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価値あるもの

テッポウユリが咲いていた。雨間に、少しだけ散歩をしているときに見かけた。花の部分が重いせいか、雨に濡れたせいか、下を向いて咲いているものが多かった。近くに寄ってまじまじと観察してみる。白い花弁と、横に走る赤いラインのコントラストが美しい。この花は別名「琉球百合」ともよぶらしい。

よく見るとそこら中に咲いている。なんてことのないただの空き地に、雑草たちに混じって咲いている。こんなに綺麗なのに、あまり注目している人を見かけない。この季節には、ありふれているからだろうか。

人間はありふれているものよりも、限定されているものに価値を感じる傾向があるような気がする。限定10点限り!と、書かれていると思わず注目してしまうように。

しかし本当に良いモノ、価値あるモノとは、昔から皆の手にあり。それこそ"ありふれたもの"なのだと思う。

昔テレビを見ていて、たしかSMAPの番組で。エルメスのバーキン。その名前の由来となったジェーン・バーキンさんがゲストに来たことがあった。SMAPのメンバーが料理をつくり、ゲストに食べてもらって審査をしてもらうコーナー。そこにゲストとしてバーキンさんが来たのだ。

中居さんが通訳さんを通してバーキンさんとやり取りをする中で、ふと、バーキンさんが使っているバッグの話になった。彼女は普段使っているバッグをスタジオに持ち込んでおり、これはもう20年ほど使っていると言った。そのあと料理対決で勝利したSMAPのメンバーに新品のバッグをプレゼントとする際、バーキンはそのバッグを足で踏みつけ、床に叩きつけてから「これで良い感じになったわ」とメンバーに渡した。

ジェーン・バーキン、彼女にとっては高級なバッグも、ただのバッグと同じだということなんだろう。同じ物を長く使い、新しい物でもより良く使うよう心掛ける。彼女なりの価値がそこにあるのだろう。

多くのひとは、限定されているモノが価値のあるモノだ、と。思い込まされているだけなのかもしれない。ほんとうは、ありふれたモノこそ、真の価値があるのだと思う。

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