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ドローン操縦のために知っておきたい電波のキホン


空撮用ドローンは、無線で操縦しつつ映像を確認できる、カメラ付きラジコンマルチコプター。無線電波でほぼリアルタイムで映像が見られる便利さと、無線電波でしか操縦ができないという制約をあわせ持った撮影機材です。今月は、ドローン操縦のために知っておきたい電波の基本知識を解説します。

・  周波数

周波数ごとの割り振りや細かい電波特性などは専門書におまかせするとして、おおまかでいいのでどなたにも必ず知っていていただきたいのが、周波数です。

ドローンの操縦には主に2.4Ghz帯、900Mhz帯、5Ghz帯の3つを使用しています。2.4Ghzというのは電波の振幅が1秒間に24億回あるという意味ですね。

一昔前のアマチュア無線からみると、昨今のドローンはとても周波数の高いレンジを使用しています。周波数が高いほど直進性が増すので、機体が操縦者から直接見えている間は、操縦信号の送信や映像の受信が明瞭になるわけです。反対に周波数が低いと、エネルギーを要しますが物体を回り込みやすくなります。

・  送信機・受信機

以前のラジコンは、操縦信号をコントローラーが発信し、ラジコン本体が受信する、という図式でした。が、ドローン世代はラジコン本体も映像を発信して、コントローラーで受信をするという機能が追加されているので、送信機・受信機という呼び方はしなくなりました。コントローラー、ラジコン本体の双方向で、電波の送受信をしています。古くからのラジコンユーザーは「プロポ」と呼ぶこともあります。


・  他の障害となる電波源

実際の撮影現場では周囲に様々な電波源があり、ドローンの操縦の障害になるものもあります。高出力のトランシーバー、周波数の同じ帯域のデータ通信機器、映像送信のOFDM機器のパラボラの前等は、特に気をつけてください。撮影本番前などで、事前に他の通信機器の電源を入れた状態でテストをできる場合は、なるべくテストをするべきです。また、携帯電話を持った人がたくさん訪れるイベント等では、人が増えることによって映像信号が想定よりも届かない事が多々あります。
また、同じ種類、メーカーのドローンが多数飛行するような現場では、限りある帯域を食い合うので、電波の到達距離が短くなったりします。

・  アンテナ

ドローンのコントローラーの多くは、ホイップアンテナという棒状のアンテナです。このホイップアンテナの特徴は棒の部分から横に電波が出るということ。棒を上から見て、360度ドーナツ状に横方向に電波が出ます。言い換えると、根本と先端の縦方向は電波がかなり弱いということです。たまに、このホイップアンテナの先端をドローンの方向に向けたほうがいいと勘違いされている方が見受けられますので、今一度ご確認を! そうしてしまうと、アンテナの特性的に一番電波が弱い(切れやすい)運用の仕方になりますので、くれぐれも間違わないようにしましょう。

アンテナの先を機体に向けると電波が弱い
一見変なアンテナ位置でも、電波的には良好です
水平に距離を出すときは垂直に 逆に機体が真上の場合はNG

またホイップアンテナ以外でも、先にアンテナそれぞれの特性を理解しましょう。それぞれに電波を飛ばす方向が違っていますので、撮影対象に正しくアンテナを向ける事が大切です。
そしてFPV運用でたまに見かけるのが、操縦者が気づかずにアンテナと撮影対象の間に入ってしまって、電波を邪魔しているパターンです。自分の体という電波的障害物のせいで、ドローンの電波到達距離の本来の性能を妨げてしまっていないか、常に意識しましょう。


・  撮影現場での運用

ドローンの電波が直進性に優れているということは前述しましたが、言い換えると、障害物に弱いということになります。かなり遠くても機体が見切れていなければ電波は届きますが、障害物に隠れた瞬間に電波は途切れると考えてください。撮影現場では、ドローンを安全に離着陸させられる場所の選定とあわせて、撮影でドローンを飛行させるコースとコントローラーを持っている自分自身が、常に障害物に隠れない場所の選定が必要になります。その際障害物の配置などによっては、飛行コースを、カメラアングル・撮影意図優先コースから、電波的な障害を避けるコースに変更する必要もあります。ロケハンなどで事前に撮影場所に訪れる事ができる場合は、カメラアングルだけでなく、コントロールする位置も必ず確認しておきましょう。
昨今のドローンは電波到達距離がかなり長いので、必ずしも、撮影対象との距離が近い方がよいわけではありません。コントローラーのそばに障害物があるという事は、それだけ電波的な死角も多いということです。

目視確認をきちんとしているつもりでも撮影に夢中になってくると、撮影対象とドローンの間に、建物等の障害物が入ってしまう事があります。その場合、映像信号・コントロール信号が遮断された状態になった数秒後には最近の機体であればほぼRTH(Return to Home)モードに入ります。するとただちに予め設定された高度に上昇し、離陸した位置に向かって直線で帰ってくる事になります。撮影対象が高い建物等でその向こうに機体が入ってしまった場合は、建物の影から操縦者側に戻ってこようとするわけですから、設定高度が建物より低かった場合そのまま建物に激突する可能性が高いです。これまで報告されたドローンの事故で、多いのがこのケースだと思います。
撮影中はモニター画面で撮影対象とともに常に自分の位置も確認し続け、万が一自分の位置が撮影対象の影に隠れそうになったら高度を上げて隠れないようにするか、隠れる前に動きを止めるなどの工夫が必要です。

また、GoHomeの設定高度は、撮影対象物の高さを余裕を持って越えられる数値に予め設定することも、事故防止のために効果的です。

・  高度差について

ドローンは通常、離陸地点から上昇させることを前提として設計されています。そのため一般的なDJI社のドローンは機体の下方向にアンテナがついています。しかし撮影内容によっては、離陸場所からいったん高度を下げて撮影しなくてはならない特殊な対象もあります。その場合は、同じ距離を上昇方向に飛ばした時よりも、映像信号が到達する距離は短くなります。

ビデオSALON2016年9月号10月号「前略 空からお邪魔します。」掲載
2022年3月加筆修正


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