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< 真正ラベンダーの効能 (魔女のアロマセラピー講座・精油各論より >

魔女のアロマセラピー講座・講義の復習用レジュメより。
香癒道(サトルアロマセラピー)における精油の扱い方を併せて書いてあるので、興味のある方はお読みください。
各論40種は書籍化を予定しています。ネットでは初公開です。

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ラベンダーの効能
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真正ラベンダー
植物学名
:Lavandula angustifolia シソ科・多年草(樹木)
原産地:フランス 主産地:南欧・東欧・オーストラリアなど
精油の抽出部位:花・葉・枝
代表的な抽出法:水蒸気蒸留法
芳香浴の指向性:鎮静系
Note:ミドルノート
B.F.(ブレンディングファクター):7
対応するチャクラ:すべて(あえて挙げれば 7 と 3)

真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)

○ 植物の概観
高原の澄み切った空をイメージさせる清らかな花の香り...ラベンダーの精油を一言で表すとこんな感じだろうか。
もともとラベンダーはヨーロッパ・アルプス地方の高山植物で、堆肥分の少ない 痩せた土地、風雪厳しい気候の中で健気に生き抜いてきた植物である。原種は株も小さく、花穂も ひと掴みできるほど可憐な姿だった。
その姿を今も色濃く残すのは“真性ラベンダー”L Cだ。かつてはLavandula officinalisという呼称が多く使われたが、近年学名がLavandula angustifolia で統一された。angustifolia はラテン語で“細い葉”を意味する。
標高 1500m 以上に自生する野生種は かつての姿をとどめており、フランスのプロヴァンス産が特に有名だ。精油は“ワイルドラベンダ ー”もしくは“アルぺンラベンダー”という。抽出量が少ないうえに供給が安定しないため、比較的高価だが、治癒力が高く、野趣あふれる鮮烈な香気を放つ。セラピストがここぞというときに使 うこともあって人気が高い。その名の通り頂上(アルペン)のラベンダーである。
一方、標高 800 〜1200mの栽培地で見ることができるLavandula angustifoliaはひと回り大きな株に20〜30の花穂をつける。香りはワイルドラベンダーに比べると柔らかくフローラルで、繊細な奥行き感を持つのが特徴だ。
真性ラベンダーは産地など栽培環境によっても香りのニュアンスが変わり、使いこなす側にとって実に味わい深い。園芸の世界ではイングリッシュラベンダーとも呼ばれる。英国が原産地と いうことではなく、園芸種のフレンチラベンダーLavandula stoechas に対してつけられた名称である。 ちなみに“植物学者の数だけ植物学名がある”と揶揄されることがあるが、ラベンダーは特に名称が多いことで有名だ。
対して標高700m以下の耕地で大量に栽培されているのが“グロッソラベンダー”Lavandula grosso だ。プロヴァンス地方の観光写真でよく見かける、紫の畝が丘の向こうまで続くラベンダー畑の風景は、このグロッソラベンダーである。この品種は 20 世紀半ばにイングリッシュラベンダーLavandula angustifolia とスパイクラベンダーLavandula latifolia(もしくはラベンダー・スピカ Lavandula spica)のかけ合わせによって生まれた。生殖能力がなく、種ではなく株分け(クローン)によって殖える。株が非常に丈夫で茎も固く、花穂も大きく見栄えがいいのが特徴だ。巷でよくリボンを編み込んだラ ベンダースティックやポプリで見かけるのもこのクローン種である。グロッソラベンダーの精油はラバンディン Lavandula hybrida と称され、精油の世界でもはっきり区別される。
スパイクラベンダー Lavandula latifolia(Lavandula spica)の精油は覚醒系で、効能も全く異なる。鎮静系の代表格である真性ラベンダーと覚醒系のスパイクラベンダーのハーフとして生まれたラバンディン Lavandula hybrida は、 果たして香りは強く爽やかだが、鎮静系なのにどこか中途半端な性格になってしまった。また機械化農業で大量生産されるラバンディンは価格が安く、化粧品等さまざまな製品の香料に使われてい る。そしてなぜか抽出時より安い価格で世界中に出荷されていく。人工香料で増量され、このとき の精油分は数%まで薄まっているという。巷にあふれる“ラベンダーの香り”はこういうものだと思った方がいい。

