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同じ土俵で勝負しない - CCN賞2020募集ポスターの制作裏をインタビュー

こんにちは。
スタジオディテイルズのチーム4989です!

今回は私、小倉が昨年デザイナーとして年鑑制作に携わらせていただいたコピーライターズクラブ名古屋(以下CCN)のCCN賞2020募集ポスターの制作裏をインタビューさせていただきました。

CCNとは

CCNは名古屋の広告代理店やプロダクション、フリーの方などが地方の広告クリエイティブ活性化のために活動している団体です。CCNでは年に一回、コピーライター、プランナーのための広告コンペディション、CCN賞を開催しています。

ちなみに弊社ADの安藤も審査員を務める今年の審査発表は、9/13(日)13時から、Youtubeライブで開催を予定しているそうですので、ぜひご覧ください!

そんな名誉あるCCN賞の審査基準は「嫉妬」です。

輝かしい賞の裏には、嫉妬が隠れています。
ですが、嫉妬という気持ちが時に原動力となり、賞を獲るという栄光を手に入れることができる。そんな夢のような可能性も秘められています。

-仕事の規模や知名度に関係なく、「嫉妬」という独自の基準で審査し、
賞を贈り、個人に光をあてること。

CCNの公式WEBサイトのメッセージに綴られた言葉の通り、毎年若手から広告代理店やプロダクションで働くベテランのコピーライターまで、多くの人がCCN賞に挑戦しています。現在は幅広い広告の領域を対象にするために「自由部門」というジャンルレスな部門もあります。

CCN賞のもう一つの目玉となっているのが、ポスターや年鑑などのデザイン。毎年凝ったデザインが展開されており、海外賞を獲ったこともある実績から、実は名古屋の広告界隈では「歴代作品との勝負」と感じるほど、プレッシャーがあるものだそうです。

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2019 仕掛ける年鑑

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2018 刺激を与える年鑑
[受賞歴]
2019年 ONE SHOW - Merit
ADC AWARDS - Merit
CANNES LIONS - shortlist
ADSTAR - Bronze
AICHI AD AWARD - 中島しんや賞

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2012 スティッキーノート年鑑
[受賞歴]
2013年 カンヌライオンズ デザイン部門 - ゴールド         

今回は、私自身も昨年CCNに関わっていた身として気になっていた、今年のCCNのポスターの制作裏を、CCNの運営委員でADの秀島康修さん(以下「秀島」)にお聞きしました。

“コロナ禍”という制約から着想を得たポスター

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【CCN賞2020募集ポスター】
CCN賞のエントリー作品を募集する告知ポスター。CCN賞の開催に合わせて毎年制作しているポスターで、このポスターのキャッチコピーはCCN会員から募って審査し、選ばれたコピーがポスターになっている。今年は株式会社Queの岡部将彦さんに審査いただき、グランプリ1本・準グランプリ2本のコピーを選出していただいた。

<スタッフクレジット>
キャッチコピー:
【グランプリ】
『ことばの世界にも、世紀の大発見はある。』狩野慶太
【準グランプリ】
『あぁ、俺がこれ思いつきたかった。』山中彰
『帰る頃にはもう、書きたくなってる。』海本栞璃
【制作スタッフ】
クリエティブディレクター:船引悠平(CCN運営委員長)
アートディレクター:秀島康修(CCN運営委員)
デザイナー:鈴木友章・塚本唯・山本真央・神谷みのり
(スズキモダン)/眞坂藍(デザインエシカラ)
ディレクター:纐纈泰典(スズキモダン)
プランナー:中切友太・古山萌美(CCN運営委員)
制作協力:関谷知加・山中彰・西山智香・松下晃平(CCN運営委員)
実験協力:豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 視覚認知情報学研究室
印刷:鬼頭印刷

小倉「CCNは毎年デザインが面白いなと思っているのですが、今回、このようなポスターデザインになった理由はなんでしょうか?」

秀島「今年はコロナなので、初のリモート審査に切り替えたという点が大きい理由かもしれないですね。今までは現物を郵送で応募し、大学でグラフィックを全部並べてムービーも一気に放映しながら公開審査を実施していました。

