女体化したことを大っ嫌いなフロイドに知られてしまうリドル♀の話し

「実験に失敗して女の子になる薬作っちゃって、それを偶然誰かがかぶるとかって展開起きないんスかね?」
「馬鹿な事をお言いでないよ。しっかり材料は測ったのかい? 少しのミスが大きな失敗に繋がるんだ」
 今日の魔法薬学の授業は、一年生との合同授業である。リドルが一緒に実験をする事になったのは、同じハーツラビュルのエースだ。
「大丈夫ですって、ちゃんと測りましたから。リドル寮長って女の子になったら更に小さくなっちゃうんですかね? ツインテとかになりそうなイメージあるんスよね。寮長女の子になったら絶対可愛いと思うんですけど」
「勝手な事を言うんじゃない。それよりも、更に小さくなると今言わなかったかい?」
 身長が低い事を気にしているリドルは、一学年下であるが自分よりもずっと背の高いエースを睨み付ける。寮にいる時よりも目線を上にしなくてはいけないのは、今は学校であるのでヒールのある靴を履いていないからだ。
「気のせいですって。あっ、寮長危ない!」
 エースが慌てた様子でそう言ったと思うと、突然後ろから誰かに勢いよくぶつかられる。
「うわっ!」
「わっ!」
 後ろからぶつかられるだけで無く、持っていたビーカーの中身をびしゃっと勢いよくかけられた。
「すみません!」
 自分がぶつかるだけでなく持っていたビーカーの中身をかけたのがリドルだという事が分かり、一年生である彼は真っ青になっている。
「寮長大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
「ただの塩水で良かった」
「良かったじゃない。これが危険な薬剤だったらどうするつもりだい。もっと周りをちゃんと見るように」
 ほっとした様子になっていた一年生がリドルから怒られた事により、再び狼狽えた様子になる。
「はい、本当にすみませんでした!」
 大きく何度も頭を下げると、一年生は逃げるようにしてリドルの元を離れた。
「やっぱり、偶然女の子になる薬を被っちゃうなんて展開なかなか起きないんですね」
「何故そんなにボクを女性にしたいんだい?」
 残念そうな様子になっているエースに呆れながら、リドルはポケットから取り出したハンカチで濡れた制服を拭く。
「この学校男ばっかだから、やっぱ可愛い女の子が一人ぐらい近くにいて欲しいじゃないっスか」
 女性になったら可愛い女の子になる筈だと彼から思われているらしい。
「例えボクが女性になっても、残念だけどキミが想像しているような姿にはならないよ。このまま授業を続けるのは無理そうだから、ボクはクルーウェル先生に言ってシャワーを浴びて着替えてくる」
「はーい」
 エースの軽い調子の返事を聞き顔を顰めたリドルは、教室の前にいるクルーウェルの元まで行き事情を話してシャワーを浴びに行く許可を貰う。
 まだ授業中なので大丈夫だろう。
 誰か来たりしないだろう。廊下に出たリドルは、そう思いながらシャワー室に向かって歩き出す。



 塩水で濡れてしまった体を洗う為に学園内にあるシャワー室にやって来ているリドルは、シャワーを止めると嘆息する。
「……ふう。まったく。まさかニ週連続液体をかけられてしまうなんて。みんな気が弛んでるんじゃないのかい? でも、今回はまだただの塩水で良かった」
 先週リドルが浴びる事になってしまったのは、調合に失敗した事によりできてしまった性別が変わる薬だ。シャワー室の中に並んでいる個室の中にいるリドルの胸には先週までは無かった小さな膨らみがあり、その代わりに股間にあった物が無くなっている。
 それ以外に大きな外見的な変化が無い為、薬を浴びた時にはリドル自身も自分の性別が変わってしまっている事に気が付かなかった。そのことにリドルが気付いたのは、このシャワー室に同じようにやって来て服を脱いだ時だ。
 直ぐに元に戻るだろうと思っていたのが、未だに全く戻る気配がない。その時は余り変化が無いがそれでも誰かに気が付かれてしまうかもしれない。そう思っていたのだが、誰にも気が付かれぬまま今まで来た。
(女性になっても全く変わらないなんて複雑だけど、そのおかげでみんなに気づかれずに今まで過ごす事ができたんだ。自然に戻るのが無理ならば、元に戻る方法を探さなくちゃ。みんなに知られる前に元に戻らないと)
 女性になったというのに全く見た目の変化がないなんて、それを知ったら皆に揶揄われてしまうことになるに決まっている。そんなこと絶対にごめんだ。
(特にフロイドには絶対に知られないようにしないと。彼に知られたらどんな事を言われるか)
 その時の事を想像して顔を顰めたリドルは、タオルを手に取り個室を出る。
「あれ、金魚ちゃん……?」
「ふ、フロイド!」
 何故こんなところにフロイドがいるのだ。今は授業中だというのに。
 個室を出たリドルに声を掛けて来たのは、シャワー室へとやって来ているので腰にタオルを巻くだけという格好をしたフロイドだ。
「金魚ちゃん雌だったの?」
 じろじろと体を見ていたフロイドからそう言われた事によって、リドルはフロイドに女になってしまっている体を見られてしまった事に気付いた。

 女になってしまったことをフロイドに知られてしまったリドルの運命は……!
「金魚ちゃんとの稚魚ちゃんきっと可愛いだろうねぇ♡」

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