ラベンダーの語源はラテン語の Lavare(洗う)に由来する。かつてローマ帝国時代のローマ人達 はお風呂が大好きだった。全ての道はローマに通ず...
地中海沿岸部からヨーロッパのほぼ全域を版 図に治めたローマ帝国の首都・ローマには三千以上もの公衆浴場があったという。奴隷制社会の頂点にいたローマ市民はいわば貴族階級で、浴場施設も豪華絢爛。かの有名なカラカラ浴場には幾つもの湯温の浴槽に、スチームバス、垢かき場、運動場まであったという。この当時風呂といえば“ 薬草風呂”のことで、彼等はそこでラベンダーを好んで使っていた。そしてローマ帝国が広がると ともにヨーロッパ中にラベンダーを植えていったのだ。お風呂に入れたいがために...
やがてラテ ン民族の帝国が滅び、キリスト教一辺倒の中世が終わる頃、ルネッサンスと薬草学の勃興とともに ラベンダーが再発見されることになる。
教会の床にラベンダーを撒き、皆で踏んで香りを立たせた り、疫病からの魔除けを目的に焚かれたりした。
英国の女王エリザベス1世は自分の下着をラベン ダーの蒸留水で洗ったという記録もある。その香り、抗菌・消臭作用はもちろんだが、実際やってみると、精油も芳香蒸留水も汚れを実によく落とすのだ。そんな観点からすれば Lavender とは直訳 で、お風呂草や洗濯草(?)ということになるだろうか。そういえば現代人もアロマバスや芳香浴でずいぶんお世話になっている。

ラベンダーの香気はわたし達の心身を、今日も一日よくがんばったね...と労い、穏やかに鎮静さ せてくれる。ストレスの多い環境にいると、交感神経が亢進したまま、やがて就寝中ですら緊張が解けなくなっていく。これが様々なストレス障害のはじまりだが、1990年代に入ってラベンダーの香りが嗅神経を通って脳に伝わると、交感神経から副交感神経にスイッチし、脳内ホルモンが分泌されるという研究報告が出された。多幸感を呼び、鎮静効果が高いセロトニンというホルモンであ る。脳内ホルモンはまだまだ未開拓の分野だが、精油の香りがメンタル面に影響を与えることが、 脳内ホルモンを通して科学的に証明された瞬間だった。実際ラベンダーの香りは不眠症をはじめ、 チック症、ヒステリーなど様々な神経症状に卓効を示している。
またラベンダーは古くから万能薬とされてきた。その処方をひも解けば、ありとあらゆる症状が リストアップされていく。皮膚刺激も少なく、少量なら原液で処方できるほど安全性が高い上、子供や動物にも使える。妊娠期間中(特に後期)も安心して塗布できる。そんな万能の精油が地上部のほぼすべてから重量比約 70 分の 1 で採れる(これは精油分が非常に多い)なんて!
このこと がセラピストや植物療法家達から、ラベンダーはなんと慈悲深くありがたい植物だろう...といわれ る所以である。
そして、本来は限られた地域の山奥にしか存在しなかったこの控えめな植物を見い だし、やがて世界中に広めていった先人達にも感謝したい。

品種改良を進めてしまった西欧社会では残念なことにLavandula angustifoliaの生産者が少なくなり、真性ラベンダーの精油は次第に高価になりつつある。返って冷戦時代に農業を近代化しなかったブ ルガリアなど東欧社会から真性ラベンダーの精油が近年届くようになり、再評価されている。

