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『エビデンス 第6地区』 感想

若者がキャンプ先でえらい目にあう映画。

この映画は本当に凄くて、何がそんな凄いかというと、何が起こってるか全くわからないのが凄いのです。

基本は若者がYouTubeにアップするために常にカメラを回してるけど、そのカメラにどえらいもんが映りこんじゃったよ、といういつものPOVのアレなのですけど、これの何がそんな凄いかというと、何が起こってるのか本当に、全然わかんないとこなんです。

こればかりはもう、観てもらうしかないのだけれど、POVホラーの流行りの発端となった『ブレアウィッチプロジェクト』でさえ、まだ、何が起こってるかは筋道たてられてました。

でもこの映画は、筋道が一切ないんです!

酷いことが起こって、ギャーギャー言いながら逃げてると、その逃げた先でもっと酷いことが起こる。
それの連続で映画は終わります。

これは、言うならば、エビデンス=証拠映像、の、本質を描いていると言える。

とにかくとんでもない災難に巻き込まれた当事者には、何が起こってるかなんか、一切わからないものなのだ。

だから、この映画で映される映像の全てに脈略はなく、説明も一切無い。

ただただ、とんでもない目にあってる自分たちの姿が記録されているだけである。

そしてこれは、どうしようもなくリアルだ。

実際に同じ目にあったら、これと全く変わらないだろう、というリアリティに満ちている。

普通、ホラー映画において、酷い目に会う人には法則がある。
いうことを聞かなかったり、正しく無いことをしたり、余計なことをしたりした人から順に酷い目にあっていく。

それは教訓であり、酷い目に会うのにも何かしらの理由があるからだ、と、視聴者は知り、自分はそうしないようにしよう、と心に刻む。寓話だ。

だけれど、この映画には一切その法則は働かない。

人は、ただ死んでいく。
生き残るための行動など、まるで無意味だ、と言わんばかりに。

つまりこれは、『スクリーム』以降の、新たなメタホラーなのだ。

『スクリーム』では、ホラー映画のお約束を作品内で言及することにより、構造を解体し、新たに構築し直した。
それは、監督のウェス・クレイヴンが、天才であり、自らのホームグラウンドであったホラー映画を、知り尽くしていたからこそ作り上げられた世界だった。

そしてこの作品は、その『スクリーム』以降の、新たなホラー映画の世界を作り上げる。

それは、何が起こってるかなんか、一切わからない、ということこそが一番怖い、という領域だ。

そしてそれは、今までの、スクリーンでスタッフやキャストの名前が挙げられてから上映される、という映画シーンでは作られなかった。

この『エビデンス 第6地区』という作品は、初めから、スクリーンでかけられることは目的とされていなく、ネット配信でかけられることを目的として作られたものだからである。

ネット配信で、キャストの名前も登場人物と同じで、そのキャストも素人同然で、その背景は劇中で一切説明されない。
本当にこれは、どこかのユーチューバーが、動画を撮影してる時にたまたま写り込んでしまった、本当の証拠映像=エビデンスなんじゃないか?
と、思わせることにキチンと意識がされているのである。

思えば『ブレアウィッチプロジェクト』も、元々は公開前に情報はほとんどなく、これはひょっとしてマジもんじゃないか、と思わせるだけの慎重な宣伝がされていたし、もっと情報が少なかった頃など、『食人族』や『スナッフ』『ギニーピッグ』なんかも、これはひょっとしたら本物じゃ? なんて触れ込みで人気になったので、こういう宣伝方法は昔から正しいものであるのだ。

で、『エビデンス 第6地区』にもどるが、これは本当に面白い作品ではあるのだけれど、この面白さが伝わるのは、ひょっとして、ある程度ホラー映画に慣れ親しんだ人じゃないと難しいのでは? とも思う。

先ほどいったように、ホラー映画のお約束をあえてガンガン無視する、というのがそもそも、ホラー映画に慣れ親しんでいる人以外には通じるのか? とも思うからだ。

だからやっぱりこれは、ホラー映画をある程度観ている人に観てもらってこそ、その面白さが伝わる作品なのかもしれない。

けれど、やっぱりこのハイテンションのまま80分の上映時間を突っ走る、というジェットコースター的な面白さは、万人に受けるんじゃないかな、とも思うので、今度、ホラー映画観ない人に見せて、面白かったかどうか訊いてみたいと思います。

皆さんの中でも、感想あったら是非教えてくださいね。

とにかくこの映画は、俺にとっては、理屈抜きで100点!

#映画 #映画レビュー

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