802.11rといった高速ローミングに関与する規格はあります。ですが、ローミングを速く行う工夫であって、端末側が主体となって動作することには変わりありません。

4G/LTEとWi-Fiでは、上記のように動作が異なります。そのため、移動しながら利用する観点で、有利/不利の違いが生じます。
移動しながら利用することが前提となり発展してきた4G/LTEの方が、有線ネットワークの無線化として発展してきたWi-Fiよりも、有利に動作すると言えるでしょう。

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