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ソーシャルデザインの公式 2019ver

春秋社のウェブマガジン「はるとあき」で連載中の『空海とソーシャルデザイン』。およそ1年間続けさせていただいて、晴れて昨日、最終回分を入稿しました。

正月が明けて、毎朝4時半くらいに起きて2〜3時間ずつ書き続けて、気づけば20,000字。この半年、まったく原稿が手につかなかったのがウソのように、あれこれ調べたり、考えたり、実践してきたことが、自分でも驚くほど整理できていて、言葉が自然と湧き出てきていることを実感できました。

うん、やっぱりこの半年は、文字を書かずして、原稿を書いていたんだな。(編集者さんにはご迷惑をおかけしてしまったけれど)

そのあいだに、greenz.jpでたびたび取材させていただいたおてらおやつクラブが2018年のグッドデザイン大賞を受賞し(執筆は『beの肩書き』を編集してくれた杉本恭子さん◎)、その流れで雑誌「自遊人」2019年2月号でまさかの未来を変える「ソーシャルデザイン」特集が組まれて。

それに呼応して2018年末にはミッドタウンのデザインハブではgreenz.jpの立体版企(たくらみ)展も開催されて、世の中的にもソーシャルデザインの地に足つけた広がりが共有され、そのリフレクションも行われ始めようとしている。

そういえば、僕が久しぶりにソーシャルデザインについてトークをしたのは2018年の春のsoarのイベントだったけど、個人としては2012年のグリーンズ著『ソーシャルデザイン』、2013年のグリーンズ著『日本をソーシャルデザインする』以降、よくもわるくも少しブームっぽくなってしまって、大学では授業しっかり担当しつつも、少し距離を置いていた。

それから数年、移住や子育て、大学教員の経験を経て、ようやく新しいソーシャルデザインとの向き合い方が形になってきた気がする。その集大成であり、未来への提案が「空海とソーシャルデザイン」なのでした。


(ちなみに、自遊人の特集は本当に素晴らしくて、特に日本デザイン振興会の矢島進二さんの28ページ!にもわたる論考「日本におけるソーシャルデザインの軌跡」は教科書レベルといえます。そして、そこに何度も名前を出していただいたものとして、付かず離れずではなくしっかり向き合っていこうとエールをいただいた気がしました。連続講座「空海とソーシャルデザイン2018」にもご協力いただいた矢島さんとのエピソードなどについては、別のnoteにまとめたいと思っています)


日本発のソーシャルデザインのフレームワークを世界へ

もともと「ソーシャルデザインと空海には意外な共通点がある」という発見からスタートし、そこから発展して、「真言密教における菩薩道の主な要素とソーシャルデザインを成功に導くために必要な力の類似性を明らかにすること」が空海とソーシャルデザインの主題となっています。

そして、菩薩道から導かれたアジア的なソーシャルデザインのフレームワークを、ソーシャルデザイン教育や事例研究に応用してゆくことが次の10年のゴールです。つまり、僕なりのソーシャルデザインの向き合い方とは、日本的なソーシャルデザインの普遍性を明らかにしつつ、世界のソーシャルデザイン教育に深みを与えることなのでした。

うん、ソーシャルデザインのことが好きみたい◎ 伊達に20歳から約20年間も追いかけ続けてきてない。


さて、僕が提案するフレームワークとは、次のようなものです。

(8月に校正したsoarの記事ではまだ曼荼羅に色がついていない。となると、やっぱり9月からの連続講座とその後の怒涛のインプット&スループットがものすごく影響しているのがわかる。でも、10月と12月は『beの肩書き』しかやっていないんだけどな、あれ? 発酵?)

どのソーシャルデザインの事例(いってみれば「何を?」=What?)も、本来の自分=どんな人が(Who?)、ほしい未来=何に向かって(Why?)、リソース=どれを活かして(Which?)、デザイン=どんな方法で(How?)という4つの切り口で読み解くことができる。

それがソーシャルデザインの公式 2019ver です。


本来の自分 × ほしい未来 × リソース × デザイン = ソーシャルデザイン!


先に本来の自分 × ほしい未来という縦軸を、リソース × デザインという横軸は状況に合わせてという順番はありますが、いずれにせよ東西南北の4つの要素がひとつずつ埋まっていったとき、その人にしかできないユニークな、「これをやりたい」というよりもむしろ「やるべきことはこれしかない」というようなシンプルなアイデアが、その中心に自ずと立ち上がってくるのです。

ちなみに、2012年『ソーシャルデザイン』では、「好きなこと×ほしい未来×FUN(楽しさ)」としていましたが、〈ほしい未来〉はそのままに、〈好きなこと〉は少し深まって〈本来の自分〉へ、〈FUN〉はより解像度が高まって〈リソース〉と〈デザイン〉の2つに分かれることになりました。

その一例として、僕が編集長を務めていたウェブマガジン「greenz.jp」をあてはめてみると、こんな感じです。

つまり、ウェブマガジン「greenz.jp」とは、

気づきを与え、気づきを得る「勉強家」(本来の自分)である兼松佳宏が、ほしい未来を自分たちでつくる人がたくさん増える未来(ほしい未来)に向かって、語り手、書き手、読み手のコミュニティ(リソース)をいかして、情報の発信と対話の場づくり(デザイン)をしているプロジェクト

と整理することができます。


あるいは「おてらおやつクラブ」のインタビューをもとにすると...

おてらおやつクラブとは、

新しいお寺の未来をつくりたいと願う「お坊さん」である松島靖朗さんを中心に、ご縁による生きやすさを実感できる未来に向かって、持てあましてしまったおそなえものをいかして、ひとり親家庭を支援する団体とお寺のマッチングをしているプロジェクト

といえます。

いかがでしょう。それぞれの活動が何を目指しているのか、そのユニークな特徴とは何か、ちょっと伝わりやすくなったのではないでしょうか。


そして、この4つの要素で僕がもっとも大切だと思っているのは、〈本来の自分〉ということです。それは自分で"いまの自分"を認識するときの心理状態や、"自分"というものが意味する範囲などと関わってきます。一躍有名になったWHYから始めよ!に倣えば、WHOから始めよ!というメッセージ。

次回はそのあたりを書いてみたいと思います。


はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