○  芳香浴の効能
ラベンダーの香りはよく“清らかな花の香り”と表現される。ラベンダー善し悪しはまさに、澄んだフローラルなニュアンスがふわっと前面に立ちのぼってくるかどうかで判断できる。そこに干し草のような少し酸えた発酵臭のニュアンスと、ハーブのようなグリーンな香気が入り交じってくるのがラベンダーの面白いところで、まるでブレンドされたかのような微妙なバランスの上に香りが成り立っている。
ブランドや産地などによるニュアンスの違いは実に多様で、聞き酒をするよう に自分の好みのラベンダーを見つけてみるのも感覚を鍛えるトレーニングになるだろう。
またこのことが、持つ人のエネルギーによって香りが変化する、言い替えれば、エネルギーの変化が香りになって現れやすい要因のひとつになっている。
アロマセラピーの講義のとき、はじめに受講生全員にラベンダーの精油を試香紙もしくはボトル ごと膝の上に置き、しばらくしてその香りを互いにチェックしもらうのだが、皆が一様に違う香りになってしまっていることに驚く。
精油がエネルギー的に振る舞うことを理解してもらう実験だが、 その人のオーラ、つまりその人のエネルギー状態が精油に転写・反映され、それが香りの違いとな っているのだ。それは精油の成分が変質したというより、成分同士の電磁気的なバランスが変化したと見るべきだろう。微妙な香りのバランスを持つラベンダーの場合、エネルギーの変化が香りの 変化に現れやすいのだ。
澄んだ花の香りが、ときとして苦みのある酸えた香りに変わり、思わず咳き込んでしまった経験もある。香りを臭くしてしまったその受講生は、長年に渡って向精神薬を常用していた。
この香りのブレの大きさが精油のダイナミックレンジというもので、エネルギーの高 い良い精油ほど、一転して臭くなる可能性を持っている。このことが精油の扱いを難しくしている のは間違いなく、いい精油に出会うのも難しいが、いい精油に出会っても香りを臭くしてしまって は元も子もなく、人によっては結局、なんだアロマってこんなものか...で終わってしまっている可能性もある。
臭くなった精油は何らかの方法でエネルギーを立て直す必要があり、一番手っ取り早 いのはエネルギーを扱えるセラピストの手元に戻して、再チャージしてもらえばいい。
他にも水晶などパワーストーンを使ったり、自然の多い場所や神社や温泉など気(波動)の高い場所、いわゆるパワースポットに持っていくという手もある。とはいえ、 精油を手にした本人がとてもハッピーなとき、感謝でいっぱいのときにそっとボトルを握って、そ ばに来てくれてありがとう...と思いを向けるだけで、いい香りに戻ってしまうこともあるのだ。香りが臭くなってしまったのはその人の状態を映した鏡であり、その人へのメッセージなのだから...
ちなみに、ある程度エネルギーを流すトレーニングをすれば、誰でも香りを立て直せるようになる。

ラベンダーはそのエネルギーの強さ故に空間の波動調整ができる。ランプなどに垂らして蒸散の スピードをチェックするのだが、あっという間に精油が飛んでしまったら、その場所は波動調整が必要ということになる。
アロマランプは大きさによって温度の違いがあるし、空間の構造や広さに もよるので一概にはいえないが、ランプなら掌で触れてもやけどしない程度(50 度程度、このくら いのものが精油を劣化させない)、5〜10 畳程度の寝室やリビングなら、ラベンダーを 10 滴ほど垂らせば 6〜8 時間は保つはずだ。これより短い時間で空っぽになるようなら、とにかく常時ラベンダ ーで空間を満たすように心がけた方がいい。無くなったら精油を足すようにし、さらに人が誰もいない時間帯でも流し続けることで、やがて蒸散が落ち着いてくるはずだ。
精油の波動と空間の波動 が平衡状態に達し、空間が精油になじんだ、つまり空間の波動が高い状態で安定したと見ていい。 まずは一日の内で一番長い時間を過ごす寝室やリビングで、ぜひこのラベンダーの実験をしてみてほしい。ラベンダーの香りで脳を OFF モードに切り替え、身体をリラックスさせ、ラベンダーのエネルギーで波動を高めた癒しの空間で翌日のための英気を養ってもらいたい。
ちなみに、強制噴霧 式のディフューザーだとこの実験はできない。ランプがない場合は小皿に精油を垂らして自然蒸散させるという手もある。
ただし人やモノの出入りが激しい空間はラベンダーでは少々役不足で、その場合はバジルやローズマリー、ユーカリ、ペパーミントあたりをおすすめする。

ラベンダーは鎮静系の精油の中でもとくに深い鎮静効果を持つ。この香りをゆっくり吸い込みな がら、鼻の奥からさらに上の方...脳に香りを響かせるように嗅いでみると、頭の奥がじん...と痺れ るような感覚になり、次に全身の皮膚感覚に鳥肌が立つような、軽く汗ばむような感じが現れる。 脳幹部で自律神経系が反応し、身体が OFF モードに切り替わった瞬間だ。とかく交感神経緊張(ON) 状態を強いられる現代社会において、必要に応じて副交感神経(OFF)に切り替える時間とツールを 持つことは、心身の状態を維持する上でとても大切だ。ラベンダーの精油を常時携帯していれば、 ときおり取り出して香りで自分の状態をチェックするにもいいし、ちょっとした気分転換にも使える。
試験の時や人前で話す場面でついあがってしまうという向きには、ラベンダーを掌に垂らして 深呼吸するのもいい。掌に“の”の字(だいぶ古いが)よりずっと効果を保証する。ちょっとした 火傷や切り傷、虫さされにも原液を塗布することができる。なにより、エネルギーの足しになるものを身につけることで、その人のオーラを強め、それによって周囲の環境にエネルギー負けを起こすことなく、自分らしさを維持し、運気を守ってくれるのだ。

