問い続ける力 (ちくま新書)石川 善樹
この本は、予防医学で有名な石川善樹先生が、出口治明氏(ライフネット生命創業者)や若林恵氏(元WIRED編集長)といった、”考える達人”に行ったインタビューを編纂しつつ、彼らのような”考える達人”たちが、いかにして問を立て、物事を考えているのかということを浮き彫りにしていく一冊です。
遠くまで考えつづける歩き方
一番おもしろかったのは、P232-233 松嶋啓介--アートとは何か?
土地を感じるために、自分を空っぽにする
修行中は「シェフ、なぜこれを考えたの?」と聞いていた。そうすると「俺の地元にはこういう生産者がいて、こういう食材がずっと根付いてきている。俺は、この食材をどうやったら今の人たちに食べてもらえるかと考えながら料理している」などと返ってくるんですよ。あるいは「この土地には昔、〇〇さんというおばあちゃんがいて、こういう料理をつくっていた。俺はそれを今風によみがえせたいと思って、この料理を考えた。それでできたのがこれだ」とか。だから、「つくり方を教えてください」じゃないんですよ。
でも、多くの日本人シェフは作り方を教えてほしいと思ってフランスに来るから、すぐに「レシピください」って言います。日本で修行してきているから技術はある。だから見よう見まねで表面的なデザインの真似ばかりしてしまう。でも、言語力がないから「なぜこれが誕生したのか」ということを聞けないんです。
自慢になりますが、じぶんも同じような質問をしてきています。
広告の仕事における情報収集のやり方だったり、企画書の書き方だったり、見積書の書き方などについてです。
「〇〇さん、ホントすごいっすよねえ。これどういう風に考えてやってるんですか?」と。
あまり人を選ばず、同じように訊いていました。気がついたのは、答え方に2パターンあるということです。
「だって、そうじゃん」といった何も考えてないような応えと、「それはさ、〇〇という前提があるわけじゃん、ということは△△とも言えるわけで、だからこうなるんだよ」といった風に、丁寧に(もはやオタク的に詳細に)説明してくれる応えです。
この本の中では、「なぜ、そう考えたのか」という考えのルーツを探る質問をよしとしていますが、この質問に答えられない人も多いです。というより、答えられない人の方が多いのが実感です。
正直、「なんでそんなことやってるのか?」なんてこと考えず、ただやり続けているだけの方がよっぽど楽です。
そのことを、ボロクソに言うつもりはありません。むしろ、自分自身だってそんな深いことを考えるのは辛いので、思考停止していることの方が多いです。
でも、今それをとても後悔している事柄があります。
「問い続ける力」が無かった体験談
高校生の頃、じぶんは軽音楽部でギターを弾いていました。
弾いたことがある方はご存知かもしれませんが、ギターは五線譜が読めなくても弾けます。三和音を始めとするコードが書かれた譜面というものがあって、Cだとか、Gだとか、決まった形を抑えればOKなんです。
そこに落とし穴がありました。
基本的なギターのコードを抑えることができて、ギターソロも人並みには弾けるところまでいきました。1日8時間ぐらいギター弾き続けていたので。
でも、アレンジを効かせたり、オリジナル曲をつくることは、ほとんどできないのです。
なぜならば、じぶんが良いと感じる曲などがあっても、なぜその曲の音運びやリズムが好きなのか、立ち止まって考えたことが無かったからです。
だから「ジャムセッションやろうよ」なんて言われた日には、ペンタトニックスケールをチョーキング混じりに弾いてお茶を濁すばかり。恥ずかしい思いを繰り返してきたのです。
より好きなじぶんの音を探すよりも、目の前にある文化祭で弾く曲を練習するので手一杯だったのです。
「じぶんが良いと思う音楽はどんなものか?」
じぶんに足りなかったのは、こんな”問い”でした。
そういえば、先日取り上げた「ナボコフの文学講義・上」にこんなことがかいてあります。
いまから百年前、フロベールは彼の愛人への手紙のなかで、こんなふうのことを語っている。(中略)「わずか五冊か六冊かそこらの本をよく知っているだけで、ひとはどんな学者にもなれるものです」。(P53)
まさに、数は少なくても構わないから、それらを深く貪り尽くすことが、必要なのだと思います。
「良く」あるために「捨てる」
P284 おわりに 「問い続ける力」を身に付ける
頂は峠にすぎない
たとえば、プロ格闘ゲーマーである梅原大吾氏は、「最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネス記録を保持する達人だ。梅原市の際立った特徴は、みずから見つけた勝ちパターンに個室せず、あっさり捨て去り、「さらによいやり方はないか」と試し続けている点だ。そのため、短期的に勝率が落ちることはあるものの、このみずからの勝ちパターンを更新し続ける姿勢が、圧倒的な強さを生み出しているのだ。
こんな問いは、今いるところからさらに先の話だと思うけれど引用します。
たとえ、「これがじぶんの思う『良い』ものだ」というものが見つかったとしても、そこに固執すべきではないみたいです。
よく聞くことではあるのですが、いざじぶんにできるかとなると少し不安なものです。
広告の仕事を始めて、早5年。今は大筋「こうすれば上手くいく」というパターンのようなものが見えかけているのですが、この方法を華麗に捨て去るイメージはなかなかつかない。
でもきっと「より『良い』方法」に辿り着くためには、このままではいけないのでしょう。
引用した箇所のタイトル「頂は峠にすぎない」。これ、かなり的を射た言葉ですよね。
食戟のソーマにもたしか、こんな風にひたすらな研鑽の道をあっけらかんとした顔で突き進むための助けになる言葉があった筈。
すぐにはその箇所が見当たらないから保留にするけれども、大事な物。
思い出したら、ここに更新します。
終わりに
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