自分でも驚く間違いを起こすアート contact Gonzo インタビュー
めちゃくちゃメソッド
リョウゴ:contact Gonzoさんの成り立ちを教えてください。
三ヶ尻:今現在メンバーは4人です。今ここにいる僕と塚原くん(塚原悠也さん)と松見(松見拓也さん)と、今日はいないですがNAZEくんの4人がメインで活動しています。結成は2006年で、ダンサーの垣尾優さんという人と塚原くんが始めたっていうのが最初の起こりですね。そこから考えると、16年になります。
リョウゴ:なぜ「contact Gonzo」という名前になったんでしょうか?
塚原:最初、僕と垣尾というダンサーと、夜中の公園で接触練習みたいな事をやってたんです。僕が勤めてた劇場が関わっていた、パフォーマンスアワードみたいなのに参加しようと申請書を書いてたら、団体名を決めないといけなくて。”ゴンゾ”ってめちゃくちゃという意味のスラングなんですね。で、「めちゃくちゃコンタクト」という意味で、文法をひっくり返して『contact Gonzo』っていう名前になったって感じです。
僕自身は大学時代に「ゴンゾ・ジャーナリズム」と呼ばれる文化にかなり影響を受けていたので、「Gonzo」という言葉を使わせてもらってる部分もあります。
前提をひっくり返す、面白い実験
塚原:僕たちの活動はそういったゴンゾ的な手法、つまり、”客観的視点というものはないんじゃないか”という立ち位置に影響をされていると思います。昔ってカメラマンが作品に映り込む事ってなかったじゃないですか。でも本当は余裕で映り込めるんですよね。前提という大きい壁が邪魔してるんですけど、「いや映るやん」っていう発想に変わると、色んな事が可能になる。
リョウゴ:すみません、ちょっとうまく理解ができなくて…。
塚原:要するに、行為をする人がカメラを持っているという事なんですよ。そうすると、物語にも実はカメラマンがいて、音響がいてというリアリティーが一気に見え始める。そういう前提を大幅に変えることによって間違いを起こす、みたいな発想です。
リョウゴ:言われてることは何となく分かります。
塚原:多分ここが一番、僕らがやってることの肝のはずなんですけど…上手く説明するのが難しいですね。
リョウゴ:それをダンスとしてひとつの作品として感じようとすると僕は難しく感じてしまって。contact Gonzoさんのパフォーマンスは一見すると喧嘩をしているように見える。そういった視点がどう変わるのかなとか…
塚原:例えば、ちゃんとしつらえた劇場にちゃんとしたダンスが来る、とかいうのは当たり前じゃないですか。でもちゃんとしつらえた舞台上に、特にリハーサルもしてないし衣装も着ていないおっさん3人が乗ってるだけで結構面白いって思えるんです。「あってはならないことが起こっているんじゃないか」「なんなんこれ」っていう反応を起こしたい。なのでリョウゴさんの反応はまさに正しい。
リョウゴ:ほんとですか。
塚原:僕は劇場で働いていたんですが、そうすると業界の前提が結構見えてきちゃうんですよね。アーティストってもっと自由に発想してると思いきや、わりと前提とか制度に縛られてしまっている。舞台上で僕ら自身も驚くような間違いが起こると、僕はものすごい興奮します。前提をひっくり返せるかどうかって、アートの世界だとそれが面白く実験できると思うんです。
リョウゴ:contact Gonzoさんの映像、凄くドキドキワクワクして、見入ってしまったんです。僕は結構飽き性なので、いつも物事を長く見れないんですけど、何本も何本も見てしまいました。衝動が全然止められなかった。
塚原:もうそれで十分です!
しょうもないことを一緒に
天野:今回の『枝アンドピープル』は、人と人を枝で繋ぐ、体験型の作品ですよね。その発想はコロナ禍だから生まれたんでしょうか?
塚原:5、6年前にヨーロッパを3ヶ月くらいツアーする時期があったんです。結構大きいプロジェクトで、その時は「女性が入ってくれると企画に広がりが出るのかな」と思ってお願いした関西のダンサーの人がいるんですけど…色んな形の身体的な接触があるからもうちょっと丁寧に進めた方が良いかと思って。1人が角材を押しながら、他の奴が他の物で押すっていう、要するに3人目が邪魔をする遊びのようなことを試してたんです。それが結構面白くて。そこで発見した感じですかね。最初は角材を輸送していたんですけど、角材を(海外に)輸送するのがバカバカしいなと思って、適当に拾った枝で試し始めた感じですね。
天野:その時も野外で?
塚原:そうですね。僕らはスタジオやリハーサルルームでやる事にあんまり面白さを見出せない集団なので、公園でやったり、雨が降ってきたら自分等が泊まっている宿でリハーサルをしたりしてました。
天野:contact Gonzoさんのような作品の場合、リハーサルでは何をやるんですか?
塚原:最終的な理想としてはボコボコに殴り合ったり出来たら良いんだけど、大体集まってくれるのはダンサーの人達だから僕らほど殴りたいと思っているわけでもなく…ダンサーにとって身体は楽器みたいな扱いだから、そんなに無茶は出来ないっていうのもあるので、一緒に遊んでお互い仲良くなることの方が大事かな。一緒にビール飲むとか、しょうもないことするとか。「こいつはこういう事を考えてるんだな」とか「こいつはこういう事やったら怒りそうだな」とか知り合う時間が大事。でないと、本番中にいきなり違うことやった時についてきてくれないですからね。
実はめっちゃ動いてる、”動かないパフォーマンス”
松見:『枝アンドピープル』は、基本的接触行為を、何か”物”を介してやってみたらどうなるのか?というのを実験していたことがあって、その流れで出来たワークショップ的なパフォーマンスです。木の枝を掴まずに、身体の好きなところで押し合います。複数人と複数の枝をどんどん押し合って繋いでいくっていうのがパフォーマンスの中心となる部分です。見た目的には静止している状態がかなり長く続くんですけど、実際やってみると押す・押される力が弱いと落ちちゃう。でも押しすぎると枝が食い込んで痛いので身体が避けようとする。そういった、すごい細かい動きのコントロールを実は内部ではしています。
リョウゴ:これは皆さんも参加が出来るっていう事なんですよね。どのくらいの人数が参加出来るんですか?
塚原:枝の数にもよりますが、最大100人越えでもやってます。
リョウゴ:そうなんですか!そんな人数で。
塚原:完成するまで枝がポロポロ落ちたりそれを直したりとかはありますけど、10人ぐらいでも十分面白いですよ
リョウゴ:めっちゃ参加したいです(笑)
塚原:ぜひ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?