ラベンダーは肉体レベル・メンタルレベル・エネルギーレベルの幅広い範囲で、安定・バランス ・浄化を担ってくれる。
ラベンダーの花の“紫色”はまさに第 7 チャクラへの対応を示唆している。 脳への影響力や意識の転換・浄化を促す力といえるだろう。

ラベンダーを使いはじめた受講生から よく聞くのが、最近ぼーっとすることが多くて...とか、もの忘れが酷くて認知症かも...という相談だ。これはたいていの場合“右脳活性”をしているだけで、これまで左脳中心だった脳がバランス を取ろうとする反応なのだ。もし仕事中にぼーっとしてしまうのが気になるなら、日中は左脳を活性化するローズマリーやレモングラスを使い、帰宅後にまたラベンダーに切り替えるといいだろう。
とかく現代人は理屈や数字といった左脳系に偏る傾向があるから、直観や霊性意識の座である右脳 を目覚めさようとする、せっかくのラベンダーのプロセスを止めてしまうのはもったいない。また意識的にラベンダーの香りを深呼吸しながら、ネガティブな感情やグルグルに嵌ってしまった思考パターンを吐き出すようにすると気分がすっきりするはずだ。
ラベンダーが鎮静させてくれるのは 身体や脳だけではない。ラベンダーの鎮静効果は“感情”の座である第 3 チャクラ(太陽神経叢) へも作用する。トリートメントで使用したときの胃潰瘍・十二指腸潰瘍への対応、強肝効果も高く、 肉体面でも第 3 チャクラへのラベンダーの効果を感じることができる。
ラベンダーはその深い作用故に心身症・神経症にもよく対応する。チック症・ヒステリー・躁鬱 症・不安症・強迫神経症・気分のブレが激しい人・極端なかんしゃく持ちなどはラベンダーを常時流すか、ペンダントなどで携帯するといい。
ただし鬱状態のときはあえて使わないようにしている。 様々な文献で鬱症状に効果とありとされ、実際その通りだと思うのだが、ラベンダーの持つ、あの気持ちがふーっと落ち着いていく感じが、鬱の人にとっては、もっと落ち込んでしまいそう...というあらぬ不安を抱かせてしまうからだ。同様の理由で、サンダルウッドや乳香(フランキンセンス)、 ミルラの芳香浴は携帯ペンダントや香油のブレンドにも使わない方がいいだろう。

ラベンダーには催眠作用があるので、まず寝室で使ってみてほしい。ラベンダーのアロマバスと合わせれば、さらに気持ちよい目覚めを体験できるだろう。もし香りが濃厚すぎて眠れないようなら、オレンジやベルガモットとブレンドするのをおすすめする。オレンジはラベンダーに柑橘系の甘く軽やかな雰囲気をもたらし、ベルガモットはもう少し深くエキゾチックな香りにしてくれる。両方とも単独でも安眠効果が高い精油だ。
時差ぼけのときはラベンダーを濃いめに流してグッと深く眠れば、ほぼ一日でリズムが回復する経験を何度もしてきた。
ラベンダーに飽きてきたら、同じ価格帯のスィートマジョラムへの切り替えもおすすめしたい。ブレンドもいいが、ラベンダーはつい 長期連続使用してしまいがちなので、交互に使うのもいいだろう。
瞑想をするならラベンダーの使用は NG である。たしかに第 7 チャクラによく対応するが、居眠りしてしまっては瞑想にならない。瞑想にはサンダルウッド、乳香(フランキンセンス)、ミルラ、ア トラスシダー、ローズウッドなど、眠くならない鎮静系の精油を使うといい。
同様の理由でラベン ダーの運転中での使用は禁忌である。

ラベンダーの香りは出産時の産道を緩め、出産を促してくれる。産婦人科は医療の世界で最も早くに精油を取り入れた分野といえるだろう。ランプで流すのもいいが、ハンカチやガーゼに多めに 垂らして直接深呼吸してもいい。陣痛を緩和し出産の助けとなるネロリやジュニパーを使い、臨月 に入った頃からマッサージしておけば、さらに安産を期待できる。

