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『イノセント・ガーデン』 感想 ※ネタバレあり

思春期の少女が、世界に対する“自分”を確立していく映画。

鬼才パク・チャヌク監督のハリウッドデビュー作のサイコホラー。

狩り好きのお父さんに愛されて育ったインディアは、18歳の誕生日を迎える。

毎年お父さんは誕生日プレゼントを広い庭の何処かに隠していて、インディアはそれを探すのが楽しみだった。

著名な建築家の父は、インディアに自作の靴を毎年プレゼントしていたのだ。サイズはキッチリと大きくなっていく。
それだけで、父のインディアに対する深い愛情がわかる。

だけれど、今年のプレゼントはいつもと違って、鍵だった。靴ではない。
これはなんの鍵なのだろう。
それの答えもわからぬうちに、大好きなお父さんが燃えて死んだと聞かされる。えー。

お父さんのお葬式の日、初めて見る人が家にやってきた。
彼はお父さんの弟でチャーリーと名乗ります。
こんにちわ。
で、チャーリー叔父さんはその日からインディアとママだけになってしまった家に住み着くのだった。

この時点でもうだいぶこの人、怪しい。
なので、インディアもバキバキに警戒しています。
なんなのこの人。なんで帰らないの。

大好きだったお父さんがよりによって誕生日に、しかも靴じゃなくて気味悪い鍵を残して死んでしまったのもあって、インディアはドンドンと暗ーい顔ばかりになって行きます。

それに反比例するかのようにママは若い叔父さんが家に来てなんだかキャッキャしてんの。やな感じ。

そもそも、ママは昔からインディアの相手なんか全然してくれなかったのだ。
いつもどっかに遊びに行っていて、お父さんが死んだというのにちっとも悲しんでないっぽい。

だから、ますますインディアは暗ーい顔になるのだった。
家政婦のおばさんも行方不明になるし、なんかやな感じ。

でもチャーリー叔父さんはアイスとか買ってくれて、地下室にある冷凍貯蔵庫に保管しなよ、とか言ってくるのでインディアはノロノロと地下室へ行ったりする。

その後もチャーリー叔父さんは全然家に帰るそぶりも見せずにお父さんの残してくれた大きな庭を整えてたりする。

そこに大叔母さんがお父さんにお祈りを捧げにやってきて、チャーリー叔父さんの顔を見るなり態度が変わる。
なになになんなの。

で、帰り際にインディアに、大事な話があるから電話してとか言ってメモを渡す。

大叔母さんはなんだかチャーリー叔父さんを警戒してるみたいで、携帯電話を探すんだけど見つからない。
どっかに落としてきたのかな。

仕方なく大叔母さんは公衆電話からインディアに電話をかけるんだけれど、インディアは丁度そのタイミングで地下室にアイスを取りに行っていたので電話に気がつかない。

ママも気がつかない。

そしたら、チャーリー叔父さんが大叔母さんのいる公衆電話の所に携帯落としたでしょ、っつって届けにきてくれた。

ああ、この人は怪しかっただけで実はいい人なのかな、と思ったところでジャーン。

チャーリー叔父さんはお父さんの服を借りていたそのベルトを外すなり、大叔母さんの首を絞め殺すのでした。

同じタイミングで、地下室の冷凍貯蔵庫の奥に詰め込まれていた家政婦さんの死体を発見するインディア。

あー、やっぱり怪しいチャーリー叔父さんは、掛け値なしの殺人鬼だったのだ。

だけれどインディアには合点のいかないことがあって、そもそも地下室にアイスを置きに行きなよ、と言ったのは叔父さんなのだ。

どうしてわざわざ死体を発見させるような真似を?
なにか企みがあるのかもしれない。

叔父さんにはまだまだ謎が隠されている。
そう考えたインディアは暫く様子を見ることにする。

彼女は美人で成績も優秀なのだけれどちょっと普通の学生とは違って、美術の時間も花をデッサンするのではなくて花瓶の内側の模様ばかりが目に行く。

何かがおかしい。

で、ママとチャーリー叔父さんがキスをしているところを見てしまった彼女は、なんだかムカムカするままに、同級生で自分のことを好いていてくれる男の子を誘って夜の街に繰り出すのだ。

