見出し画像

『ザ・レイド 2 : GOKUDO』 感想

前作の2時間後から始まる続編。

シラットの達人の警察官がバッタバタと敵を倒したり倒されたりする映画。

劇場公開されてるR15版で鑑賞。立川シネマシティ2にて。

敵が千人位いる(誇張)ビルに機動警察達が乗り込むだけ、という単純明快な物語の前作から一転、マフィアとヤクザと潜入捜査という入り組んだ物語になり、随分骨太になった今作。

まずは前作『ザ・レイド THE RAID』について書かせてもらうと、前作は百点満点で一億点という大傑作でして、観ている間じゅうポカーン、と口を開けたままよだれをダラダラ流しながら「こんなに人を痛めつけることのみに心血注げるなんて、本当に最高だ」という気持ちで心がいっぱいでした。

誤解の無いように言うと、俺は別に人を痛めつける場面が観たくて仕方ないわけでは一切なくて、勿論そんなものを観れば「痛たたた」と顔をしかめますし、できれば痛く無いシーンが続けば良いのに、と願うごく普通の人間なのです。

ですが、『THE RAID』を観ればそんな普通の心情は何処かへ消え失せてしまうのだ。

何故かというと、そんな心情を上回る圧倒的な人間達のエネルギーがそこに映し出されているからである!

人間を痛めつけるシーン、に感動したのではない。

人間を痛めつけるシーンのみで、映画を一本作り上げたる! という、製作者達のアイデアと勇気に、感動するのだ。

勿論、人間を痛めつける事だけを面白おかしくふざけ半分で作っていればそれはもう不快感しかない。
そういうホラー映画は時々あって、メッセージも何も無く、ただ不快感しか残らない(でも、そういう作品が作られなければ良い、とは一切思わないです。作られなければ良い作品など無い)けれど、『THE RAID』にはそんな陳腐な姿勢は一切無い!

役者は全員、体をはって痛みをスクリーンにぶつけるのだ。

生身のアクションの素晴らしさがそこにある!

生身の人間が飛び、蹴り、殴り、骨を軋ませて汗を飛び散らせるその姿は、有無を言わせぬ説得力があるのだ。

『THE RAID』での全てのシーンは「すげえアクションで観客の度肝を抜かせてやろう」という信念とサービス精神に基づいて作られており、あの、くんずほぐれつしながらベランダからベランダに落ちるシーンはそこで、映画史に残る感動的な「危険なアクションシーン」として世に残るのである。

実際映画史に残ってるかどうかは知らん。
でも実際観ていただけたらわかると思うけど、命綱のつけようが無いのだ。

そこまでして観客を驚かせたいか!

手放しで絶賛だ!

俺の中では、『プロジェクトA』の時計台落下シーンに匹敵する素晴らしいアクションシーンだ!

『THE RAID』でのベランダ落下!(危ない)

で、そんな一億点の前作『THE RAID』の正式な続編が今作なのだ。

単純な話だった前作と打って変わって、主人公の警官が、ユダ(裏切り者として名高いあの名前)と名乗り、マフィアの家族に仲間として潜り込む、という潜入捜査ものとして映画は幕を開ける。

マフィアのボスの息子に信頼されるため、刑務所に偽囚人として潜り込み、そこで便所での大乱闘、泥だらけグランドでの大乱闘などを経て、見事主人公は息子に気に入られるのだが……。

監督も出演者もスタッフも全て同じで、話は前作の二時間後!
更に、前作で死んだキャラクターを演じた役者が、全然違うキャラクターで登場するという、『仁義なき戦い』方式を取り入れている!

相変わらずアクションは痛々しく、「インドネシアは命の値段が安いのかな」と思わずにはいられない根性入りまくったリアルヒットにただただ圧倒されながらも、その殺陣の素晴らしさに息を巻く。

コンクリートの角に顔を横に打ち付けるなんて序の口。痛たた。

更に監督の日本映画のヤクザモノに対するリスペクトも決め決めに決まっていて、先ほど書いた『仁義なき戦い』だけで無く、今度新作が作られる『GONIN』のオマージュのシーンにも震える。

キャラクターも立ちまくっており、特筆すべきはハンマーガールとベースボールマンの兄妹コンビであり、登場の掴みから去り際から何からもう抜群で、彼らだけで一本映画が観たいほど。

ハンマーガールの美しさ!

カーチェイスも死人出てるだろこれ、くらいフレッシュかつ激しく、兎にも角にも映画でしか観られないシーンに満ち溢れており、大喝采なのであった。

なのに、本作はどうしようも無く不満である。

それは何故なのか、というとそれはもう完全にR15版とかいうしょうもないレイティングのせいであり、本来の作品はR18版で作られたものなのだ。

ということはこの素晴らしく工夫された殺戮シーンのあらゆる箇所にカットがなされており、それは鑑賞しながらでさえ「あ、ここカットされとんな」と気づいてしまうほどである。

映画鑑賞中にそんなこと思わせてどうする。

こっちが息を飲むほどの残酷シーン、アクションが観られるのが映画であるはずなのに、それをカットしてしまうのであればそれは、映画として不完全である。

不完全なものに料金を払い、あまつさえ「R18版は販売盤のみで観せるので、みんなDVD買ってね」なんて言われた日にゃ、映画を馬鹿にするでないよ、とでも言いたくなってしまうのだ。

どんだけこっちからお金取るんだ。
詐欺みたいなもんじゃないかそんなの。

#映画 #映画レビュー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?