ラベンダーは B.F.(ブレンディングファクター)7 とあまり自己主張をしないため、ブレンドの 相手を選ばない。すべての芳香ブレンドにフローラルでソフトな雰囲気もたらす名脇役を演じてく れる。
かつてある小説家の受講生から、リビングでラベンダーを流していると仕事にならない、とクレ ームをいただいたことがある。リラックスし過ぎて、明日からでいいや...とつい仕事を先延ばしするうちに一週間が過ぎてしまったというのだ。
それなら手元にある覚醒系の精油で、と提案すると、 今度は気分がそわそわして机に向かえず、取材と称して外出してしまうという。
受講されて間もな かったので、眠くならない鎮静系、このときはアトラスシダーをおすすめした。一週間後また連絡 があり、今度はどうしたのかと思ったら、仕事がはかどって仕方がない...というお褒めの言葉だっ た。
ちなみにラバンディンの精油も眠くならない鎮静系に属し、気持ちを前向きにさせてくれるので、 同様の効果が期待できる。ラベンダー系の香りが好きなら、仕事中はラバンディン流すといいだろ う。非常に涼しげでカラッとした香りはスパイクラベンダー譲りで、じめじめした暑い日にはもっ てこいの香りだ。抗菌作用も高く、虫除けにも向くのでルームフレグランスや虫除けスプレーを作 るのもおすすめだ。

アロマバス
少しぬるめのお湯にラベンダーの組み合わせはアロマバスの王道だ。心身を緩め、その日一日の 疲れを出し切ってエネルギーを転換してくれる。
入眠のプロセスを促し、安眠効果も非常に高い。 アロマバス(全身浴)のいいところは、精油の波動を転写した湯の中に全身を浸すことができる点にある。それによって体内の水(体重のおよそ 65%が水分だ)を共鳴・転換させ、オーラ、つま りエネルギーボディの浄化・転換が期待できる。
最初は 3〜4滴からスタートし、徐々に馴らしていくといいだろう。肌が弱い人は注意が必要だが、馴れれば 10 滴ほど入れても問題ないはずだ。
湯船に浸かってすぐに香りが飛んでしまうようなら、エネルギーの転換にはまだ足りないという意味なのでさらに足してもいい。 アロマバスは精油を落としてよくかき混ぜるのがセオリーだが、逆にラベンダーを広めに垂らし、水面に浮かぶ油膜を全身に纏わらせるようにゆっくり浸かるという方法もある。ラベンダーは皮膚刺激がほとんどなく、湯の温度と水圧によって全身を温湿布するような効果が得られる。湯上がり 後も身体がぽかぽかするのを感じるはずだ。

手浴でおすすめなのはラベンダーとパチュリーの組み合わせだ。パチュリーは少しクセのある香りだが、ラベンダーとの相性は抜群にいい。湯の中で手のひらをマッサージしながら動かしている と、パチュリーが皮膚表面に薄くコーティングされ、しっとりした感触が後になっても続く。

足浴 はむくみが気になるなら、ジュニパーやサイプレスとのブレンド、冷え性にはスィートマジョラム との組み合わせがポピュラーだ。尿道炎やカンジダ症には座浴もおすすめしたい。ラベンダーは粘 膜への刺激が少なくデリケートな部位にも使える。こういった部分浴は実は入浴中でも湯船の中で 手元や足先に垂らして応用できることを知ってほしい。自然療法は本来アバウトで融通無碍なのだから。
ラバンディンもアロマバスに使えるが、ラベンダーほどのリラックス効果はなく、代わりに浄化力が高いと知っておこう。皮膚刺激も少ないので多めに垂らしても問題ないはずだ。ただしラバンディンは比較的安価で手にしやすいが、真性ラベンダーの代替にはならない。まずは真性ラベンダ ーの精油から使いこなし、徐々にバリエーションを増やす中で選択するといいだろう。

