《ENTREイベントレポ》ダンステック・スタートアップの未来
6/27(日)、ENTRE主催で【ダンステック・スタートアップの未来】というイベントがオンラインにて開かれました!
近年、様々な分野でテクノロジーとの掛け合わせが起こり、新たなサービスが世に生み出されています。
とてもプリミティブな表現形態である"ダンス"も例外ではありません。人間の身体の動きが、テクノロジーによって拡張・エフェクトされ、新しい表現を生み出しています。
それに伴い、「ダンス×テクノロジー」=ダンステック(Dance-Tech)を軸としたビジネスが大型の資金調達に成功するなど、ビジネスの側面からも大きな変化が起こりつつあります。
そこで今回の【ダンステック・スタートアップの未来】では、第一線で活躍する専門家の方々に、文化的側面・ビジネス的側面の両方から、「ダンス×テクノロジー」の今後を語っていただきました。
今回はそのイベントの内容をお届けします!
7/11には実際にダンス事業案を実現するためのプレゼンができるイベントを用意しているので、今回のレポで気になった方はぜひお申し込みください!
【イベント情報】
〈イベントの目的〉
ダンス領域で新たなビジネスを行うスタートアップの創出・活性化
〈テーマ〉
「ダンス×テクノロジー」=ダンステック
・ダンスの「著作権」のテクノロジーによる変化の方向性
・モーショングラフィックや3Dデータなどをダンスの動きに取り込むテクノロジー
〈登壇者〉
・平井武史さん…ネイロ株式会社CEO。クリエイティブディレクター、投資家、写真家。
・藤原理奈さん…株式会社CDA CEO。ダンスに関わる全てのディレクションと提案、キャスティングやWebマーケティングなど多岐に渡る事業を行う。
・Brooklyn Terryさん…ダンサー・振付師。マイケルジャクソン[Remember the time]振付でも有名な、NY大御所HIPHOPチーム[ELITE×FORCE]メンバー。
・NAHOさん…ダンサー・振付師。『町田新体操RG競技部』ダンス指導/振付担当。数々の有名人の振付指導などを行う。
・小平託さん…マイクロエンターテインメントCEO。モーションを資産化するサービス「GESREC」を展開中。
ダンステックが注目される理由、そして市場の課題
今、ダンステックが注目されるのはなぜなのでしょうか。
登壇者の皆さんのお話の中で、ダンステック市場への期待は、ダンス業界の大きな課題、"著作権"の問題と不可分であるということが見えてきました。
最初にお話していただいたのは、ネイロ株式会社CEOの平井武史さん。
25年間、モーションキャプチャ※をビジネスとして展開してきた平井さんには、長い間ダンス・ダンサー業界の課題だと捉えてきたことがあったそうです。(※モーションキャプチャ…反射マーカーを赤外線カメラ複数台で捉えて3次元化する仕組みのこと。-平井武史さんのご説明より)
それが、ダンスの"著作権"の問題。
実は、日本では”ダンス”に著作権がつけられておらず、振付師やダンサーの権利が守られていないという現状があります。
(平井さん)僕らが課題だと捉えていたことは2つあります。ひとつは、過去に踊った振付と違うもので踊られている、ということ。もうひとつは、振付を使ってビジネスをしているスクールが存在する、ということです。音楽教室では、クラシック以外の音楽の使用についての裁判が行われている最中ですが、ダンスでも"著作権"のところに対する課題が10年間あって…そこのところをずっと考えてきました
平井さんと昔から親交があったというダンサー・振付師のNAHOさん、Brooklyn Terryさんも、そこに対して疑問があると言います。
(NAHOさん)最近は、自分の好きな音楽に合わせて踊った動画を、みんなに見て欲しくて、インスタやフェイスブックに投稿するじゃないですか。でもそうすると、作品の音楽著作権の問題で、音だけ消されてしまったりしますよね。(中略)振付と音楽でひとつの表現物だったりするのに、音だけ守られているっていうのは、ダンサーとして、ちょっとどうなのかなあっていう疑問があります。
