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ダンサー二人による、生き生きとした九相図 安住の地インタビュー

ストレンジシード静岡のサポートスタッフ、その名も「わたげ隊」。ストレンジシードってどんなフェス? どんなアーティストが出るの? ということを伝えるべく、地元・静岡を中心に活動するわたげ隊が出演アーティストにインタビューする企画。安住の地のみなさんが登場です。

わたげ隊がゆく!
ストレンジシード静岡2023 アーティストインタビュー
ゲスト:私道かぴ、森脇康貴、酒井直之
聞き手:ハボ、天野(わたげ隊)

ストレンジシードでつながる縁

ハボ まずは皆様の自己紹介と団体名の由来を教えていただけますか?

私道かぴ 私道かぴと申します。普段は劇作・演出をやっております。団体名は、漫画家・山本直樹さんの「安住の地」という漫画の題名から取ったと聞いていますが、活動をやっていくうちに、色んなところで公演させて頂くことが増えてきて、それ自体が”安住の地を探している”…みたいな後付けのコンセプトが最近出てきました(笑)。…森脇さん合ってますか?

森脇康貴 (大きく頷く)

ハボ ありがとうございます(笑)。森脇さん、酒井さんも自己紹介お願いします。

森脇 『安住の地』の俳優をやっております、森脇康貴と言います。去年も大変お世話になりました、今年もよろしくお願いいたします!

酒井直之 ダンサーの酒井直之と申します。私は『安住の地』のメンバーではなく、今回は客演で参加しています。実は去年のストレンジシードで和太鼓+ダンスユニットの『まだこばやし』という団体でお世話になってました。今年もよろしくお願いします。

ハボ よろしくお願いいたします。去年のストレンジシードの前から皆さんお知り合いだったんですか?去年のご縁で今回の共演が…とかだったら素敵だなって思ったんですけど。

左上:私道かぴさん 中央下:森脇康貴さん 右上:酒井直之さん

私道 森脇さんは劇団員で、酒井さんは2020年のAPAF(アジア舞台芸術ファーム)でご一緒させてもらいました。
その年のAPAFは全部オンラインだったので直接会えてなかったんですけど、去年観客としてストレンジシードに行った時に太鼓を叩いて踊ってる本物の酒井さんを観て「いつか一緒に作品を作りたいな」と思いました。なのでストレンジシードがきっかけと言っていただいて差し支えございません!

ハボ 素晴らしいです!

安住の地で、死体が走る?

ハボ 今回の作品『わたしが土に還るまで』のテーマである「九相図」、なかなかショッキングな題材ですが、なぜこれを選ばれたんでしょうか?

※九相図(くそうず、九想図)とは、屋外にうち捨てられた死体が朽ちていく経過を九段階にわけて描いた仏教絵画である。
名前の通り、死体の変遷を九の場面にわけて描くもので、死後まもないものに始まり、次第に腐っていき血や肉と化し、獣や鳥に食い荒らされ、九つ目にはばらばらの白骨ないし埋葬された様子が描かれる。九つの死体図の前に、生前の姿を加えて十の場面を描くものもある。九相図の場面は作品ごとに異なり、九相観を説いている経典でも一定ではない。

Wikipedia

私道 そもそも酒井さんと何か作品を作りたいと思っていたところに、森脇さんも神戸のダンスボックスで俳優としてではなく”ダンサーとして”活動を始めたこともあり、身体表現をテーマに作品を作りたいとなと思うようになりました。

ハボ なるほど。

私道 「死んだ身体って舞台上に上げられないよね」、という大前提みたいなものがあると思うんですけど、それをめちゃくちゃ生き生きとしたダンサー二人で表現したらどうなるのかなと思って。今回「九相図」という仏教画について、三人で話しながら作っていこうと考えて、このテーマを選んでみました。

ハボ 東京の試演会は如何でしたか?やっぱり九段階で見せる演出なんですか?

森脇 九段階とカッチリは決めずに創作をしていました。でも観る人によっては九相図という元々の題材を知ってらして、「動いてる様が自然と九段階に分かれているように見えました」っていう方もいましたね。

『わたしが土に還るまで』試演会(2023年3月31日 有楽町YAU)
写真:加藤優里

ハボ へえ!

酒井 死体って聞くとどうしても身体がどんどん動かなくなる……みたいなイメージがあると思うんですけど、死体を動物が食べに来るとか、虫が体を分解していくとか、次の命に向かっていく過程でもある。そしてある時は身体が獣のように見えることもあるし、虫のようにも思えるときもある……みたいな解釈の幅がある作品になってましたね。

ハボ なるほど。お二人の試演会報告を聞いて、私道さん的に更にひらめいたところや、静岡ではこうしようかな?みたいなところはありますか?

私道 めっちゃプレッシャーかかりましたね!(笑)でも東京に観に来れなかった方から「どういうことやったの?」と聞かれた時に「うーん、まず走るんだけど」って言ったら「走るの!?」って驚かれましたね。

ハボ 死体が(笑)。

私道 我々も創作してる間にちょっと感覚が麻痺してしまっていたんですけど、最初にタイトルとテーマだけ見た方からは想像出来ない風になってるのではと思います。

ハボ 『安住の地』の「死体」。どんなものが出来るんだろうとワクワクします!

九相図、押さえとく?

ハボ 本来”九相図”は「お坊さんの女性に対する煩悩を鎮めるためのもの」と資料に書かれていたんですが、あえて男性の演者で上演するというのは意味があるんですか?

