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福田和也「保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである」

"保守"とは、横丁の蕎麦屋を守ることであるという考え方が存在する
その考え方をもっともよく知る人物が福田和也であり、彼の人生と言葉からは、その意味が明らかになる


トンカツ放談

福田和也と言えば、「トンカツ放談」である
その対談は2008年前後に行われ、現在は休刊した「CIRCUS」誌におけるアウトロー作家、石丸元章との対談「揚げたてご免!!」をまとめた一冊である
「靖国神社は守らないけど、キッチン南海は守る。あの店は日本国の財産ですよ。ああいう店が街を支えている」という言葉は、思考の一端を示している
彼の活動が最も活発だったこの時期、福田和也は「脂の乗った」作家として知られていた
大量に本を読み、大量に原稿をまとめる一方で、フジテレビ「とくダネ!」のレギュラーコメンテーターなどメディア露出も多くこなしていた

彼の言葉からは、肉体言語そのものを感じ取ることができる
文士の昼酒は義務ですよ。我々の世代で、文士が顔を合わせるのにシラフでは恥ずかしいという文化を盛り返さねば」と語り、また、「1000円、2000円のワインでいい悪い言っていても仕方ないし。一番いいものが分かればそこからの距離感で、これはプーケがいい、アロマがいい、酸味がいい、甘味がいいと分かっていく。一番いいものを体験すると理解が深まるのは事実ですね」とも語っていた
巨きな体躯から発せられる言葉は肉体言語そのものである
福田和也の言葉を聴くと居住まいを正された
こんな貧乏くさいことをしていはいけない
こんな小さくまとまっていてはいけない
福田和也のように金を稼ぎ、酒場に繰り出し教養を身につけねば、そう思わせてくれた
当時はリーマンショックなど暗い話題が多かった
しかし福田和也が笑っている間は平和であろう、不景気を跳ね返してくれるだろう、そう思わせてくれた


しかし、その活動がピークを過ぎ、20年近くが経った現在、福田和也のメディア露出は激減した
福田和也の現状についてはあまり知られていない


福田和也の近況

福田和也の近況を知ったのは、彼が書いた「保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである」という一冊だった
この中で福田和也自身が自分の近況を語っている
その言葉からは、彼が大きな変化を遂げていることが伺える
かつては恰幅のよかった体躯は、今では痩せ細り、老人といえる姿になってしまった
最高時には80kgを超えていた彼の体重は、30kg以上も落ちてしまったとのことだ
福田和也自身が語るには、「ダイエットをしたわけではなく、食えなくなったのだ。恐らくは以前の半分もくえないだろう。認めたくはないが、頭の力も衰えた。脳に血が巡っていないことが自分でもわかる」とのこと
かつてのハイカロリーな食生活を反省し、「小説を書く体力維持のためにランニングを続けている村上春樹は、肉体をないがしろにすると、必ず肉体の報復を受けると言っているが、今まさに私はその報復を受けているのだ」と語っている
このように、福田和也の姿は大きく変わった

東京の変わる様を福田和也に重ね合わせたい

2020年代という節目を迎えた東京
再開発でこれまでとは異なる東京になろうとしている
古い店は立ち退き、綺麗な高層ビルが立つ
そこには集う人たちもいるけれど、古い店が消えてしまった寂しさも残る
特にコロナ禍では古くからの名店が店を畳んでしまった
福田和也にはその寂しさを背負う姿を感じる
「日本人よ治者となれ」というラストメッセージは福田和也ファンならば涙無しには読めない一節となっている


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