"LINEのお年玉"は、念願の『LINE経済圏』を生み出せるか?
12月16日、LINEは2016年から17年にかけての年末年始キャンペーンを発表した。LINE初のTVCMキャンペーンに出演したベッキーさんがナレーションする等の情報が露出しているが、本キャンペーンの本体はLINEのお年玉キャンペーンである。
https://linecorp.com//ja/pr/news/ja/2016/1605
ユーザーは、2017年12月27日(火)に販売が開始される「お年玉つき年賀スタンプ」(公式スタンプ13種類、クリエイターズスタンプ10種類、合計23種類、価格:各120円(税込)または50コイン)を購入すると、「LINEのお年玉」公式アカウントからスタンプ1セットにつき10枚の”お年玉袋”を受け取ることができます。受け取った”お年玉袋”は、2017年1月1日(日)~1月3日(火)の3日間、「LINE」アプリ上から友だちに送ることができ、受け取ったユーザーはその場でお年玉くじの抽選に参加することができます。お年玉の総額は5億円、一回の抽選で最大100万円が当たるほか、1,000円、100円、10円が当たるチャンスもあります(合計11,900,003本)。当たったお年玉は、「LINE」アプリに標準で搭載されているスマホのおサイフサービス「LINE Pay」の残高にチャージされます。
リリースにある通り、年賀スタンプ購入者に対して10枚のくじが付与され、送付した相手にそのくじが提供されるという仕組みのようだ。
年賀状から年賀メール、そして年賀LINEと、年始を祝うコミュニケーションの先頭に立ったLINEが本キャンペーンを行うことに必然性は見受けられる。
しかし、このキャンペーンの真の狙いは年始コミュニケーションの活性化にはない。明らかに、LINE Pay利用の活性化による『LINE経済圏』の構築に主眼が置かれている。
そう言い切れるのは、中国の怪物チャットアプリWeChatが数年前に近しいキャンペーンを実施し、実際に超巨大なWeChat経済圏を構築したからである。
それの日本版を今回、LINEが満を持して実施しようとしている。
WeChatはLINEと基本的には同様の機能を持ったメッセンジャーで、中国では国民的なアプリである。今や中国人はこのWeChatを使って、公共料金の支払いまで済ませる。その中核にある機能がWeChatペイメントである。
WeChatペイメントは、WeChatを介して支払い・送金などが行える機能で、これと同様の機能としてLINEが提供しているのがLINE Payである。利用シーンとしてメジャーなものは、グループチャットを通じて割り勘を行うようなことで、ユーザーからすれば煩わしい現金のやり取りなしにストレスなくお金のやり取りができるため、大変重宝されている。
一方でWeChat(を運営するTencent)側からすれば、ユーザー間、ユーザー対店舗でのお金のやり取りの総量が増えれば増えるほど、その手数料収入が入ることになる。そしてこの手数料収入が既にWeChatが生み出す売上に大変貢献しているのだ。
LINEは今や上場会社であり、ユーザー数の拡大が頭打ちになりつつあり、広告以外に大きな売上増要因が見出せない中、新たな収益源を強く欲している。
それが、LINE上での決済行動全体に対する手数料収入なのである。
さて、ではこのチャットでのペイメントをWeChatはいかにしてユーザーに広めたのか。それが2014年の旧正月に追加された「お年玉」機能なのである。
https://hasigo.co.jp/blog/wechat-otoshidama/
上記のブログに詳しいが、このお年玉機能、以下のようになっている。
1. WeChatペイメント内の一定の金額をお年玉に設定。配る人数も設定。
2. 個人・グループにこのお年玉を投げると相手はお年玉を受け取れる。
3. この時お年玉は相手ごと均等にもランダムにも提供できる。
4. お年玉を受け取るに際してはWeChatペイメントが必要。
お年玉の授受にゲーム性を付与することで、少額であっても手軽に楽しむことができる非常に卓越した機能である。
この結果、以下のブログによると2014年の旧正月を通して本機能は
http://fms-bj.com/blog/150226.html
2日間で2億人が微信と銀行カードの連結を行ったと報道されています。http://jingyan.baidu.com/article/f71d603762fa6e1ab641d1c6.html
すさまじい効果を発揮したようである。
LINEは今回、本機能をそのまま持ってくるのでなく、『お年玉くじ付き年賀状』という日本ならではの習慣に組み込むことで、巧みにローカライズを行った。年始を通してどのような効果が生まれるのか、大変楽しみである。この成否が来年以降のLINEのビジネス展開に大きな影響を与えるのは、想像に難くない。
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