○ トリートメントの効能
全身トリートメント

(ベースオイルや軟膏、ジェルなどを基剤に 1%程度に希釈し、部分的に擦り込むことで対応する。)
ラベンダーはすべてのチャクラに対応し、全身のリラクゼーションとエネルギーの調整を得意とす る。香りも穏やかで皮膚刺激が少なく万人に対応できるため、全身トリートメントで最もよく使われる精油だ。ラベンダーの全身トリートメントはストレスやハードな肉体労働から来る緊張や強張りをほぐし、緩め、心地よいリラックスを与えてくれる。
はじめてのクライアントに最もよく使うのがラベンダーとジュニパーのブレンドだ。ラベンダーもジュニパーも万能な上、ラベンダーで全身を緩めながら調整し、ジュニパーで不要なものを浄化するという処方になる。ジュニパーを使うのは施術者がネガティブな影響を受けにくくする“プロテクト”の意味もある。そして 2 回目以降 の施術で具体的な症状に対応していくのだが、そこでもラベンダーをベースにしながら症状に適し た精油を加えるというパターンが圧倒的に多い。
ラベンダーはトリートメントにおいても基本的に緩める・リラックスさせるという鎮静方向の作用を持つが、ときとして背骨のラインのエネルギーの流れを改善し、チャクラを強化するというエ ネルギーアップの方向で使うこともできる。
こういった相反する効能を内包する万能性が、精油や ハーブなど自然薬の特徴だ。それは個々の成分の作用機序というより、全体として恒常性の維持、 生体防御の補助、自己治癒力の強化、つまり“身体がそうなりたい方向”をサポートした結果なの だ。これを “自然治癒力の活性”とか“生命力賦活作用機序”といい替えることもできる。
ではこうした多様な効能をどう扱うか?
クライアント自身が今どのようなプロセスを辿ってい るかを感じ取り、そのプロセスを信頼すること。そして処方する人の意識が精油に反映されると自 覚することだ。つまりどういう意図をもって処方するかで、精油の効能も変化するのだ。
不思議に聞こえるかもしれないが、これが精油のような“生命力”を持った存在のありようなのかもしれな い。実際にはマッサージオイルを処しながら、この精油の中の○○の力が働くように...と意図を込める時間を取るだけだが、これを意識したときとしなかったときの差が大きいので、いつしか確信に変わった。
トリートメントにおいて精油はあくまでもツールである。施術の主体者はセラピスト であり、どれだけいいツールを駆使しても、トリートメントの善し悪しは結局のところ、セラピストの意識とエネルギーにかかっている。

原液での処方
ラベンダーは少量なら原液を塗布することができる。火傷、切り傷、擦り傷、虫さされなど、とにかくすぐ塗るのがコツだ。火傷なら冷やす前、怪我なら傷口を洗浄する前がいい。火傷で有名な のはアロマテラピーの名付け親、ガットフォセ博士の実験中の爆発事故だろう。右腕と頭に大火傷 を負った博士はとっさに、目の前にあったラベンダーの精油を浸すように塗ったという。そして一 週間ほどで完治してしまった。この博士の体験が後に現代アロマセラピー復活のきっかけになったのだ。
大事故でなくても、日常のちょっとした火傷ならラベンダーをちょんちょんとつけるだけでいい。その後水ぶくれになった経験は一度もない。逆に冷水で冷やしてから塗布したときは水ぶくれが生じた。範囲が広い火傷の場合は洗面器やボウルに水を張り、そこにラベンダーを多めに落として浸すか、水と一緒に塗り広げてもいいだろう。
切り傷の止血も非常に早い。ラベンダーを滴下してから傷口をガーゼなどで押さえ、しばらく置 いて見るとすでに傷口が塞がっていることがある。この“傷の癒合・表皮の再生スピード”は医学 的にも説明がつかないとされている。ラベンダーなら傷口にしみないだけでなく、火傷・傷の痛みも緩和してくれる。
虫さされのかゆみ・痛みもすぐに気にならなくなることが多い。瞼などデリケート場所の腫れや 怪我には小皿に少量の水とラベンダー1滴で、コットンやガーゼを湿らせて冷湿布する。
この冷湿布法は鼻血の止血にも効果的だ。子供の鼻血に綿棒の先につけて鼻の奥に入れた事例があるが、これは NG。あくまで鼻の上から冷湿布で処方しよう。綿棒の先につけるやり方は外耳炎・中耳炎のときに有効だ。綿棒を使って耳孔の内側にちょんちょんと塗ればいい。ティートリーがおすすめだが、 ラベンダーでも十分対応する。
水虫にはラベンダーとティートリーを 1 対 1 でつけるか、日をおいて交互につけるパターンがおすすめだ。長期の場合はカレンデュラ、セントジョンズワート、アルニカなどの抗炎症作用のベー スオイルで希釈し塗布するのもいいだろう。濃度は少々高くてもかまわない。じゅくじゅくの水虫には精油+クレイのクレイパウダーもおすすめしたい。
少々荒療治だが、アトピー性皮膚炎にラベンダーの原液を使ったこともある。塗布するとすぐ膿が吹き出したが、かゆみは起こらず、比較的早く炎症が治まった。ステロイド軟膏でも変化がなかった子供の足のアトピーを、知人に分けてもらったラベンダーの原液だけで完治させた事例もある。
偏頭痛に悩む方は薬に頼る前に、こめかみや後頭部の首の付け根周辺に直接塗布してみてほしい。この処方はてんかん持ちの方にもおすすめだ。ついでに香りを吸って深呼吸をしよう。偏頭痛の場 合は詰まっていた脳の血流が戻りつつある現象なので、深い呼吸をしながらしばらく安静にするのもいいだろう。なるべく頭痛薬にたよらず、体がどうなりたいかを静かに感じてみてほしい。
突然の腹痛や生理痛には指先に原液をとって右回りに擦り込んでもいいだろう。
ラバンディンの原液の使用はあまりおすすめしない。トリートメントの各種効能もラベンダーに準じていると思われ、他に代替するものがなければラバンディンを選択する手もあるが、妊婦への使用は控えよう。ラバンディンは基本的に芳香浴をメインとする精油と心得たい。

