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『ナイトクローラー』感想

一人のパパラッチが夜を駆ける映画。

観る前に、Twitterの感想で、「主人公のルーは、まるで吸血鬼のように見える」というものがあり、それだけを情報として後は何の知識も入れないまま観たら、本当にその通りで吃驚した。

主人公のルーは、何を考えてるか全くわからない。
彼の話す言葉は、全て、「ネットで得た知識」である。
彼の行動理念も主張も全てが、他の何処かの誰かの言葉そのまま、であり、彼自身の本音というのはどこにも見えない。
彼は過去のこともほとんど話さない。「夢がある」と呟くが、その夢が具体的にどんなものなのかは殆ど語られない。
彼の夢は、それすらも他の誰かの夢をそのまま借りているだけかのようだ。
ルーは、人の死や血を求めて夜を駆ける。
やがてその目は落ちくぼみ、頬はこけ、見た目も吸血鬼そのものになっていく。
昼間は常にサングラスをかける。
ルーが睡眠を取るシーンは一切描かれない。食事のシーンすら一切ない。

彼は、人の死や血が、金になり、それが自分のものになることのみを求めて生きている。
やがてルーは、周りの人間の道徳観や価値観をも、自身の力で歪め、従属としていく。
そんな彼に刃向かうものは、彼がコントールする「夜」によって葬られていくのだ。

その姿は、まさに吸血鬼そのものだった。

だからこれは、人々の好奇心、というものが産んだ吸血鬼という化物が、夜を支配していくサクセスストーリーなのだ。

ラストのスタッフロールで、放送塔にかかる満月のカットは、まるでバンパイアの住む城のようにしか見えなかった。

#映画 #映画レビュー

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