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『ヒメアノ〜ル』 感想

ラブコメ惨殺青春映画。

本年度ベスト級の傑作。
今年は『アイアムアヒーロー』『ちはやふる』と、漫画原作の邦画に驚かされまくってるのですが、この作品もまた漫画原作じゃないか!

奇しくも公開直前に、ストーカーと化した男に、アーティストを目指していた女子大生が滅多刺しにされた事件があったが、ああいう「この世はいつどこから暴力が身に降りかかるかわからない」という、すでに十分理解してたはずのことを改めてわからせてくれた。

観た人は誰もが息を呑むであろう、タイトルバックの格好良さと不穏さ。
邦画だと『アウトレイジ』以来、タイトルバックに痺れた。

そして特筆すべきというかこの作品の全てが詰まった象徴的シーンとも言える、生(性)と死が交差するあのシーンのグロテスクな美しさ!
そこでのとある人物の失禁描写に度胆抜かれてしまいました。
心に残る画でした。
嫌なもん見た! て感じ。

森田という男は空気を吐くのと同じように嘘をつき、足元の空き缶を退けるように人を殺す。
彼の言葉や表情は徹底的に空虚で、そこには何も詰まってない、空間にぽっかりと空いた真っ黒な穴が包丁や拳銃をもって宙に漂っているように見える。
その空間に空いた暗闇は何でもないように人を殺し犯す。

観客は、森田がどうしてこんなに空っぽなのかがわからず、ただ恐怖を覚えるしかない。

理解できないものは怖い。

結局劇中では、森田がどうして暗闇に包まれるようになってしまったのかはわからなかったが(原因らしい描写はあるが、それが直接の原因でなかったことが後にわかる)、彼が空っぽになってしまう前の、まだ人間だった頃が、ラストに少しだけ垣間見られる。
そしてその過去の人間だった森田を呼び起こすのが、主人公である岡田なのだ。

それが感動的というか個人的にはそうこなくては、というか、原作で不満だった「主人公何もしない問題」が見事に解決されていて、すごく感動した。
岡田はキチンと悪と、自分の心の闇と、向き合い対決するのだ。
友の仇を討つため。
愛するものを守るため。

その行動の結果、森田の表情を見せなくしていた暗闇が取り払われる。

ラストシーンの眩しさは、浄化された世界にも見える。

特殊メイクが凄まじく素晴らしく、『アイアムアヒーロー』と同じ藤原カクセイさんと知り、この人が参加する映画は間違いないのでは? と思ってしまう素晴らしい仕事です。
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#映画 #映画レビュー

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