臓器への効能
(ベースオイルや軟膏、ジェルなどを基剤に 1%程度に希釈し、部分的に擦り込むことで対応する。)
ラベンダーはとくに心臓に効果の高い精油だ。心臓に活力を与える“強心作用”といえばネロリが代表だが、ラベンダーにも同様の作用があり、狭心症など心臓疾患を持つ人、どうき、不整脈が 気になる人は定期的に擦り込むといいだろう。
血圧が高い人も心臓周辺を右回りに擦り込む処方をする。上が 160 以上の高血圧なら、施術後すぐに 10〜20 くらい下がってしまうこともある。
血圧降 下に向く精油は他にも、マジョラム、アトラスシダー、ローマンカモミール、イランイランが代表格だ。同じ効能同士を組み合わせると相乗効果が得られるため、これらの精油を 2〜3 種類ブレンドすることが多い。
胸の位置にある第4チャクラと心臓は密接に繋がっている。精神的ショックや愛情面で弱ってしまったチャクラを精油のエネルギーが癒すことで、心臓にもいい影響を与えると思われる。肺や気管など呼吸器が弱っているときも同様の処方が可能だ。肺の場合は背中側や脇の下 にも擦り込むといいだろう。
ラベンダーは消化器全般にも効果が高い。ストレスから来る胃潰瘍や十二指腸潰瘍への処方では ラベンダーとローマンカモミールのブレンドが最もポピュラーだ。十二指腸潰瘍の場合は背中側にも塗布する。これによって痛みが劇的に回復した事例もある。原因がストレスにある場合、感情の座である第3チャクラを癒すことで治癒力が高まったのだろう。
消化不良や便秘、下痢にも効果が高い。便秘の処方はローズマリーとオレンジのブレンドが最もポピュラーだが、ラベンダーとベチバーの組み合わせもおすすめだ。女性の場合、エストロゲンの影響や子宮の冷えから腸の動きが鈍くなることが多く、その場合はゼラニウムを加えるのもおすすめだ。夜に咳が出る人は逆流性食道 炎のケースが考えられるので、寝る前にラベンダーを胃と胸回りに擦り込んでおくといいだろう。
ラベンダーは生理痛にもよく対応する。クラリーセージ、ベルガモット、ゼラニウムとのブレン ドがポピュラーだ。ラベンダーは妊娠期間中に最もよく使われる精油でもある。妊娠初期の使用を 禁忌とする文献や協会もあるが、多くの受講生やクライアントの経験からもラベンダーは妊婦に最も優しい精油と認識している。
陣痛も緩和するので、臨月に入ったら同様の効果があるネロリやジ ュニパーとブレンドして定期的にマッサージするのもいいだろう。アロマティックなマタニティライフを過ごし、比較的安産だった事例をたくさん見てきた。そして生まれた赤ちゃんも普段からあ まりぐずらず、穏やかな“アロマっ子”になるケースが多い。
肝臓と腎臓は薬剤が対応できない臓器といわれる。肝・腎は浄化の臓器なので薬効成分を解毒・ 排泄してしまうのだ。しかし精油の中には対応できるものがあり、ラベンダーもそのひとつに上げられる。肝臓・腎臓を強壮する精油は他にもジュニパー、フェンネル、ローズマリーがあり、いず れか 2〜3 種類をブレンドしていく。肝臓へはグレープフルーツ、ローズも効果が高い。擦り込むと きは肝臓なら肋骨の右下周辺、腎臓は背中側のウエストラインの上側を目安にしよう。現代人は添加物いっぱいの食生活などから肝臓・腎臓が疲れている人が多いので、お風呂上りのセルフマッサ ージなど日常的なケアをおすすめしたい。これらの処方はいずれも身体に溜まった毒素を排毒(デ トックス)するにも有効だ。
筋肉・間接・皮膚への効能 ラベンダーは筋肉にもよく対応する。筋肉痛にはジャーマンカモミール、マジョラム、ジュニパー等とブレンドすると香りの相性がいい。リウマチなど関節炎の場合、炎症を鎮めるにはジャーマ ンカモミール、浮腫が気になるならジュニパーとのブレンドがポピュラーだ。
アトピー性皮膚炎で最もよく処方するのがカレンデュラをベースに、ラベンダーとジャーマンカ モミールの組み合わせだ。アトピーは治癒までに時間がかかることが多いので、長期連続使用を避 けてジャーマンカモミールをローマンカモミールに代えたり、ネロリやベチバーを加えるなどして バリエーションを作っていく。乾燥が酷いケースならサンダルウッドを、加齢による乾燥性湿疹程 度ならパチュリーとのブレンドもおすすめだ。
アトピーの症状は人によって千差万別で、肌の状態も経過によりどんどん変わる。試行錯誤しながら処方していくしかないが、アトピーというのはあくまで皮膚を使った排毒のプロセスといっていい。やがて出し切れば治っていくものだ。
ベストセラー「免疫革命」で有名な安保徹先生はアトピー体質の人はガンにならないと明言している。身体 の中に毒素を溜め込み後年になって大病を患うよりは、排出できる体質は幸運なことかもしれない。 ちなみにこれまで出会った数十人のアトピーのケースは、精油の処方と食事の改善などで全員完治 している。ただし長年ステロイドの処方で排毒のプロセスを止めてしまっている場合、皮下脂肪に 溜め込んだ薬剤を出すことを含めてそれなりのリバウンドを覚悟する必要がある。

