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リベロ論 山本智大選手のリベロ観

 前回は、酒井大祐氏の著書「絶対拾う! つなげる! バレーボール リベロ 必勝のポイント50」より、酒井氏のリベロ観などを紹介しつつ、リベロの評価方法について考察しました。

 今回はバレーボールマガジンに堺ブレイザーズの山本智大選手のインタビューが掲載されていたので、そこから彼のリベロ観と、それをどのように評価に結びつけることができるかということを考えていきたいと思います。

 インタビューは前後編からなります。

https://vbm.link/620991/

https://vbm.link/621412/

山本選手の心がけるプレー

 インタビューの目的は“リベロ”というポジションについて語ることではないので、酒井大祐氏の著書のようなリベロ観についての言及はないのですが、途中語られる山本選手の心がけるプレーには、評価のヒントがあると感じました。以下に引用します。

引用

自分でリベロは点数をとれないポジションなので、ブロックとディフェンスの関係性、サーブレシーブの時の隣の人との関係性を考え、今まで以上に密にコミュニケーションを取りながらやっています。また、プレーだけでなく、試合の中で流れが悪い時やちょっとうまくいかないなという時にしっかりみんなに声をかけたり、チームを鼓舞したりすることを心がけています

引用ここまで

 この発言から見えるリベロのスキルは、修正能力であると考えます。コミュニケーションはそのためのツールではないかと思います。

 まず、“ブロックとディフェンスの関係性”や“サーブレシーブの時の隣の人との関係性”に問題があることに気づくことができる戦術眼が必要ではないかと思います。そして、コミュニケーションをとりながら、実際に問題を改善する力も問われます。

定量的な評価に向けて

 こうした、ボールにはタッチしない部分でのリベロの修正能力を評価、それも定量的に評価するにはどうしたら良いでしょうか?

 まず必要となるのが、“ブロックとディフェンスの関係性”や“サーブレシーブの時の隣の人との関係性”といった、選手間のポジショニングの良し悪しが定量的に評価されている必要があります。「悪い」ポジショニングを、「良い」ポジショニングに修正できたかどうかリベロの仕事になるわけです。

 例えば、試合をベンチで見ながら、またはビデオを見返すなどして、ポジショニングが良かったのか悪かったのかという質的な評価は可能かもしれません。一方でポジショニングの良し悪しを定量的に評価したという話は耳にしていません。

 これを可能にするには、将棋の棋譜を集めるように、ポジショニングデータを大量に集めることで、その後の結果と結びつけることで、良いポジショニングと悪いポジショニングの評価は可能になるかと思います。

“修正”はリベロだけの仕事か?

 1点注意したいのは、こうした修正はリベロだけの仕事ではないと思います。ベンチから試合を見る監督やコーチ、客席から試合を見ているアナリストのほうが選手間のポジショニングは見やすいと思うので、彼らとの共同作業であると考え、1人で気負い過ぎないほうが良いかもしれません。

 ただ、監督・コーチ・アナリストとの違いは、リベロは試合中コートの中にいて他の選手と近い位置にいるということがあります。こうした近さを活かした試合中のリアルタイムでの修正能力というのがリベロに強く求められるものなのかもしれません。

まとめ

 以上、簡単ですがリベロによる修正能力についての考察でした。ボールタッチの絡まないプレーの評価は難しいですが、不可能ではないと思います。

 新しいシーズンに向けて選手の入れ替わりがあった時、ナショナルチームのように普段は一緒にプレーしていない選手が集まったりと、選手間の連携の修正が必要な状況は少なくないので、そこでうまく立ち回ることのできるスキルが評価できるようになるメリットは大きいと思います。

 次回もこんな感じで、資料にあたっていこうと思います。何か良い資料があれば紹介していただけると助かります。

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