何が起きるかわからないからおもしろい。エンニュイ インタビュー
長月 まずは簡単な自己紹介をお願いします。
長谷川優貴 エンニュイの長谷川です。エンニュイは2017年にメンバー何人かと一緒に旗揚げし、途中僕ひとりで一年間活動する時期を挟んで去年の終わりからまた新しいメンバーを入れて活動しています。
長月 ピースの又吉さんが〈エンニュイ〉の名付け親と伺いましたが、お名前の由来についてもっと詳しく教えていただけますか?
長谷川 元々僕が吉本に所属していた時に2年先輩の又吉さんによくしていただいていたんですね。
最初に「脚本書いたら?」と言ってくれたのも又吉さんだったので「劇団やるときに名前つけてください」とお願いしてました。
僕の雰囲気がアンニュイな感じなのにお客さんをエンジョイさせるから、造語で混ぜ合わせて〈エンニュイ〉という名前になりました。
山口 今回出演されるメンバーはどんな方達でしょうか?
長谷川 今回の出演者のうち、4人はエンニュイのメンバーです。彼らはミュージシャンだったり、今は俳優をやっている僕の元後輩芸人だったり、映像系に出てる女優さんだったり、映像コンテンツ会社で働きながら配信と演劇をやっている人もいます。
客演で出演する2名は、僕がひとりで活動している期間に出演してくれていた方たちで、僕は勝手に準メンバーみたいだと思っています。
山口 色んなことをされている方が集まっていらっしゃいますが、それは意図的にそういう方も集めているのかそれとも自然と集まってきたらこういうメンバーになったんでしょうか?
長谷川 あんまり意図的には考えてなくて、色んな方が自然と集まってきました。
不確定要素さえも使いこなして。
長月 今回やる作品について簡単に紹介していただけますか。
長谷川 今回の『平面的な世界、断片的な部屋』という作品は2017年にエンニュイの実験公演として上演したもので、、その構造を使ってまったくの新作を作ります。
初演の時はファミレスを舞台にしたんですが、深夜のファミレスの景色の中にいる人達の態度が悪く見えるようにしたんです。
けれど時間がループされて同じ時間を繰り返していく度にその人達のプライベートが垣間見えてきて、そうすると最初嫌なイメージだった人も最終的には「理由があってそういうことがあるんだ」という風に全員嫌な人には見えなくなっていく……という作品でした。
長谷川 同じ構造で高校の教室という設定にして、福島県立いわき総合高等学校の高校生達とも『平面的な世界、断片的な部屋』を作ったことがありました。
その時もパッと見だと20人の生徒が作ってるただの高校生の演劇なんですけど、皆のプライベートなことを聞いていく内に最終的には20人全員のことが理解出来て全員のことを好きになるような作品を作りました。今回のストレンジシード静岡ではそれを野外バージョンで作ってみようかな?と思っています。
長月 以前はファミレスや教室という設定だったということですが、今回はどんな設定でやるのでしょうか?
長谷川 今回は上演場所が児童公園であることと、エンニュイのことを知らないお客様も多いこともあるので、観客にとってははどれが演者かわからない状態から始めて、同じ時間をループしていく中で「あの人はああいう人なんだ」っていうのがどんどんわかっていく……という感じにしていきたいです。
長月 フラッシュモブみたいで面白いですね。野外での上演が初めてとお伺いしたのですが何か不安なことや、逆にワクワクしていることはありますか?
長谷川 僕は元々芸人なので、野外の営業でネタをやったこともありますし、青森の八戸市で色んなパフォーマーの方と即興で芝居をやった経験もあるので、野外であることに慣れているとは思います。
エンニュイでも様々な場所でよく公演をするので、野外は馴染むんじゃないかなと思っています。
僕らの上演中は遊具を使用禁止にすることも出来ると(ストレンジシード静岡の事務局から)伺ったんですが、さすがにゴールデンウィークに遊び場を取り上げられないじゃないですか。
なので毎回子ども達が遊んでいる中で何が起きるかまったくわからないんですよね。そういう不確定要素が楽しみです。
山口 普通に子どもが遊んでいる中で上演されるので、日によっては子どもがワーッと騒いでいる時もあれば、散歩中の犬が吠えるかもしれない……毎公演全く異なるものになる可能性が高そうですね。
長谷川 出演者は同じ演技をループするけれど周りはどんどん変わっていく……というのは普段の僕らの生活と同じですよね。たとえば通勤の時に毎日同じ道を歩いて同じ行動をしているけど、日々周りの景色は変わってるじゃないですか。作品自体がそういう風に見えたらいいかなと思いながら作っています。
その時の空気を大切に。
長月 エンニュイは、複数人がセリフを同時にしゃべる同時多発会話のお芝居も特徴のひとつですが、脚本はどのように執筆されているのですか?
長谷川 同時多発の脚本を書かれる方は結構緻密に書かれる方も多いと思うんですけど、僕はその時の感覚で演者の方に任せています。
脚本にはセリフだけ書いてあって稽古場で「一斉に言ってみてください」とかそんな感じで合わせてます。
もちろん稽古中に聞こえが悪いところは指摘したりもしますがかっちりは決めてないですね。
長月 私、今年焼津で劇団を旗揚げする予定で、音響をどうしようか考えているんですが、エンニュイは音響はいつもどうされているんですか?
長谷川 音響は基本的に使ってないですね。
普段はアドリブも多くて、キッカケ(音楽を流すタイミング)を合わせようとすると、音響さんに稽古全てに出てもらってキッカケを把握してもらわないといけなくなったり、キッカケ縛りで演者の芝居が縛り付けられると嫌だなと思って音響は使ってません。今回はミュージシャンの子がいるので地声で弾き語りをやってくれます。
山口 稽古場でも本番でもあまりキメキメにしすぎずにその場で起こることを大切にされていらっしゃるんですね。
長谷川 芸人も舞台に上がる前に袖からその日のお客さんの雰囲気を見てネタを変えたり、同じネタでも客席に年配の方が多かったらゆっくり目のペースで話すようにしたりとかするんですが、エンニュイの作品でもそういうことをやっていますね。
たとえば上演した場所の環境で声が響きすぎて相手の言った台詞が聞き取りづらかった場合も、あえて「今なんて言ったの?」と(台本にはないセリフを)演者が言えるような状況を作っています。
長月 状況や環境に左右されやすいお芝居だと思うんですけど、今までやってきた中で「この公演しんどかった!」というのはありますか?
長谷川 公演自体でしんどいと思うことはあまりありませんが、まだこういうジャンルの演劇が浸透していないので、笑ってもいいタイミングで笑いをこらえている人がいたり、客席が笑っていいのか?みたいな空気になっている時は「ここで笑ってもらえたらもっと演者はエンジンがかかるのにな」という気持ちで見ています。そこはまだしんどいところですかね。
大人になってからの静岡を堪能したい。
長月 今回のストレンジシードで、作品の上演以外で「静岡でこれは絶対やるぞ!」みたいなことってありますか?
長谷川 メンバーにお酒好きが多いのでいろんなお店に行ってみたいですね。自分の出身は静岡県富士市なんですが、18歳で上京したので地元で飲むことがあまりなくて。静岡市も買い物に出かけるくらいだったし、芸人になってから静岡市に行く事があっても東京から近くて泊まりで行くことがなかったので、静岡市を満喫出来るのが楽しみです。
長月 ありがとうございました。
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