(Terryさん)例えばマイケルジャクソンで有名になった「ムーンウォーク」っていう動きがあります。でも、あれは「BackSlide」という動きで、ずっと黒人文化の中で受け継がれてきたものです。(中略)文化を「広める」はいいが、ダンスの権利がどこにあるか曖昧になってしまっている中で、どこから学んだか、という部分を蔑ろにしがちな部分があると思います。
ダンサーとして体をフルにつかって活躍できる期間は限られているにも関わらず、つけた振付には権利がつかず、その後どんなに広まって使われたところで、印税などの収入には繋がらない…そんな現状が見えてきました。
ENTRE代表の山口さんは、そんなダンスの著作権は業界の大きな課題でありつつ、今後の市場の伸びしろにも繋がっていると指摘します。
(山口さん)音楽著作権は、世界で1.3兆円(CiSACデータ)の市場があります。デジタル化の前に出来上がった仕組みで、性善説と業界慣習でうまくいっているんですよね。そして、この市場は年率20%くらいで成長を続けています。音楽著作権もデジタル化の波に対応していかなければいけない中で、ダンスってそこを最初からデジタルでやれるし、仕組み自体はそこまで難しくないので、大きな市場に成長する期待が持てると考えているんです。
ダンステックのビジネス
ダンステック市場の課題と展望が見えてきました。
そこで、さらに具体的にダンステック市場の可能性を探るため、
実際にダンステックの領域で起業されている小平さんに、今考えていることや実際のサービス内容・ビジネスモデルなどをご紹介していただきました。
(小平さん)私の妻がダンサーなんですけど、ダンサーって30,、40代になったら教える側に回ったりするしかない中で、今までつくったクリエイティブなものはYoutubeや色んなところに出回っているのに、そこからの収入は得ることができないっていうところで…そこをなんとか変えることができないかっていうのが事業の最初の部分です。
小平さんの会社、マイクロエンターテインメントが展開するサービス、GESRECは、動画をベースに、特殊な技術を使わないで3Dデータを抽出するサービス。
モーションキャプチャツールを必要とせず、過去のデータからも抽出することができます。
今後、世界最大のデジタルモーションのアーカイブをつくって行きたいとのことで、ダンサーや振付師にも収益が還元されるようなシステムを模索中とのこと。
今後のダンステック市場
ダンスに関わる包括的なサービスを提供する会社、株式会社CDAの藤原さん。藤原さんは、これからダンステックビジネスの外部で起こった・起こるであろう変化について大きな視点で語っていただきました。
株式会社CDAのページはこちら
https://cda.jp/
【起こった変化】
・オンラインに抵抗がなくなった
・ダンスの面で言うと、レッスンのオンライン化はあまり進まなかった
・オンラインのライブに課金することが抵抗なくなった。→その結果、戦い方がグローバルになった
【起こるであろう変化】
・直近、コロナ禍で欲求が抑えられていた。反動でエンタメ爆発が一時的に起こる→一時的にエンタメ市場が伸びる
・エルダーシニアがオンラインに入ってくる
・「ディープエフェクトを体に映す」ということができるようになる
コロナ禍とテクノロジーの進化によって、ダンステック市場で起こる変化も大きくなりそうです。
まとめ
ダンス著作権やダンステック市場の今後について、色々な立場から意見が聞けた貴重な場でした。
ビジネスが、ダンスの文化を守りつつ促進・進化させていくプロセスはこれからも楽しみです。
7/11には今回のセミナーをもとに実際にダンス事業案を実現するためのプレゼンができるイベントを用意しているので、今回のレポで気になった方はぜひお申し込みください!
当イベントの熱いディスカッションの様子は、Youtubeで全編公開中です!是非のぞいてみて下さいね。
https://www.youtube.com/watch?v=x1pkXFd94-U
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