『チーム★アメリカ/ワールドポリス』 感想
右も左も全部クソ! な映画。
Huluに来たので久しぶりに鑑賞。
とにかくハリウッドスターに対する嫌悪感すごいなー、と思ってたけど、確かに自分も、タレントや芸人さんがワイドショーとかで、真面目な顔して政治や戦争に語りだしてるのを見たら同じ感情を抱くかも知んない。
抱いたとしてこんな描写はしようと思わないけど。
そこがこの作品はすごい。
思いついたり憤ったとして、実際にそんな表現をそのままする、ということは普通しないからだ。
何らかのパロディやよく似た別の名前とか国名にして、「これは現実の話ではありませんよ」と逃げ道を作るのは当然だけど、『サウスパーク』の親、トレイ・パーカーとマット・ストーンはそんなことはしない。
全方向にケンカを売る。
そもそもが、全編人形劇なので、実在の国名や特定の人物名を使ったところで、それらは全て「フィクション」になるのだ。
そこはこの作品のキーワードとなる、「演技」にも表れる。
実在の俳優が、この作品に出たとして、実際に「演技」をした時、それはダイレクトに観客に伝わる。
そこで、「確かに良い演技だ」と万人に思ってもらうことは難しい。
ましてやそれは、全世界を救うほどの素晴らしい「演技」なのだ。
でもそれを、人形が演じることによって、力技で乗り切る。
「演技」で全世界を救う、という嘘を、そもそも人形が芝居をしてる、というより大きな嘘で包み込む。
大きな嘘をずーっと吐き続けることによって、全方向に撒き散らされる悪意の表現に対し、それを真に受けて怒る人々を、「マジかよあいつ真に受けてる!」と、笑い飛ばすという、何層にも重なった皮肉と笑いの表現をしているのだ。
ハリウッド映画のパロディシーンが秀逸で、特に、他者を殺戮しながらも身内のゴタゴタのことの方が大事、みたいなシーン
が楽しかった。
人と人が対立する時、倒す側と倒される側がいるだろうが、倒される側だって同じ人間であり、彼らの命は、倒す側の心の問題を解決するためだけにあるのではないのだ。
倒す側こそが正義で、倒される側にはなんの価値も背景も物語もない、と、笑いにしているそのシーンこそ、アメリカが、大量殺戮兵器を探し出すために中東を破壊していった現実の痛烈な批判になっているのだ。
あと、ゲロシーンは何度観ても笑っちゃう!
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