【2つめのPOV】シリーズ 第1回「土台」Last Part(No.0148)


パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉




昔から繋がってた

弟が生まれたときは包まれてよく顔が見えなかった

今も弟は繋がっている

お父さんもお母さんも、よく見ると繋がってる

でも学校に行くと繋がってない人も沢山いた

先生は全員切れていた だから暗くてどんよりしている

友達の親も切れている人が結構居た

父兄参観日は面白かった

教室の後ろに一列に並ぶ大人たちが繋がってたり切れてたり、光ってたり暗かったりした

暗くて切れている親の子はやっぱり切れている子が多かった

でも中には親と違って繋がっていて、それでいて誰よりも光っている子もいた 彼とは今も友達だ


中学高校と進むごとに繋がっている生徒は減った 光っている子も少しずつ暗くなっていった

意外にも女子の方が切れるのが早かった 男子は切れていても光が強い子が多かった

すごく勉強の出来る真面目な奴がいたけど、そいつは誰よりも暗くてとっくに切れていた

私の友達仲間はほとんどが繋がっていたし光ってた でもみんな馬鹿だったな


大学に行くと生徒の殆どが切れていた

もうこの頃になると男も女も無くなってた

はしゃいで騒いで一見元気な連中の一人だって光ってなかった

その中で唯一繋がってた子がいた

静かで周りから軽んじられてたけど一番光ってた

だから好きになった 彼女と結婚出来たのは随分後だけど


子供の頃から知ってたけど大切さに気づいたのは案外遅かったな

大学を出て大手の子会社に就職したときだったか

今で言うブラックで連日終電帰りだった

ノルマが酷くて同期は気が狂ってしまった


あるとき自分の繋がりが弱ってるのに気づいた

光が無くなりかけていた

彼女に会うと向こうも気づいてた様子ですごく心配してくれた

彼女の輝きは変わってなかった


会社の誰も彼もが完全に切れてて真っ暗だったから彼女の輝きを見てやっと大切さに気づいたんだ

結婚のきっかけだったかな


仕事はそのすぐに辞めた

それからは意識して繋がりを大事にして生きようとしたんだ

だからまた繋がれたし輝きも取り戻せたよ


こうして小さいが個人でお店が出来て家族を養って来れたのもあのときの気づきのおかげだ


うん 確かにね 寂しいよ

でもね 彼女は最期まで繋がってたし あんなに痩せたけど輝きはあの頃と変わらなかったんだよ


そして彼女はその繋がりに引っ張られるように去っていったんだ


綺麗だったよ


私は必ず彼女に会いに行くよ

だから最期まで大切にして生きるんだ


思い返したって これ無しに生きてくる事は出来なかった

これは言ってみれば人生の土台なんだよ

覚えておきなさい 

君はまだ繋がっている


それを大切にね





パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉



【2つめのPOV】シリーズ

第1回「土台」



おわり



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