私道 めちゃくちゃいいところを突いてこられますね。女性の身体が朽ちていくのを見て色欲を無くしていくという大前提がありますが、創作過程で、人間の身体が朽ちていくのを見てその欲求って本当になくなるもんだろうか?意外となくならないんじゃないか?っていう解釈をした気がします。

長月 九相図というものを初めて知ったのですが、観劇前に知っておいた方が良いことはありますか?

私道 何も知らなくても充分面白いと思います!お二人はいかがですか?

酒井 私も知らなくても大丈夫かなと思っています。ワークインプログレスの時は閉じたスペースでやってたんですけど、ストレンジシードでは不特定多数の人が見るし途中から覗いたりする人もいるかもしれない。それでも成立するような作り方をしていきたいですね。

森脇 「後から知る」でも良いなと思いながら作っているので、最初は何も知らなくても面白いなと僕も思います!

静岡でまた会いましょう。

ハボ 『安住の地』さんは去年もストレンジシード静岡に出演されていますが、去年やり残したことはありますか?

私道 私は観客として、中村さん(中村彩乃さん)と森脇さんの二人を観ていたので、やり残したことはないんですけど…森脇さんも酒井さんも、青空の下で走り回るのがすごい似合う二人だなと感じているので、のびのびと踊ったり走ったりしてもらいたいなっていう個人的な願望はあります。

森脇 そういう意味ではもっと走れたのかもしれないっていうやり残しはあるかもしれないですね(笑)。

ハボ あはは(笑)

森脇 ”毎ステージ違う”というのは大きかったです。音響のスタッフさんにもすごい手助けをしてもらったんですけど、風が吹いたり日差しでライティングが変わったりということが毎ステージ違ったりすると何も固められなくって…。だからこそ体で何か演技をし続けるしかないっていうのが面白くもあり、天候が芝居と重なった時にその効果が120%引き出されるというのが芝生ステージだったなぁと。

天野 私は去年芝生でスタッフをしていましたが、自然からの素敵なギフトが沢山あるステージだなと思いました。

安住の地『異郷を羽織る – Drape the Strange Land –』ストレンジシード静岡2022より

ハボ ありがとうございます。酒井さんは昨年は別の団体で、(静岡市役所前の)大階段での上演でしたよね。いかがでしたか?

酒井 大階段は環境的には安定しているんですけど、時間帯で日差しの量がまるでまったく違っていて。「まだこばやし」も全力で踊って叩いて歌って…みたいな作品だったのでめちゃめちゃ暑かったです!でも暑い分、パフォーマンスが一段階上がったような感じがありました。
もともと外とか自然の中で踊ったりするのがとても好きなので、今回は芝生という環境から自分の体がどういう影響を受けるのか、とても楽しみにしています。

まだこばやし『それぞなる』ストレンジシード静岡2022より

私道 ちょうど現地視察に行こうかなと思ってるんですけど、ただの野外じゃなくて駿府城公園の中で上演することってなかなかないじゃないですか。なのでその土地の記憶とか地面の下で今まで何があったのか……みたいなことも折り込みながらやるべきだろうなとは思っているので、そこが楽しみです。

森脇 僕は静岡に行くこと自体がストレンジシードが初めてだったんです。なのでこのフェスティバル自体が「静岡に来て初めての体験」っていうのが自分の中ではなんか良くて。それをもう一度出演する側として参加させてもらえるのは大きな意味があるなと思っています。

酒井 僕は去年参加した時にストレンジシードがすごい楽しかったし良かったな!と思っています。その理由のひとつとして、地理的にいい位置というか。西からも東からも人が集まれる場所なのが良いですよね。それこそ私道さんと出会えたのもそうですし、色んな人があの街の開かれた場所…閉じた場所じゃないところで出会えたのがなんかいいなって。あとご飯が美味しい(笑)。

森脇 間違いないです。

酒井 『まだこばやし』は都内でリハーサルすると誰か一人車で(和太鼓を)運搬しなきゃいけないので皆で飲めないんですよ。でも静岡滞在中は皆で歩いて皆で飲めて本当に楽しかったです!

草野 ストレンジシードにいらしたアーティストさんはだいたい胃袋をつかまれて帰っていくんです。わたげ隊でも「静岡に来たらこれを食べて!」みたいな投稿をInstagramにアップしているので、楽しみにしていて下さい!

天野 静岡でお待ちしています!

安住の地
京都を拠点に活動している劇団/アーティストグループ。2017年旗揚げ。演劇を主軸に置きながら、音楽・写真・映像・ファッションなど、様々なカルチャーとコラボレーションし「ミクストメディア」な作品を発表し続けている。作風を固定しない創作スタイルをとり、SF劇・コメディ・メディアアート劇・音楽劇・無言劇などと幅広く展開、新感覚でカオティックな劇体験を生み出している。ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム「KIPPU」、神戸アートビレッジセンターセレクション「KAVC FLAG COMPANY 2020-2021」、金沢21世紀美術館 芸術交流共催事業「アンド21」、世田谷パブリックシアター「シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.14」などに選出。
WEBSITE

ストレンジシード静岡2023
『わたしが土に還るまで』
安住の地


日程:2023年
5月4日(木・祝)12:00 / 15:40
5月5日(金・祝)12:00 / 15:40
5月6日(土)12:00 / 15:40
会場:駿府城公園エリア[芝生]

構成・演出:私道かぴ
出演・創作:森脇康貴/酒井直之
制作:中野コナン
音響:佐藤武紀
衣装:横山キミ(NEWSEE)
メイク:篁怜

インタビュー:ハボ、天野(わたげ隊)
記録・テキスト・編集:天野(わたげ隊)
編集:小野あすか
ストレンジシード静岡 事務局:山口良太、草野冴月

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