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また、裏切られたい

「良い意味で、いつも読者を裏切るようにしています」と話す、東野圭吾さんの言葉をどこかで読んだ記憶がある。細かいところは間違っているかもしれないが、だいたいは同じだと思う。

初めて東野圭吾さんの作品に触れたのはいつだったろうか。たぶん十代の終わりごろに「探偵ガリレオ」を読んだ時が最初だったと思う。あのオムバス形式の作品はとても読みやすかった。自分は強迫性障害の影響で、一度に読める量が少ない。なので短くまとまっている物語はありがたかった。そしてこの、短編がいつくも収録されている本のおかげで、長編の作品もだんだん読めるようになっていった気がする。

最近読んだ東野圭吾さんの作品は「ナミヤ雑貨店の奇蹟」。これもまたオムニバスと呼ぶのだろうか。一章がコンパクトにまとまっているにも関わらず、読んでいると人物の背景が鮮明にイメージ出来るような繊細な文章だった。特に胸を打ったのは、ビートルズを取り上げていた章だった。この章を読んでいる間、ビートルズが好きだった親父のことを何度も思い出した。

そして今回もやはり裏切られた。最後にやられたのだ。完全に不意打ちをくらい、思わず涙してしまった。

常々思うのは、フィクションを書く作家さんは凄いな、ということ。実在しない出来事や人物などを描き切るためには、相応の時間をかけた取材や、熟考が必要だと思うからだ。ノンフィクションも、もちろん大変な思いをして取材し、長い時間をかけて考えて書き上げているだろう。

しかし、ノンフィクションの場合は、実在しないことが前提であるから。よりリアリティが必要になるだろうし、話の整合性も重視しなければならないだろうと思う。

結局何が言いたいのかというと、"文章を仕事としている人たちは本当に凄いな。"ということです。

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