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『ちはやふる 上の句』 感想

高校生が競技かるたする映画。

泣いてしまいました。

漫画原作で有名人キャストでテレビ局介入の邦画、という三大「観に行く気削ぐ」要素をガッツリと抱えているにもかかわらず、先日観た似たような要素の『アイアムアヒーロー』(こちらはテレビ局制作ではない)が傑作だったので、評判のいいこれも「いっちょ観に行ってみんべえ」と、行ってきました。

立川シネマシティの会員なので千円で観れるし。

結論から言うと、傑作でした。

原作の漫画は大好きで二十巻くらいまでは買って読んでたんですが、途中からあまりの刊行ペースの速さに追いつけなくなり、途中休憩中。

それでも、読んでいる原作パートは映画化されているらしいとのことなので、多少ワクワクしながら観に行ってまいりました。

アニメ化もされている有名作品なのであらすじは省略しますが、要はマイナー競技である競技かるたの部活を舞台にした青春スポ根モノです。

で、発足したばかりの弱小かるた部が、一人の天才とそこに集う凡人たちの精神的繋がりによって、勝利を掴んでいく、という王道中の王道を進んでいくわけです。

ここでいう天才は広瀬すず演じる綾瀬千早で、彼女の、魅力がすごいよ(@ゲスの極み乙女)。

最も輝いていた頃の石原さとみと宮沢りえのキラキラさを全身で体現できているだけでもう俺みたいなおっさんはくらくらするし、周りの皆が綾瀬千早に惹かれていく、という根拠づけにもなっています。

原作でも綾瀬は残念美人と言われており、美人が故に注目をあびるのですが、本人が競技かるたに夢中で、そこが周囲の同意を得られずに浮いてしまう、というギャグ描写でしか描けないような説得力を、実にナチュラルに演じている広瀬すずは、凄い。

勿論彼女の美しさだけではなく、この映画のために競技かるたの特訓をした、というエピソードの説得力も、劇中のかるたシーンの肉体の美しさにきちんと表現されています。

やっぱ映画のためにきちんと役者には訓練させるべきだよなー、と思います。

AVでも、「現役陸上選手がセックスします」みたいな謳い文句で、ほうほう、と、観てみたら体ぶよんぶよんの女の子がただユニフォーム着てるだけで、ふざけんなよ! とかよく思いますし。思いますよね?

意図的にずらした話を元に戻しますが、この作品の素晴らしいところは、そういった細かい「映画としての説得力」にキチンと目が行き届いているところにあります。

単純な話、「台詞で説明せず、画や俳優のアクションで語る」という点。

特に、終盤、机くんというキャラクターが心折れかけたその時、劇中で一度見せた山登りのシーンの反復、というのがあって、二度目に観客に観せるそれは、カットが違うんです。

でもそれだけで、観客には、机くんがあの時、何を見ていたが一瞬で理解できる。

そこに感動するのです。

もう一つ、机くんに対して、瑞沢かるた部のメンバーが、彼の肩を叩いていく場面があります。

そこで、メンバーの顔を一切うつさない。

彼らの着ている衣装だけで、全員が彼の肩をたたいているとわからせるシーンがあるんです。

表情などなくても彼らの思いは伝わる。
何よりも重要なのは、かるたで大切な、手、なのだ。

手だけが、机くんの肩に置かれれば、それだけで思いは伝わる。

かるたとは、手を差し出す競技であり、それこそが、人間同士が繋がっていく普遍的な動作なのだ、ということを実に感動的に描いた名シーンで、号泣。

この、手を誰かが誰かの為に差し出すことによって思いが伝播していく、という感動的なテーマは、『ちはやふる 下の句』で、完璧に描かれることとなる。

#映画 #映画レビュー

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