【2つめのPOV】シリーズ 第6回 「しがみつく 」Part.1(No.0212)



パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉


ミステリーを終わりから読んだ方がいいよ。


先に動機とか犯人が分かってから、細かく読んでいくと、いかにどうでもいい思わせぶりな情報で読み手を撹乱させているかよく分かるよ。


こういうのは色んな作り方があるけど、その一つが「終わりから考える方法」なんだ。


最初に犯人、動機、ゴール、答えを設定してそこに行くように道筋を作っていくんだ。


この方法を使うときには理由があって、それはその犯人や動機、ゴールや答えにどうしても「必要性」があるときなんだ。


でも、これをやり過ぎると矛盾も出やすい。


その終わりまで行く過程がどうしても雑になりやすいんだ。


だから後から考えると「アレって結局なんだったの?」ってことが多いんだ。


ハリウッド映画によくあるでしょ?


でもそう思う頃には劇場を後にしているし、本だって読み終わっている。


だからもう時すでに遅し、文句言ってもお金も「時間も」帰ってこないんだ。


「騙された!」って怒ったってもう遅いんだよ。


中にはムキになって、その矛盾を強引に肯定しようとして無茶苦茶な理屈を並べる人もいるね。


騙されていたことを認めたくないんだ。プライドを守りたいんだよ。


そういう人は結局狂った行動に固執するよ。改善ってことはしないんだね。


今、キミのカバンには読みかけのミステリーがあるでしょ?
え、無い?
いや、必ずある。
絶対にあるよ。それを開いて。
そして、そのミステリーの「目的」を考えて。


犯人の手口とか細かいことなんて実はどうでもいいんだ。
ときには被害者の存在すらどうでもいいんだよ。


目的へ進むためのプロセスに過ぎないんだ。
1人を殺したいために、バレないために1万人を殺す。
これだってあり得るけど、もっともっと先に目的があることを考えるべきなんだ。


1万人を殺す理由は、実は棺を売りたいからかもしれない。
風が吹けば桶屋が儲かる、って昔から言うし。


もっともっと目的は遠くにあるかもしれない。
まとまっている所で1万人が殺されたのなら、その土地は空白になるから安く買い叩けるよね。


バラバラの所で殺すのなら、病気のせいに出来るよね。
病気なら薬が売れるね。



お水を売るにはどうするの?
良いお水を売る?


いやそれよりも、すべてのお水を飲めないようにすればいいでしょ?


でもそのために毒を混ぜるのは手間だしバレちゃうよね?


だからお水は危険だぞ!って嘘をつけばいいんだよ。
みんなにその嘘を言わせればいいんだ。
気にせずに飲む人がいたら怒ったり非難したり、そういう人は迷惑だ、ってテレビやネットで叩けばいいし、映画とかを使えばいい。


そうすれば誰も飲めなくなるよね?
そうなったら、いくらでもお水が売れるよ。無制限に売れるね。


タダのお水がお金に化けるんだ。


そんなのバレるって思うかな?


バレないんだよ。
だってワインだって飲んでも嗅いでもプロにだって分からないんだよ?
ただのお水の違いなんて誰にもわかるわけ無いでしょ。


そう思わない?


キミはそう思わないんだ?
バレるに決まってるって思うんだね。


そう。


なら、教えてよ。


お水がわかるなら、空気だってわかるよね?


空気の違いがわかるなら教えてよ。


これまでと今の空気の違いを。





【2つめのPOV】シリーズ 第6回


「しがみつく 」Part.1


パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉


おわり




Part.2へ続く


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