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犬道、終わっていたはずなのに…

残ったのは一人と二匹の茶トラ

昨年の年明けすぐ、動物病院に駆け込んで強めの麻酔シップをしてもらった。齢13歳のフレブル・ひめちゃんは末期のガンだった。積極的治療はおこなわなかったが、実に穏やかに余命を半年近く延ばした。でももう最期は辛そうだったので強めの痛み止めを処方してもらったのだけど、久しぶりによく眠れたようだった翌朝、私の腕の中で旅立っていった。

これで三頭を見送った。黒パグのどんくん、保護黒パグのそらちゃん、そして保護フレブルのひめちゃんと。
残ったのはこれまた保護猫の茶トラブラザーズだけ。

猫だけなら散歩もいらんし、ご飯もらくちん、と一気に世話の量と医者代が減って、ある意味ホッともしていたのだった。

だってワンコはほんとお金かかるし手間かかるのだ。散歩は毎日だし一泊だって放ってはおけないんだよ? 毎月フィラリアの薬も飲ませて年一ワクチン打って、調子悪けりゃと医者にも足繫く通ってさ? シャンプーだって私よりお金かかってたしね。そんな世話も好きでやっていたわけだけど、可愛いばかりじゃない大変さがある。

還暦にも手がかかろうかというこの年齢で、あと10年15年の散歩と医者通いに付き合う体力財力を考えると、もう犬は飼えないなと納得し、念のため「飼わないもん」と高らかに宣言もしていたのだった。

ブラザーズの平和な日々


犬道。開くときは思い切り開く

6月16日、ご近所の三ペチャトリオ(パグ・フレブル・ちん)を飼っているおうちから「知り合いからきた相談なのじゃが、キャバリアの爺様をしばらくあずかれないかのう?」と相談がくる。
悩んだものの、ジイさんワンコはわりと好物なので「4、5ヵ月くらいの預かりなら飼うわけじゃないし、いいよ」と翌日返事。
はなペチャじゃないワンコを自宅で面倒見るのは初めて!などと思うと、急にうれしくなってきた!

このあたりで閉ざされていた犬道が開いてしまったようで――。

それから一週間経たずしての6月21日、知り合いのペット関連会社の社長から「ねえさん、いい黒犬がいるんすけど一頭どうすか?」と別件の連絡。

それ、聞いたらあかん気がすると耳を必死でふさいだものの、結局聞いてしまった。
とある県に住む若夫婦の元、可愛がられていた黒のラブラドールだが、幼い子供がアレルギー発症で飼えなくなった、急ぎ家から出さねば、いやむしろ出したい、緊急緊急、エマージェンシーである。

「キャバのジイさんを預かる予定にしているので――」とモゴモゴしていたら、彼女が力強く、高らかに言い放った。

「この子はねえさんの家に行く子だと、私の直感が訴えてます!」

なんだそりゃ。

「とりあえず、会いに行くだけ会いに行きましょうよ! 私、車出しますから! そしたら明日ね!」

それ、OKしたらもうあかんやつやん。というか、OKしとるがな私。緊急とかいうのに弱いんですわ。


その翌日には車に乗せられて――

ということで、翌朝イチに社長運転の高級大型車に乗せられ、一時間後には、見知らぬ人の家のリビングにいた。見知らぬ家の子供たちは、なにかが起ころうとしているのではと、変な気配を察してかちょっとおとなしい。
いや確かに、ずっと一緒にいた犬がいなくなるかもなのがわかっているのかわからないのか知らんけど、私的には結構ヘビィな一幕じゃないのかとちょっと気が重くなる。
なんかすみませんと小さな声で言ってみたりもしたけど、そのあたり奥さんは割とドライだった。

というわけで、「彼」とご対面。

3歳の男の子、名前は「モズク」。
最初から友好的で、頭がよい子だった。名前を呼ぶと太いしっぽをぶんぶん振って大歓迎してくれている。
狭いケージのなかで窮屈そうなのにおとなしくしているのがちょっと切なかった。

「うちに来ますかね?」

と言ってしまって、言ってしまった!と思ったけれど、なんか運命も感じたことだし、犬道開いちゃったし。
どうせ人生最後に飼うならば、大型犬と暮らしてみたいかもしれない……。

ファーストコンタクトですっかりロックオン


ということで、その二日後に、とりあえず事務所に「モズク」は来ていた。
彼は、ひとしきり周囲のにおいを確認したあと、あっという間にのびのびと床に寝ころんでいる。

なんなら腹を触ってもええで。
寝ころんだまま目線ロックオンである。
吸い寄せられるようにコの字の向かいに座り込む。
にしても、こんな大型犬が目の前に横たわっているなんて。顔が人と同じくらいだ。
そして腹の面積も猫どころではない、触りごたえまんまんである。

どこでもコの字でよく寝る


ということで、犬生活が復活してしまった。犬ロスは1年7カ月しかもたなかったなあ。もちろんにゃんことの生活も楽しいが。

まだ三者対面していないのだけれど、どうなるのかはおいおいに。


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