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『L.A.コンフィデンシャル』 感想

1950年代のロサンゼルスで三人の刑事が虐殺事件を追う映画。

原作はジェイムズ・エルロイの傑作刑事小説。
一度DVD化されてたけど廃盤になり、長らくamazonで高値が付いていたけど、少し前にTSUTAYAが再DVD化してくれたので入手しやすくなりました。

ラッセル・クロウ演じるバドは短気で寡黙な暴力刑事。
ケビン・スペイシー演じるジャックは刑事もののハリウッドドラマに演技指導に行っている汚職刑事。
ガイ・ピアース演じるエドは殉職した父親の背中を見つめる大学出の新米刑事。

ロサンゼルスのクリスマス。夜。
バドは女性に暴力をふるう男を見ると見境がつかなくなる。
今夜も呆れる相棒をよそに暴力亭主に殴りかかっている。
彼とステンズランドは、署内で行われるクリスマスパーティーのための酒の買い出しの途中だ。

ジャックはゴシップ雑誌『ハッシュハッシュ』の記者、シドと手を組んで汚職をしている。
シドがジャックにハリウッドスターたちの麻薬の情報を売り、ジャックはそれを逮捕する。そしてその逮捕される劇的瞬間を『ハッシュハッシュ』が激写して部数を伸ばす。
お互いに得のある取引だ。

エドは真面目で堅物。
父のような刑事になりたい、と願うも、上司のダドリーには「容疑者を起訴するために証拠をでっち上げることができるか?」「犯人を背中から撃つことができるか?」「自白を強要できるか?」と質問されるが、彼の答えは全てノー。
ダドリーは、「現場には向いていない」と言い放つ。

クリスマスパーティーの行われる署内では、仲間の刑事を傷つけた容疑者としてメキシコ人の集団が逮捕されていた。
そのことを知ったステンズランドは仕返ししてやる、と監房へ向かう。
エドはそれを止めようとするが全く歯がたたず、他の刑事によって物置に閉じ込められてしまう。

複数の刑事たちがメキシコ人に暴力をふるうその姿はその場に居合わせた記者たちによって写真に撮られ、『血塗られたクリスマス事件』として大きく報道されてしまう。

クリスマスの夜、署内で何が起こったのか?

ダドリーや検事たちは刑事たちから証言を得ようとするが、誰も仲間を売るような真似はしない。
バドは事件の首謀者が相棒のステンズランドであるから余計に口を閉ざす。
だがエドは違った。
彼は己の信じる正義の元に、証言をする。
エドは、ジャックも証言するはずだ、という。
ダドリーはまさかと思うが、「ハリウッドドラマの演技指導の任務を下ろすと脅せば彼は証言するはずです」と言う。
そしてそれはその通りになった。
だがエドは仲間を売って出世した奴、として署内から仲間がいなくなってしまうのであった。

同じくジャックも証言していたのだが、彼にはそれまでの信頼があった。
ジャックは麻薬課から風紀課に転属させられることとなる。

バドは証言を拒んだとして、刑事のバッヂと銃を取り上げられるが、ダドリーによってすぐに返してもらえる。
ダドリーは
「本当に信用できるのはお前のように仲間を売らない刑事だ」
と言う。

だが、相棒であり首謀者であるステンズランドは辞職に追いやられてしまった。

バドはステンズランドを飲みに誘うが、ステンズランドは「今夜は女と会う。また今度な」と言って別れた。

その夜、ナイトアウルというコーヒーショップで殺人事件があったと通報が入る。
エドが駆けつけると、コーヒーショップの男子トイレには、六人の男女の惨殺死体が重なりあっていた。

『ナイトアウル虐殺事件』と名付けられたこの大量殺人事件を、エドはダドリーと共に指揮をとることになる。

その頃、ジャックはハリウッドに蔓延る卑猥極まるヌード写真の出元を捜査していた。このモデルの女性たちは何者なのか?

そして『ナイトアウル虐殺事件』の被害者の一人の身元が判明する。
なんとそれはステンズランドだった。
元相棒を惨殺されたバドは、たった一人で捜査を開始する。

はたしてハリウッドに渦巻く暗黒の正体とは?

傑作サスペンスでした。
原作はジェイムズ・エルロイの長編で、文春文庫から上下巻で出ています。
二巻にわたる長い原作に出てくる登場人物をバッサリ切って、登場人物達の背景もシンプルにすることによって本編を140分弱に収めていて見事です。

登場人物は多いは場面や時間はぽんぽん飛ぶわエルロイ独特の文章は読みにくいわで原作読むのは大変なのですが、一度はまってしまうと一気に読んでしまう面白さを持っています。
でも俺は読みきるのに三ヶ月くらいかかりました。全然一気に、じゃないですね。

で、この映画版はとても見事でほとんどのシーンの台詞と描写が伏線になっていて、キチンと回収されていくので面白くて仕方ない!

出演者も今でこそ豪華ですが、当時はまだマーケティング的には地味なメンツだったものの、作品の素晴らしさを一段も二段も上げる素晴らしい演技を見せてくれて流石。

細かく張り巡らされた伏線を確かめるために何度も観たくなる傑作です。
原作と違うラストも素晴らしい。

エルロイのこの『暗黒L.A.四部作』の内、第一作目の『ブラック・ダリア』も、ブライアン・デ・パルマによって映画化されているのでそちらも是非是非。
第四作目の『ホワイトジャズ』もジョー・カーナハン監督で映画化されるという情報だけあるのですが、ジョージ・クルーニーが降板して以来情報が入ってきませんが一体どうなったことやら?

#映画 #映画レビュー

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