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起業って失敗するとどうなるの?勤めていた会社が倒産した話【本当にあったスタートアップ失敗談 vol.01】

Studio ENTREでは、起業を目指す方に役立つ記事を発信しています。今回はあえて「スタートアップのリスク」に焦点を当て、スタートアップで実際に起きた失敗談を取り上げます。


今回のゲストは、大手企業からスタートアップへの転職を決めたAさん。

Aさんは新卒で勤めた大企業を退職し、スタートアップへと転職。一年程度でサービスをクローズさせ、会社自体もたたむことに。

そんなスタートアップの酸いも甘いも経験してきたAさんに、サービスが終わるまでの過程や、いま起業を考えている人へのアドバイスを伺いました。


■新規事業がやりたくて選んだスタートアップ

ーーどういうサービスを提供しているスタートアップだったのでしょうか?

2017年当時話題だったテクノロジーを活用して、新しいファンクラブサービスを構築しようとしているスタートアップでした。

サービスの内容は、クリエイターを応援するとポイントが貯まり、ポイントが貯まるとクリエイターから特典が受けられるというものです。応援をポイントとして可視化することで、「どれだけそのクリエイターの熱心なファンであるか」を周囲にアピールすることもできました。

最終的には、オリコンチャートやビルボードチャートのような「アーティストの人気度」を知るための一つの指標になることを目指していました。


ーー入社時の会社のフェーズについて教えてください。

立ち上げから1年ほど経った頃で、社員の数は(業務委託も含めて)15名ほどでした。

サービスとしては、業界内で興味を持ってくれる方が現れ始め、実際に何組かのクリエイターに登録してもらっている状態でした。


ーー在籍していた企業を退職して、そのスタートアップを選んだ理由はなんですか?

もともとエンタメ業界に興味があったので、前の会社に在籍していた頃から「次はエンタメに関われる企業にいきたい」と考えていました。

その中で、エンタメ業界のスタートアップとして新しい市場の創造に挑戦している点に魅力を感じて選んだのがその企業でした。


ーー「エンタメ業界で新規事業を手掛けたい」というのがご自身の転職の軸だったんですね。「大企業の新規事業部にジョインする」という選択肢はなかったのでしょうか?

転職活動のときに大企業も受けたのですが「既存の業界のシステムにITをどう取り入れるか」という視点で採用している企業が多く、IT技術を使った完全な新規事業に積極的な企業があまりありませんでした。

自分の求めている環境とはマッチしないと感じ、「新しい価値を作っていくならスタートアップしかないな」と思いました。


ーーAさんがもともと在籍されていた企業はその業界では著名な大企業です。スタートアップに移ることに恐怖などはありませんでしたか?

目先の給与がほぼ変わらなかったこともあり、恐怖心はなかったです。少なくとも、「人生の中でとてつもなく大きい決断をした」という感覚はなかったですね。

付け加えるなら、サラリーマンが得られる報酬には上限があると感じていたので、給与水準が変わらないのであれば最終的にはサラリーマン以上の報酬を得られるスタートアップの方がメリットが大きいと考えました。


ーースタートアップの場合、「この企業がどこまで成長するか」を入社前に見極めるのは極めて難しいと思います。入社する際、事業に対してどういう展望を持たれていましたか?入社前から事業の展開に対して何か展望などありましたか?

どれほど成長するかは自分でもまったく予想がついていませんでした。

失敗するかも成功するかもわかりませんでしたが、もどちらの算段もなかったですが、「この企業なら自分はが全力でコミットできる」と会社だなと感じたのでて、入社を決めました。


■社長をサポートできる人間がいなかったことが致命的だった

ーースタートアップでの、ご自身のポジションはどういったものでしたか?

COO候補として入りました。自社サービスを中心に、コンサルタント事業なども行っていたので、会社が持つ事業をどう組み合わせていくか、どう会社を成長させていくかの戦略作りなどをしていました。


ーー入社後の感想もお伺いしたいです。

最初は楽しく働いていました。自分の裁量で事業が動かせるし、みんなが同じ興味の方向を向いていたので、議論も楽しかったです。


ーーそこからどういった流れでサービスのクローズに至ったのでしょうか?

事業を進めるうちに、どうやら揉めごとの「種」があるなということに気づきました。これは当時の自分の落ち度ですが、入社直後に会社の現預金を確認しなかったんです。

自分が知った時にはもうあまり余裕のない状態で、目先のころからすぐに対応しなければいけないと思いしました。


ーー会社としての現預金に問題があったとのことですが、それは入社前からの問題だったのでしょうか?

今思えば入社前の時点ですでに状態が良くなかったんだと思います。ただ、そのことは自分も含め既存の社員たちには知らされていませんでした。

多くの社員は「このままでは自分の給与が払ってもらえない」という時点で気づいたのではないでしょうか。


ーー現預金が尽きてしまった大きな原因はなんだったのでしょうか?

