凶悪で可愛いボクの彼氏
「金魚ちゃんの事が好き……」
フロイドに急に人気の無い場所に呼び出されたリドルは、照れているようにも怒っているようにも見える態度でフロイドからそう告げられた。そんな彼の発言にリドルは顔を顰める。
「誰にでもそんな事言ってるんじゃないのかい?」
むっとした顔へとフロイドがなった。
「誰にでも言ってねーし」
「女性を取っ替え引っ替えしてるって聞いたよ」
背が高いだけで無くフロイドは顔も整っている。そんな彼は、女性を取っ替え引っ替えしているそうだ。そういう男の事をヤリチンと言うのだとエースが言っていた。
「そんな事してねーよ!」
強い口調でフロイドから否定され一瞬驚いたリドルであったが直ぐに気を取り直す。
「どうだか」
「本当だって! 誰ともそんな事なんてしてねーよ。だってオレずっと金魚ちゃんの事が好きだったんだもん!」
険しい剣幕でフロイドが告げた台詞はリドルの目を丸くさせるようなものだ。
「……あの噂は事実無根で、童貞だっていうのかい?」
「……そうだけど」
頭を掻きながらそう言ったフロイドの姿は罰が悪そうなものであった。そんな彼の姿からも本当にフロイドが童貞なのだという事が分かる。
……可愛い。
自分よりもずっと大きいだけで無く目付きが悪い相手に対して思うような感情でそれは無い。しかし、リドルはフロイドに対してそう思い胸が締め付けられていた。
「……キミと付き合ってあげてもいいよ」
何を言っているんだ。思わず告げてしまった台詞を後悔していると、フロイドの表情が先程までと一変する。
「本当!」
明るい声でそう言ったフロイドの顔は、花が咲いたように明るいものへとなっていた。そんな顔を見ていると、後悔する気持ちが無くなる。
「本当だよ」
「ちょー嬉しい。一緒にいっぱいお話したり買い物行ったり映画行ったりしようね。金魚ちゃんにオレの料理も食べて欲しい」
ふにゃっとした笑顔でこれからの事を話すフロイドの姿は、頬が緩んでしまうようなものであった。
誰だ。フロイドのことをヤリチンなんて言った奴は。
そんな事絶対にしそうにない可愛い男じゃないか。
既に恋人に対して自分が盲目になっている事に、リドルは気がつけずにいた。
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