リドルくんで見抜きして去るフロイド
毎晩寝る時間はほぼ同じだ。その時間を目処に勉強を止めてベッドに移動する。寮長であるので一人で使っている部屋で寝ていると、物音が聞こえて来た。
こんな時間に何の音だろうか。寮生が騒いでいるのかもしれない。物音はこの部屋の中でしたように感じた事を不思議に思いながら目を覚ましたリドルは、暗い中で自分を見下ろしている人物の姿を見て目を丸くする。
「金魚ちゃん起きたぁ。おはよう金魚ちゃん」
リドルをベッドで見下ろしていたのは、海のような青い髪に左右の色が違う瞳。尖った歯をしたフロリドであった。
よく似た顔立ちをした兄弟のジェイドが彼にはいるのだが、一目で彼がフロイドの方だと分かった。それは、決してジェイドと違い彼が制服を着崩しているからではない。
よく似ているとは思うのだがリドルには二人が別人にしか見えず、皆のように二人を見間違えてしまった事は無い。
「何故キミがここに?」
フロイドはリドルが寮長をしているハーツラビュルの寮生では無い。フロイドの友人であるアズールが寮長をしているオクタヴィネルの寮生だ。それに、普通こんな時間に他人の部屋を訪ねない。もうすっかり夜更けになっている。
「どうやってこの部屋に入って来たんだい?」
ふとそのことがリドルは疑問になった。
部屋のドアにはちゃんと戻って来た時に鍵をかけた。
「窓からだよ」
「窓からって……ここを何階だとお思いで?」
リドルの部屋があるのは一階ではない。そんな部屋の窓から彼はどうやって入って来たのだろうか。飛行術を使えばここまでやって来る事はできるのだが、それに必要なホウキの姿が部屋の中に無いように見える。
すっかり目が覚めてしまっただけでなく、暗闇に目が慣れフロイドの姿をはっきり見ることができるようになっていた。
「こんな時間にどんな用件があってボクの部屋に来たんだい?」
睡眠を邪魔されてしまった事に急に腹が立った。フロイドとは寮が違うだけでなく、クラスも部活も別だ。リドルは馬術部でフロイドはバスケットボール部。そんな彼に、真夜中にどうしてもリドルの元を訪ねなければいけない用件があるとは思えない。
「金魚ちゃんにおかずになってもらおうと思って♡」
「おかず……?」
どういう意味なのか全く分からない。今は食事をするような時間ではないし、自分は当たり前のことだが食べ物ではない。
「人魚は人を食べるのか?」
人魚について学んだことがあるが、そんな事はどの文献にも書いていなかった。しかし、書いていなかっただけで食べる可能性もある。文献に書いてあるのは現在分かっている事だけである。
「あは、金魚ちゃんちょー面白れぇ。金魚ちゃんは食べれるところ少なそうだから食用には向いてないよね。観賞用って感じ。最近勃ちが悪いんだけど、金魚ちゃんにおかずになってもらったら元気出そうなんだよね〜」
人魚は人間を食べたりしないのだという事と、痩せ過ぎだという事を彼が言いたいのだという事は分かったのだが、その後に彼が続けた言葉の意味を全く理解する事ができない。
目を丸くして困惑していると、フロイドが何故かこちらを見ながら制服のズボンのジッパーを下ろした。
「フロイド! キミは一体何をしてるんだい!」
「だから、金魚ちゃんにおかずになってもらうんだって」
「おかずってまさか……!」
やっとおかずがどういう意味なのか理解した。彼はリドルをおかずに自慰行為をしようとしているらしい。
全く予期していなかった出来事に見舞われパニックになりただ狼狽ることしかできずにいると、グレーの下着の中からフロイドが勃起した物を取り出す。
「もうめっちゃ元気になってる♡」
「そんな物をボクの前で出すなんてどうかしてる!」
フロイドの物はリドルの物とは比べ物にならない程大人の男の物であった。剥けたそれはカリが張り、蔓が巻きついた大木のように血管が浮き出ている。しっかりとした見た目のそれは、更にリドルの物よりもずっと大きい。
人魚の陰茎は、これが普通の大きさなのだろうか?
強い口調で告げたつもりであったのだが、その声は怯えているようにしか聞こえないものだ。突然こんな凶悪な物を見せられたのだから、怯えてしまうのは仕方ないことである筈だ。
「怯えてる金魚ちゃんの顔ちょークる」
フロイドがペニスを擦り始める。
「止めろ……フロイド、止めるんだ!」
「おかずになってくれたら良いだけだから、大丈夫だって」
「いい加減におし!」
リドルからどんなに拒まれても、フロイドはこちらを見ながらペニスを握ったままになっている。そんなフロイドの手の中にある物は、更に質量を増し、それを扱く手の速度が早くなっていた。そして、フロイドの息は荒くなっている。
彼は自分に欲情してそこをそんなに大きくしているんだと思うと、おかしな気分になり顔が熱くなる。まるで高熱でもあるかのような熱さだ。
拘束もされていないのだからここから逃げ出せば良いだけだという事に気付いたのだが、動くことどころかフロイドから目を離す事すらもできない。まるで魔法でもかけられているかのようだ。
「はぁ……金魚ちゃん……」
「……っ!」
熱を孕んだ声で呼ばれ、背中に甘い痺れが走った。
「はーイきそう。やっぱ金魚ちゃん最高。ちょっと味見させてね」
「んっ……!」
突然フロイドに尖った歯で首を噛まれた。軽い痛みだけでなく、また体の中を甘い痺れが駆け抜けていった。軽く体を弓なりにしていると、首を舐めていたフロイドが唇を離す。
まだ体の中に痺れのようなものが残っており眉根を寄せて身震いしていると、フロイドがリドルを見たまま射精する。
「〜〜っ! 気持ち良かったぁ〜。金魚ちゃんありがとう♡」
吐き出した物を手で受け止めた彼は、さっぱりした様子で汚れた手を部屋にあるティッシュで拭くと、用は済んだとばかりに窓から出て行く。ホウキでここまで来たのではないのかもしれないというリドルの予想通り、彼はホウキを使わずに窓から出ていっていた。
人間よりも足の使い方が上手い彼が出て行った窓を見詰めたままリドルは呟く。
「本当に何もしないのか……」
いや、正確には首を噛み舐めただけだ。しかし、それ以上のことは本当に彼はしなかった。
何かされた方がましだ。これをどうしたら良いんだ。フロイドのせいで立ち上がってしまった物をどう処理して良いのか分からず、リドルは途方に暮れる。
先程のフロイドをおかずに抜くなど自分にできる筈が無い。だって、そんなの。そんなの……。
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