見出し画像

怪我の功名

約1ヶ月前、私は友人と一緒にキックボクシングに行った。
キックボクシングをやるのは初めて。 
経験者の友人に教えてもらいながらシャドウ(鏡を見ながらフォームの練習)をしていた。

怪我をしたのはパンチを終えて、キックの練習に入った辺りで起きた。


ピラティスのインストラクターをしている私。
柔軟性には少し自信があった。

どのくらい脚が上がるだろうと張り切ってキックした。


気付けば視界は真っ暗。床に這いつくばっていた。


思い切りキックした勢いで、床に着いて身体を支えていた軸足が浮き、バランスを崩し、そのまま横に倒れ左脇の下あたりを床に強打していたのだ。

一瞬の出来事でみんな何があったのか分からない。
私自身も分からない。とにかく強烈な痛みが脇腹を襲っていた。

遠くの方で友人の「せきちゃん大丈夫!?どうしたの!?」という声が聞こえた。


あまりの痛さで友人からの声に応える事もできなかった。


心配して駆け寄って来てくれた友人に「死ぬほど痛いけど大丈夫、少し休むけど皆んなは楽しんで」
と小さな声で伝えた。


痛いながらもここは邪魔になると思い、床に這いつくばりながら端に移動し、またこめかみを柔道場の床に付けた。


そのまま向こうに目をやると、友人たちがミット打ちをやっていた。

床越しから見える彼らはとても楽しそうだった。

いいなぁ。


ひとしきりしたら友人達が戻ってきて声をかけてくれた。

「せきちゃんはやらないの?」


その一言で火がついた。

ほんとにそうだ!私は何をしに来たのだろう!
ここに這いつくばりにきたはずではない!

痛みはまだあるが、さっきよりマシな気がする。

できるかできないかで言うならできそうだった。


「ちょっとまだ痛いから優しくしてね」

そんな保険を掛けながらミット打ちを始めた。

生まれてこのかた人を殴ったことがないので、パンチする感覚があまりにも新鮮でうまくできない。
でも、パンっという心地よい音は響き、自分の拳にも衝撃が来る。

キックも楽しい!
さっきはキックの練習中に転んだが恐怖はなかった。だが慎重に、構えているところに脚を当てにいった。

https://www.instagram.com/p/Bu7uNsHnREq/?igshid=11o16fpoprdrx


ひとしきり楽しく終わり帰路に着く。

痛みのある箇所が歩くたびベコベコしていた。

自宅に帰りシャワーを浴びる。

アドレナリンが切れたのか時間が経ったからなのか、なんだか痛い。

ベッドに入ると痛みが増して、疲れているが痛みで寝られない。

確か湿布の残りがあったなーと思ったが取りに行く気力もなかった。

だんだん空が明るくなったのを感じた頃に眠りについた。



朝目が覚めた。1mmも身体が動かなかった。
ちょっとでも動かそうものなら激痛が脇腹を襲った。

病院に行かなくてもすぐわかった。

これは折れてる。

今晩のレッスンをどうするか。
代わりの先生を確保しなければ。

動かない身体が却って頭を冴えさせた。

連絡するにせよ、診察を受けて現状を把握しなければ。


支度をしようともベッドから身体が起こせなかった。
少しでも動くと激痛。息をするのも痛い。

寝起きの悪い私がベッドから起き上がれない、といういつもの状況とは違う。
起きたくても起きられないのだ。

たった1秒でできるベッドから起き上がるという行動が30分掛かった。
どうにか身体を起こし支度をしようにも、痛くて服に腕が通せない。

悪戦苦闘しながら思った。
昨日まで元気に毎日動いていた自分がウソのように感じてもはや夢なのでは。そう思いたかった。

やっとのことで病院に着きレントゲンを撮ったら、スパッときれいに肋骨が折れていた。


やっぱりね。


骨折している自覚が芽生えたら痛みは更に増し、歩いて15分ほどで着いた病院からの帰りは倍掛かった。

自宅に戻り代わりの先生の確保に奔走し、生徒さんや関係各所への連絡に追われた。

スマホを持つだけで、その重みで痛む肋骨。
こんな事で痛いのかと驚きつつ指を走らせた。
 


今まで1度たりともレッスンを休んだことのない私が、代行を頼むとは何事かとインストラクター仲間たちもみんなすぐに手を差し伸べてくれた。

生徒さんやSNSのフォロワーさんからの100件以上の励ましのメッセージも、友人たちの手伝いに行こうか?という言葉にも本当に本当に救われた。


全てが温かくて、改めて恵まれた環境に感謝した。


ただやはり辛い状況に凹んでいたら

友人が「せきちゃんならこの怪我の経験を活かして、これからもっといいレッスンができるでしょ!」そんな風に言ってくれた。すごく幸せだった。

絶対できるし、そうしたい!!ピンチをポジティブに捉えることを教えてもらった。



怪我をしなければ心の底から実感できなかった、身体の大切さや脆さ、健康の尊さ、に気付くことができた。


怪我はしたけど、まさに怪我の功名だ。

初台ピラティススタジオ STUDIO es 代表です。 週7でレッスンするピラティスオタク。 スタジオは6年目、インストラクター歴は10年。 美味しいお肉と筋肉をこよなく愛してます♡