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ベイシー楽曲分析-Shiny Stockings

リスニング(聴くこと)が、ビッグバンドをスウィングさせるために必要不可欠な要素だ、と気付いたことから、指導するバンドにカウント・ベイシー楽団の曲を毎週1曲ずつ聴かせようと、リスニングの助けになる楽曲分析を始めました。それを、こちらに掲載していきたいと思います。

まずは、この曲「Shiny Stockings (Arranged by Frank Foster)」から。

1. リスニングのポイント

アンサンブルが難しいミディアム・スウィング(およそ126 BPM)であること。ダイナミクス(強弱)の変化がとてもお洒落でベイシーらしい。

そして、レイドバックを語るならまさにこの曲ではないでしょうか。フレーズの1拍目はリズム・セクションにきっちり合っていますが、フレーズ中の裏拍はことごとく遅くなっています。しかも、ホーン・セクション内ではぴったりタイミングが合っているという神業!

2. 形式

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1コーラスはABAC(またはABAB')の32小節で構成されています。[B]の後半で一時的にKey of Cに転調しますが、すぐにKey of Abに戻ります。[A]の最後の小節にはIIImからIImへのディセンディング(下降)・ディミニッシュ・コードがあり、独特のお洒落さがあります。アンサンブルする際には、毎回ここで均等なディミニッシュの響きを出せているか要注意です。

3. 楽曲分析

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ピアノのリフによる短いイントロの後、ブラスのミュートサウンドによるテーマが弱奏で示されます。このフレーズの裏拍のレイドバック感は絶妙で、ミディアム・スウィングのレイドバックのお手本と言えるでしょう。

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間奏はサックスが入り、トロンボーンのドミナント・ペダルがソロへの期待感をあおります。ブレイクの後の2コーラス目に登場するのがトランペット・ソロです。2回目の[A]でバックグラウンドによる3拍フレーズ(ポリリズム)の合いの手が登場し、リズミック・テンションを醸し出します。

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3コーラス目で弱奏のトゥッティ(全合奏)が登場しますが、フレーズに間が多く、時折ベイシーのピアノの合いの手が顔を出します。[B]の後半でトゥッティは強くなり、再び弱く落ち着きます。このダイナミクスの変化が3コーラス目の聴きどころです。

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ドラムのビッグ・フィルインの後、4コーラス目で強い全合奏になります。いわゆる「シャウト・コーラス」です。長く激しいシェイク奏法が繰り返され、ここでも裏拍のレイドバックが生きていて見事です。やがて強弱は落ち着き、[C]が繰り返され、ベイシーのピアノが顔を出し、短いドラム・ソロの後終わりを迎えます。

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