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祝祭の日

   晴れたらお祭りがある国で、実は天気が操作されていたと暴露される話。 ******  今日は晴れた。だから、祝祭の日だ。  学校がなくなれば、会社も休みになる。花火が上がって、それを合図に出店が並ぶ。路上で演奏家たちが自らの楽器を手に取って太陽を祝福し、家族連れが街に繰り出す。夜になれば、恋人たちが手を取り合い、星を眺める。  いつもなら高揚した気分になるというのに、今日は違った。窓から見える街はどんよりとしていた。雲のない快晴だというのに、道行く人々は空を眺めず、

    • かぐやSFコンテスト応募作「ユンファ」

       曲を弾き終えると、なぜか観客がいた。その客は拍手をして、立ち上がった。 「良いね、ポロネーズ第6番、通称英雄ポロネーズ。力強くて、僕はショパンの中で一番好きだ」  フレデリック・ショパンを知っている人間がいるとは思わなかった。ショパンコンクールが無くなってから、もう半世紀近く経つ。  何より僕を驚かせたのは、その相手があのユンファだったことだ。僕が返答に困っていると、ユンファは自分の手を僕の手に添えた。 「この地点から再び曲を弾くこともできる。ド、か、レか、それともピアノの

    祝祭の日