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フルマラソン挑戦の準備として・・・

以下のnoteにて、フルマラソン挑戦の準備としてランニングトレーニングを実施する場合には、6分/1kmのペースで60分間走れるようになることを目標にすると良いと述べましたが、その理由は当方の経験則に基づくものであり確固たる科学的根拠はありません。



とはいっても、経験則だけのアドバイスは運動指導のプロフェッショナルとして無責任ですので、当方の経験則を科学的知見に基づき考察し無理やり(笑)理由付けをしてみたいと思います。

まず、6分/1kmのペースでのランニングの運動強度がどの程度のものなのか考察してみます。

最大酸素摂取量、等の持久力に関する生理学的指標を有していない一般の人の持久的運動時の運動強度を考える上で参考とすべき指標になるのはMETs(代謝当量)と呼ばれる指標ですが、METsは安静を保つために必要とされる酸素摂取量を基準に、様々な活動(運動)時に必要とされる酸素摂取量は安静時の何倍に相当するのかということから、その運動の強度を把握、設定する指標です。

そして、安静時に必要と酸素摂取量は、個人差はあるものの概ね3.5ml/kg/min(体重1kgあたり、1分間に3.5ml必要となる)であるとされています。

以上を踏まえ、6分/1km(時速10km)のペースのランニングの運動強度をMETsによって推定すると、概ね10METs(時速9.7kmのランニング)になるとされ、ここから酸素摂取量を推定すると、35ml/kg/min(10METs×3.5ml/kg/min)であると考えることが出来ます。

さて、上記によって時速10kmのペースでのランニングの運動強度(酸素摂取量)が推定出来た訳ですが、次に、この運動強度(酸素摂取量)が個々の最大強度(最大酸素摂取量)の何%に相当するのかを考察し最大酸素摂取量を推定してみたいと思います。

時速10kmのペースで60分間ランニングすると走行距離は10kmとなりますが、幾つかの先行研究等を参考にすれば10,000m走競技中の酸素摂取量は最大酸素摂取量の80%以上に相当し、5,000m走競技中の酸素摂取量は最大酸素摂取量の90%以上に相当すると考えることが出来るので、時速10kmのペースでの60分間のランニングは最大に見積もって個々の最大酸素摂取量の90%に相当するとした上で、以下の通り最大酸素摂取量を推定してみることにします。

・35ml/kg/min÷90%=39ml/kg/min

以上によって、推定ではありますが最大酸素摂取量を把握することが出来ました。

最大酸素摂取量の把握が出来ればランナーの間では有名なFosterとDanielsの推定式を使用しフルマラソンの予想タイムを算出することが可能となります。

マラソンのタイム(分)=387.3-3.45×最大酸素摂取量(ml/kg/min)

参考:Foster, C. and Daniels, J.; Running by the numbers. Runner's World ,10,14-17,1975

・最大酸素摂取量39ml/kg/min:387.3-3.45×39=4時間12分

このように、時速10kmのペースで60分間ランニングする能力が身に付けば、4時間12分程度でフルマラソンを完走出来るようになるといえ、以上によって当方の経験則も何となく根拠がありそうに見受けられる訳ですが、実際にはフルマラソンビギナーがこのタイムでフルマラソンを完走できるケースは少ないといえるかもしれません。

フルマラソン完走に影響を及ぼす要因として考えられるのは、コースレイアウト(特に高低差、等)、レース当日の気象条件、レース当日のランナーの体調やエネルギー源(グリコーゲン=糖質)の貯蔵状態、等々様々な要因が挙げられますが、特にマラソンビギナーにおいては下半身の筋力の良し悪しが大きく影響するのではないかと当方は考えます。

実際に、先行研究ではマラソンレース後に下半身の筋力、筋パワーが低下することが報告されており、その原因は筋グリコーゲンの枯渇や筋損傷、等が考えられますが、いずれにしてもレース後半になれば下半身の筋力、筋パワーの低下がみられ、それに伴いランニングスピードが低下することが予想されると共に下半身の筋の痛みや関節の痛みを感じ走り続けるのが困難になることが予想されます。

その結果、上述のタイムでフルマラソンを完走することが難しいといえるのです。

従って、冒頭で紹介したnoteで述べたようにフルマラソン挑戦の準備としては、ランニングトレーニングに合わせてウエイトトレーニングを十分に実施し下半身の筋力(ならびに関節組織)を強化しておくことが重要であるといえる訳です。

参考文献:

Nicol,C.,Komi,P.V., and Maronnet,P. ; Fatigue effects of marathon running on neuromuscular performance (1.Changesin muscle force and stiffness characteristics). Scand.J.Med.Sci.Sports1:10-17,1991.

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