だけれど、やっぱりなんかが違う。

男の子はすっかりエロい気持ちになってインディアとイチャイチャしたいと思ってるのにインディアはそれを拒否。

自分から誘っておいてそれはないだろう、と怒る男の子を倒したのは、ジャーン、チャーリー叔父さんなのだった。

あまつさえ叔父さんは彼を、インディアの目の前、というか頭上で、やはりお父さんのベルトで首の骨をコキャッとやって殺してしまう。

ビックリしたインディアは、チャーリー叔父さんに命令されるがままに同級生の死体を庭に埋める。

その時助けを求めて大叔母さんの携帯電話にコールするも、憐れ着信音はすぐ近くの地面の下から聴こえるのだった。

あー、この叔父さんは殺人鬼なのだ。

と、ようやくインディアが気付くも時すでに遅し。

彼女は死体の隠蔽も手伝わされただけでなく、目の前で同級生が首を折られる姿に性的興奮を覚えてしまっている自分にも気付くのであった。
インディアは一体どうなってしまったのか。


※ここからネタバレがあります。

そしてインディアは、お父さんの書斎に入り込み、引き出しにかけられた鍵に気付く。

あ、この鍵はもしかして。

誕生日にら送られた謎の鍵を使って引き出しを開けると、そこから出てきたのは、お父さんとチャーリー、そしてもう一人の知らない家族の写真、更にはチャーリー叔父さんからインディアへ毎年送られてきていた手紙の束なのだった。

手紙が出されていたのはなんと、精神病院からだった。

チャーリー叔父さんは、ずーっと精神病院に入っていたのだ。

要するにチャーリーは、生まれながらの快楽殺人鬼だったのだ。

そんで、彼は自分のその血はインディアにも受け継がれていると思っていた。
だから十八年間ずーっと、彼女に対するラブレターを送っていたのだ。

で、お父さんは密かにインディアが心に秘めている殺人衝動を感じ取っていた。

だから、人を殺して大事になる前に、狩り、という命を奪う仕事をさせる事でその衝動を目減りさせていたのだ。

でもチャーリーは、インディアが自分と同じ生まれながらの殺人鬼だと知っているので、わざと地下室の家政婦の死体を見せたり、同級生を目の前で殺したりして彼女を自分と同じ側へ引き込もうとしていたのだ。

更に、お父さんをあの日殺害したのは、チャーリーだった。

お父さんは心を病んだチャーリーが退院するのを望まなかった。
チャーリーは家族とまた暮らせると思っていた。
しかし、お父さんはそれを拒否した。
だから、殺害した。

チャーリーは、その事をインディアに告げた。

そしてチャーリーはインディアへ18歳の誕生日プレゼントを自分から贈る。

それは、今までお父さんが贈っていた子供染みた靴では無く、ピンヒールの、大人の女性の物だった。

それはチャーリーからインディアへの、愛の告白と同義だ。

そしてその瞬間をママに目撃されたインディアは、チャーリーという一人の男性を巡る、女同士の戦いにステージを移す。

贈り物を受け取ってもらえたチャーリーは、意気揚々と、ママの首を、お父さんのベルトで絞める。

そしてインディアに叫ぶのだ。

「早くこっちに来い! この姿を見るんだ!」

そしてその声に誘われて現れたインディアの手に握られていたのは、猟銃だった。

お父さんが、私に、引鉄を引くべきタイミングを、ずっと教え続けてくれたもの。

そしてそれは、今だった。

インディアはチャーリーの脳天を破壊し、お父さんの仇を打つ。
そして旅立つのだ。

新たに手に入れた自分を謳歌する旅のため。

そしてそれは、殺人鬼としての自分に他ならなかった。

と、まあ、キチガイのせいでキチガイになっちゃったよ、みたいな話でしたが、最後まで物語を観ると、オープニングの台詞がしみじみ、と心を打つので二回観る事をお勧めします。

脚本の元ネタを探れば、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』(この映画の原題が『STOKER』で、それは主人公一族の名前となっている。血を見ずには居られない一族の話と重なっている)とヒッチコックの『疑惑の影』(家に来る謎の叔父の名前がチャーリー)など、色んな発見のあるいい映画ですよ。

オススメなので観ると良いと思います。

#映画 #映画レビュー

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