美容への効能
ラベンダーは表皮細胞を更新させる素晴らしい力がある。精油入りローション、ローズヒップな
ど美容向きの植物油を使った美容液、精油入りシャンプーなど、肌にも髪にもラベンダーの癒しの 力はとても有効だ。ローションに使うなら乾燥肌や炎症肌、シャンプーに加えるならダメージヘア 向きの処方になる。
日焼けした肌には芳香蒸留水にラベンダーとローマンカモミールのブレンドで ローションやジェルを作るのもおすすめだ。オイルをつけてすぐ日光にあたれば必ず“オイル焼け ”を起こすが、アボガドオイルとラベンダーの組み合わせは若干“日焼けを防ぐ“効果を期待でき る。ここに少量のローマンカモミールを加えてもいい。ただこれは素肌よりは...という程度であっ て、SPF○というような日焼け止め効果とは別物と認識しよう。どちらかといえば日焼け後の肌をク ールダウンし、炎症を癒す処方というべきかもしれない。

○ 補足
万能ともいえるラベンダーだが、唯一苦手とする部位がある。舐めると非常に“苦い”のだ。粘膜にやさしいので、うがい、歯磨き、口内炎などに使えなくはないのだが、オーラルケアはティー トリー、ミルラ、ジュニパーあたりに譲った方が賢明だろう。
ラベンダーは皮膚につけるとまれに発赤や湿疹を起こす人がいる。本人はラベンダー好きで、他 の精油では問題ないのに、ラベンダーには反応してしまうのだ。経験的に 2~5%くらいはいると思 われる。最初は気づかないケースもあるので、塗布する場合はハンドなど無難な場所からはじめる といいだろう。
スパイクラベンダーLavandula latifolia(Lavandula spica)は覚醒系でラベンダーとはまったくタイプが 異なる精油である。ドライでスパイシーな香気は湿度の高い夏の日にはうってつけで、非常に爽や かな空気感をもたらす。虫よけ、消臭にも優れているが、皮膚刺激が強く、キャップの縁に残る油 分に触れただけで発赤することもある。強い通経作用があるとされ、トリートメントもアロマバス にも向かない。アロマランプや消臭スプレーなど、もっぱら芳香浴でつかうのがおすすめだ。 Lavender と書いてあるからといって、うっかり原液の処方などしないように気をつけたい。

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