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大谷翔平選手の打球の質と成績

 Statcastデータには、

 ・woba_value
 ・estimated_woba_using_speedangle

 という2種類のwOBAの指標があります。前者はシングルヒットには0.9といったように、打席の結果に対して特定の値を割り当てます。後者は打球の角度と速度から、相当する結果をwOBAの値として推定したものです。

 この推定値については、前々回に分析していますが、所謂バレルゾーンのようなHRになりやすい角度と速度ほど推定されるwOBAの値も高くなります。

打球の質に結果が伴わない時

 当たりは良いのに打球が野手の正面に飛んでアウトになる。

 こうした結果はそう珍しくはありません。この現象を、当たりは良いという部分をwOBAの推定値で、アウトとなった結果をwoba_valueと見れば、この現象を捉えることができるのではないかと考えて分析しています。

 とはいえ、前回の分析などなかなか上手く行かないところもあり、試行錯誤の中、今回は個人の成績からこれを見ていこうと思います。

大谷翔平選手の打球の質と結果

 というわけで、タイトルにもあるように、大谷選手の2018年と2019年の個人成績から、2つのwOBAを比較し、打球の質と結果の違いを見ていこうと思います。

 大谷選手を選んだのは、知名度となじみ深さに加えて2018年と2019年の打席数がそこまで多くないからです。フル出場の選手の場合サンプルが多すぎて図の判別が難しくなることがあるためです。

大谷選手の打球の角度と速度

 まずは、大谷選手の打球の角度と速度を確認しておきます。以下の図1-1には2018年、図1-2には2019年のデータを左右の投手との対戦別に示します。

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 原点からの距離が打球の速度を、プロットの位置が打球の角度を表します。◆は欠損値を表します。

 大谷選手の特徴としては100m/hを超える打球が多いことと、HRになりやすい30°付近の打球が多いといえるでしょうか。2018年と比較すると、2019年は角度が30°を超える、フライとしては角度がつきすぎている打球が減っています。

投球コースから見る打球の質と結果 

 それでは、大谷選手の打球の質と結果の関係を見ていこうということで、まずは対左投手の結果について投球コース上にwoba_valueの値をプロットしたものを以下の図2-1に示します。

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 このデータは、審判と捕手の視点からのプロットになるので、左打者の大谷選手は図の右側に立っていることになります。

 色が濃いほど良い結果であることを表します。この結果に対して、打球の角度と速度から推定されたwOBAの値のデータを以下の図2-2に示します。

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 こちらも色が濃いほどwOBAの推定値が高くなります。図2-1と図2-2を比較して、どのあたりで質のほうが結果よりも高いのか?もしくはその逆の関係になっているのか?というのは見づらいので、2つの値の差分(結果-推定値)をプロットしたものを以下の図2-3に示します。

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 プロットが赤いほど、結果の値が推定値より大きく、青くなるほど推定値の値が結果よりも大きいことを表します。

 データを見たところ、赤と青が混ざり合っていて、特定のコースで偏っているようには見えません。これは、打球の質と結果にそれほど大きな差がないと見ることができます。

 続いて、対右投手のデータを、まずは結果を図3-1に示します。

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 次に推定値を以下の図3-2に示します。

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 この差分を以下の図3-3に示します。

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 こちらも混ざり合っており、打球の質と結果にそれほど大きな差がないといえます。

まとめ

 仮に、打球の質は良いのに結果が伴っていない場合、差分の図(図3-2・図3-3)で青いプロットの塊を見ることができると思います。それが今回見られなかったのは、大谷選手の場合、それほど質と結果に乖離がない可能性が考えられます。

 もしくは、こうした質と結果のズレを見るのであれば、もう少し短期間のデータを見ると良いのかもしれません。シーズン中、何試合かヒットの出ていない打者がいますが、そうした打者が持ち直すか、それとも不振が続くのかを判別に、こうしたデータが使えるかもしれません。

画像:いらすとや

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