真っ赤なハイヒールをリドルに履かせるフロイドの話し

「金魚ちゃん足出してぇ」
 天蓋付きのベッドに座っているリドルは、今にも鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌の恋人の言葉に従い足を出す。リドルの足を片方の手で取ると、フロイドが先程箱の中から取り出した靴をその足に履かせる。
 モストロ・ラウンジのバイト代が出たので、輝石の国まで買い物に行ってくる。そう言っていたフロイドが輝石の国の店で買って来たのは、靴だ。
 今は人の姿をしているが、フロイドの本来の姿は人魚だ。本当は足を持っていない。それなのに彼は靴にこだわりがあるらしい。しかし、彼が今回買って来たのは、いつもとは違い自分の靴だけでは無かった。
 金魚ちゃんに似合いそうなものがあったからと言って、リドルの靴まで買って来た。そんな靴を持ってフロイドは、バイト終わりにリドルの部屋に遊びに来ている。
 寮服のブーツのヒールよりも細いだけでなく高いヒールの靴には長いリボンが付いており、フロイドが器用にそれをリドルの足に巻きつけている。
 フロイドがリドルの為に買って来たその真っ赤な靴は、女性ものである。リドルを女の子扱いしている訳ではなく、純粋に似合いそうだと思い彼はそれを買って来たのだろう。規則やルールにがんじがらめになっている自分とは反対に、何にも囚われない自由な男で彼はある。そんな所が嫌いであった筈だというのに、今は彼のそんな所に惹かれていた。
「でーきたっ。どう?」
 リドルは制服のシャツ一枚という格好になっている自分にフロイドが履かせた靴を見る。リドルがこんな格好をしているのは、靴を履かせる為にフロイドが脱がせたからだ。
「悪くはないと思うよ」
「オレはちょー似合ってると思うんだけど。ひらひらした真っ赤なリボンが金魚みたいじゃん」
「そうかい?」
 彼の感性は自分にはよく分からないと思っていると、ベッドに上がったフロイドにのし掛かられる。ベッドに仰向けで寝た事により、フロイドに覆いかぶさられてしまった。
「美味しそうな金魚ちゃんがもっと美味しそうになったね」
「そういう目的で買って来たのか」
 これを履いたリドルを抱く為に彼はこの靴を買って来たようだ。
「ちげーけど。だけど、美味しそうな金魚ちゃんを見てたらしたくなっちゃった。良いでしょ〜?」
「駄目だと言ってもキミは聞かないだろ?」
 フロイドは笑うだけでその質問に答えることは無かった。しかし、それはリドルの思っている通りだということだ。そんなフロイドに呆れていると、唇が重なって来る。
「んっ……はっ……」
 リドルは真っ赤な靴のリボンを水の中で泳ぐ金魚のように揺らすだけで、決してフロイドのする事を嫌がる事は無かった。

 フロイドが選んでくれたこの靴を履いて抱かれたい。そんな風に靴を見て思ってしまったことは絶対に秘密だ。
 だって、それを言ったらフロイドのせいだと言い訳をする事ができなくなってしまう。

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