海外の一次審査などはデータで審査していましたが、CCNもデジタルデータで審査ができるのか?という疑問がありました。このようなことから、今年のCCN賞は新しい挑戦であり、実験的な意味合いが強いと思いました。これまでの公開審査というある種アナログな審査ではなく、デジタルな審査なので、募集ポスターも今までのようなアナログ感ではなく、今回しかできない表現があると考えました。」

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秀島「ちなみにこのポスター3種類あるんですよ。例年、グランプリと準グランプリをとったコピーを元にして作っています。ポスターの色で、金・銀と分かれている部分があると思うのですが、グランプリは金色になっていて、準グランプリは銀になっています。」

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準グランプリのポスター 『あぁ、俺がこれ思いつきたかった。』

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準グランプリのポスター 『帰る頃にはもう、書きたくなってる。』


ポスターを段ボールにする案もあった

秀島「実は、公開審査も開催しようとしていて、その時はポスターを段ボールにする案もありました。作品を梱包して送るので、その箱をそのままポスターにすれば、CCN授賞式当日の会場の装飾にも使えそうだなと思っていました。」

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ポスター段ボール案のラフ

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昨年のCCN賞授賞式の様子。毎年授賞式会場を装飾している。

秀島「デザイン的にもいいものができていたんですが、リモート審査になったので、公開審査を前提にしていたこの案は別の機会だなと思いまして。

あとは名古屋のデザイン事務所、株式会社スズキモダンさんが最初のアイデアを持ち寄りの際に、社員全員で参加して下さり、"言葉の音を表現する"というラフを持ってきて下さって。それを見て、僕がディレクションという形で膨らませました。」


見たことがないモノに必ずなると確信していた、脳波実験の裏側。


小倉「今回、本当に脳波実験をしたのでしょうか?」

秀島「本当に脳波実験しているんですよ(笑) 伝わってないんだなと思ってガッカリしているんですけど(笑)

実験してくれる所を探すのが大変でしたが、見つけることができれば見たことがないモノに必ずなると確信していました。

元々、個人的に賞を取るコピー・企画・グラフィックと、賞を取れなかったモノの違いを科学的に検証したいと思っていて、リモート審査で違いを判断できるのかを検証する意味合いもあり、脳波実験をしました。」

小倉「そうだったんですね。決まったあとはスムーズに進んだのでしょうか?」

秀島「スムーズでしたね。大学を沢山あたり、視覚から趣向を科学的に研究している豊橋科学技術大学の視覚認知情報学研究室の方々と運命的に出会うことができました。お聞きしたところ、脳の研究者からすると実験素材を選ぶのにも一苦労されていて。

CCNは色々な広告が集まるので、協力すれば科学的に人の広告の好き嫌いを測るといった、面白いこともできそうだなということも見据えています。」

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北川「左が赤くて右が青くなっていると思うのですが、何が測れているのでしょうか?」

秀島「脳波ですね。赤いところが電気信号が多く検出されたところで、青はその逆です。つまりは赤くなった方が選ばれていないコピー。左脳の赤いところは言語処理が大きく反応し、青は言語処理が全く活動せず、反応がなかったということです。具体的なイメージがすぐ湧いて、すぐ理解できたっていうのが結果から見えるという考察をしていただきました。」

北川「個人差はあるのでしょうか?人によっては考えてしまう人や、スッとと入ってくる人がいると思うのですが。」

秀島「面白いのが、自分がちゃんと意識してこれ好きか嫌いかというのを考えてる時間ではなく、それより以前の瞬時の0.5秒間での反応を測定しています。自分の無意識の見た瞬間の反応ですね。

実験にご協力いただいた教授と院生の方々がとても前向きで、短期間でも形にできたのは大学の協力あってのことでした。この苦労を乗り越えたことで、今までの告知ポスターにはなかったインタラクティブ性があり、見たことのないモノになったと思います。」

