『スプライス』感想 ※ネタバレあり
新しい生き物を人類の手で創造しようとしていた夫婦があらゆる一線を越えまくる映画。
『CUBE』で鮮烈デビューを飾ったビンチェンゾ・ナタリ監督。
未知なる生物が跋扈する閉鎖された空間、という前半のみのイメージを掬って、日本の映画会社は完全に『エイリアン』と同じ路線の宣伝イメージで飾ってきました(『スピーシーズ』も同じ路線)が、その内容はまるで違う。
強いて似てるところを上げるならば、男性器そっくりの化物が素早く研究所を逃げまわるシーンくらい。
硬派なSFサスペンスと思わせといて、中身は真っ当などたばたモンスター映画。
天才科学者の夫婦の研究の元に生まれる未知なる生き物はそのまんまこれ、「生まれたての子供」のメタファーになる。
さらにその「子供」は言葉を発することもできなく、指の数も足りない。
つまり「障害児」として現れる。
夫婦の今までの関係性に割り込んできた「特殊な子供」はやがて夫婦の関係性に深く絡み付いていく。
始めは動揺する父親、それでも溺愛する母親。
やがてその関係は、「子供」が成長して「大人」に近づいていくにつれて「自由」を求め始めた時点で逆転していく。
母親は、子供が自由になる事は許せないのだ。何故なら、過去の自分もそうだったから。ぬいぐるみやペットを奪われ、自由を奪われてきたから、こそ。
母親は社会性が欠落しているような子供じみた人物として描かれる。なので、子供が成長していくにつれて母親の幼児性が浮き彫りになっていき、やがてそれは自身が虐待されていた過去から逃れられず、「子供」にも同じように虐待をしてしまうことになる。
それを見咎めた父親はまた、「子供」との愛情を超えた禁断の関係を持ってしまい、やはり成熟した大人とはいえない。
そんな風に子供を育てる資格のない夫婦に牙を向くように、「子供」はラストでその凶暴性を発揮し、人々を惨殺し始める。
それは反抗期なんていう言葉では済まないほどの暴れっぷりで。
このラストでいきなりボガンボガンの怪獣映画となってすっごい面白い!
で、子供の起こした不祥事(ってレベルじゃないけど)に決着をつけるのはやっぱり親の責任。
ラスト、母親の台詞「失うものはない」という台詞は途中父親も言うのですが、それの意味をラストでジワリと感じさせるのはとてもホラーとして好みです。
嫌な気持ちになりますねー!
結構笑えるシーンもたくさんあってエンターテイメントしている良作です! なにより登場人物が激少なのが良い!
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