【2つめのPOV】シリーズ 第3回「仕切り」Part.1(No.0160)


パターンA〈ユスタシュの鏡〉




[side:D]


私の通う中学校でイジメが起きた。

私のクラスで起きた。

被害者は私だった。


他にも多くが色々な被害にあった。

加害者は複数人で、根っからの不良たちであった。

中学にあがった時から問題行動で何度となく注意を受け続けていたが、改善無く今日まで来た。

3年になって中学も最後の時に、よりによって彼らと同じクラスになってしまったのは悲劇であったが、しかし安心感もあった。


それは担任がとても力強い男性の教師であったことだ。


国語の教師であったが身体付きも逞しく、声も大きかったし顔つきもおっかない人で、普段着ている服が背広で無かったら体育教師と間違えられそうな見た目だった。


しかし性格はとても優しくて思いやりがあり、生徒の意見などを聞き入れる授業をする人だった。

生徒の間違った意見でも投げやりにせず、幼稚な感想でも馬鹿にしない人だった。生徒にも父兄にも信頼があった。


学校側も不良生徒達への対策として、このクラスの担任を彼にしたのだろう。また教師の性格上、その提案を快く受けたに違いない。


だが、いざ始まってみると彼らの行動には変化はなかった。

正直この程度の対策で心を入れ替えるほど彼らは素直な性根の持ち主では無かった。


担任も他の雑事もあるし、担当の授業もあるから彼らにばかり構ってられないのだ。

不良連中も担任の間隙を縫って悪事や嫌がらせに精を出す事に慣れていた。

過去に何年もそんな事ばかりしていたのだから当然と言える。


度重なる小言や忠告にもその場しのぎで反省が無い状態が続き、流石に担任も対処を本格的にすべきと判断した。



まだ梅雨前の頃に、担任はその特定の不良グループのリーダーをクラスから追い出し、通学を禁止にしたのだ。

他のメンバーにも曜日で分けて通学する段階的な通学禁止処分を出した。


これは大変な処分であった。しかし当の生徒達からしたら嬉しい対処だった。目の敵のようにされていた私にとっては特に。


当然だが、校長や教頭、そしてその不良たちの親や教育委員会は揉めた。

しかし教育委員会はこの問題に深入りしようとはせず、この学校の問題として処理するよう命じた程度で、後は介入しなかったようだ。


想像通り1番煩く言ってきたのは彼らの親だった。

やれ差別だ横暴だイジメだとボロクソに担任を罵倒し、自分達は被害者であり、この教師が加害者であると批判をしてきた。

その批判には勿論反論が教師からもそれ以外の父母からも生徒達からも出たが、彼らの親だけあって全く聞く耳を持たず暴れまわった。

つづく

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