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普通の印刷にする気はない。

北川「特殊印刷をされたと思うのですが、色の指定はどのようにされたのでしょうか?」

秀島「CMYKのMYを蛍光ピンク・蛍光イエローにし、プラスしてグランプリのコピー1種はゴールド、準グランプリのコピー2種はシルバーを追加しました。CMYKのMYを蛍光色にすることで、掛け合わせのイメージもしやすく、入稿データの制作やディレクションのしやすさを考慮しています。

最初はRGBにしようと思っていたのですが、蛍光グリーンなどにすると、蛍光ピンク×蛍光グリーンは黄土色になるなど、掛け合わせの相性が悪く、鮮やかに表現できる色が限られるのと、上がりの想定が難しい点も考慮し、このような色の指定をしています。」

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北川「今回、印刷のスケジュール感はどんな感じだったのでしょうか?」

秀島「大変でしたよ。コンセプト決まったのが5月末か6頭ぐらいかな。印刷は鬼頭印刷さんにお願いしたのですが、印刷の時間は実質営業日で、6日か7日間ぐらいでした。

加工に関しては、端の方を変な形に切ってあるのですが、そのまま切ると雑に見えるので、飛び出た文字の角度に合わせて切っています。意図としては、実験や検証する感じを出すために、色校正をそのまま残しました。その感じが今、挑戦しているCCNにも当てはまるかなと思っています。

紙は発色が一番出る普通の紙にしています。気泡紙のように質感があるものは、蛍光色を吸ってしまうので。

話が少し逸れてしまうのですが、海外の賞に出そうとすると、普通の色で出しても、目立たないなと思っています。何故なら、海外のデザイナーは質感よりも色を重視していて作品の色が凄いきれいなものが多いので、派手さは絶対いるなと思います。やる仕事全て海外賞を狙っているので、普通の印刷にする気は僕はないですね。」

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違う土俵で戦った方が新しく見える

北川「4989では、クリエイティブ職に就いて3年目くらいまでの若手に向けてSNSで情報を発信しているのですが、若手クリエイターに対して、制作をする際に何を意識したらをいいのか教えていただきたいです。」

秀島「大事にしてるのは、同じ土俵でやらないということです。ここまでできるというキワを見せるのがADの仕事だと思っています。 CCNでいうと、2018年の足つぼの年鑑でここまでやるのかというところまで考えました。最初、年鑑なくそうとしてましたからね。本気で。

あとは、"インタラクティブ性"も意識しています。ツボだと足を踏めるのでインタラクティブ性を表現できたかなと。今回のポスターでいうと脳の実験をすることで、デザイン以上のことが語れるなと思っています。

有難いことに、結果が出ているのはその意識でやっていたからかなと思います。夢物語みたいに聞こえますけど、そんなに天才ではないので、そのくらい目指してやっと引っかかるぐらいの感じではありますね。」


北川「秀島さんの作品は本当にバイアスブレイクだなと思います。固定観念に捉われずに、幅を広げてアイディアを出していくという感じなのでしょうか?」

秀島「そうですね、色んな視点を持つことが大事だなとは思います。色々なことを複合的にできて新しいものを作れるというのが、今求められていると思います。」


インタビューを終えて

お話をお伺いし感じたのは、"アイディアを複合的な視点から練り、デザインをしている"ということでした。目立つ色味から、インタラクティブ性まで視野を広くし、考えつくしているからこそ抜き出る作品が作れるのだなと感じました。

現在、デザインツールやリファレンスが世の中に大量にあり、制作する上で便利な世の中になったと言われています。大変有難いことですが、実際はそうではない側面もあります。

大量の完成された作品の上をいかなければいけない。今まで見たことのない抜き出たものを作らなければならない。
そう考えたとき、沢山の選択肢を組み合わせて、新しいものを作る力が求められているのは、自然な流れな気がしています。

この記事を通して、自分がどういう意識で制作に向かえば良いかを考えるきっかけになれば嬉しいです。最後まで読んでくださりありがとうございました!


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インタビュアー:北川、小倉
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