社長がセンスで仕事をするタイプで、細かい部分を確認するのが苦手だったことが大きいです。かつ、初期の頃はその欠点をサポートできる人間がいない状態で事業を進めていたことも致命的でした。

会社の現預金といった数字の部分は本来社長が見るべきですが、もしそれを得意としていない社長であればせめてサポートできる人が必要だったと思います。


ーー社内に大きな原因があったとのことですが、社外やマーケットトレンドの影響はどうだったのでしょうか?

強いて言うなら、サービスがマーケットフィットしていなかったと思います。社内体制の問題で、マーケットフィットしているかどうかの検証をスピード感を持って取り組めていませんでした。

その結果、「テクノロジーでクリエイターの未来を変える」というみ抽象的な概念を具体的なサービスに落とせていなかったと思います。


■たとえ挑戦が失敗してもそれを責められることはない

ーーAさんの勤務されていたスタートアップは、最終的にサービスのクローズだけでなく会社自体が倒産するという結果になっています。
「創業メンバーとしてジョインした会社をつぶす」というのはあまり一般的な経験ではありませんが、実際難しいものなのでしょうか?

自社サービスをクローズするだけであれば、ユーザーに真摯に謝罪すればクローズできます。

ただ、自分たちの会社はコンサルティング事業もしていたので、ユーザーだけでなく企業のお客さんを持っていました。そういった方々と関係性を維持しながら会社をたたむのは大変でした。


ーー会社の倒産やサービスのクローズに対して、お客さんからはどういった反応をいただいたのでしょうか?

基本的には「お疲れ様でした」と言われることが多かったです。自分たちはまだ市場にないサービスを作っていたので、応援されることの方が多く、挑戦が失敗したことに何かを言われることはありませんでした。

ただ、メンバーが一部不義理を働いてしまったところがあり、そういった振る舞いについて自分も苦言を受けることがありました。


ーー大変でも最後まで逃げずに「会社をたたむ」ということに立ち向かえば、多くの場合は受け止めてもらえるということですね。
時間をおいて当時のことを振り返って、「いま思うとこうすれば倒産せずに済んだのではないか」と思うところはあるでしょうか?

理想論になってしまいますが、「自由に動かせるお金を手元に確保しておく」ことが設立当初からできていれば違っていたと思います。

あとは、社長が最後まで精神的に耐えられなかったことも大きかったです。何についていけばいいのかわからなくなったことで、メンバーがばらばらになってしまったことが一番の原因だったように思います。


■スタートアップの経験がいまの仕事に繋がっている

ーースタートアップに在籍していたのは1年ほどとのことですが、その経験の中で現在に活きていると感じるものはありますか?

スタートアップの勤務を通じてできた人との繋がりです。

あくまで自分の所感ですが、スタートアップとして一回挑戦した人を「失敗したから」という理由で見捨てる人はいなくて、むしろ「また新しい挑戦をする」と言うと応援してくれる方が多いです。

自分のやりたいことの延長線上で応援してくれる人たちとのつながりができたのは一番の財産だと思っています。


ーースタートアップの勤務の前後で、ご自身のキャリアに対するを考え方などは変わりましたか?

「自分が何をしたいのか?」を常に自分に問い続け、それにしたがって進む必要があると考えるようになりました。

「自分のやりたいことではなく、他者やマーケットのトレンドに乗っかる」という選択肢を取らないようになりました。


ーーサービスのクローズや会社の倒産などを経験されたということですが、スタートアップで勤務したいと考えている方や起業しようとしている方にスタートアップという選択肢をお勧めできますか?

「自分であまり意思決定をしたくない」「(会社や他者など)何かに依存して働きたい」と思う方には絶対におすすめできません。

でも、少しでも自分のやりたいことがある、やりたいことはそんなにないけど自由にやりたいと考えている、世の中を変えたいという思いがある方であれば、スタートアップは間違いなくおすすめできます。

自分はすでに出来上がっているスタートアップに入りましたが、もし自分の中でやりたいことがある程度決まっているなら、自分で始める方がいいとも思います。


ーー最後に、起業したい方やスタートアップ入りたい方にアドバイスがもしあればお聞きしたいです。

自己分析をし続けることが必要だと思います。多くの方は就職活動の時に一度やってそれきりだと思うんです。でもスタートアップでやっていくなら自分が何をやりたいのかを考えることは大切なことです。

自分の好きなことや、世の中の変えたいことなど、自分の原体験を抽出すると見えてくるものがたくさんあると思います。もちろん「儲けたい」でもいいんですけど、それだけで進むと心が折れちゃうと思うので、自分が譲りたくない軸を持つことが必要になると思います。

スタートアップって、「自分がやめる」って言い出さない限り、ずっと終わらないんですよ。だから、自分が絶対に折れないモチベーションが何なのかをとことん考えてみるといいんじゃないかなと思います。


スタートアップスタジオ・Studio ENTREでは、起業に興味がある方を随時募集しています。初めてのことばかりでわからないのが起業の怖さ。荒削りなアイデアもかまわないので、ぜひ一度ご相談してみてください。

























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