新シリーズ 【2つめのPOV】企画説明:後編その2 (No.0136)


後編その1のつづき

この企画にある4つのパターン、もしくはフィルターやエフェクトといっても良いですが、それを全く説明なしにではどうにも出来ませんから、それぞれの例をあげることで説明することにします。


パターン〈ユスタシュの鏡〉



「ほんとうのことを伝えたい」


[side:F]


おたまじゃくしは母であるカエルに聞きました。


「私は何処から来たのでしょうか?」


カエルは答えました。


「あなたは私が作りました。」


おたまじゃくしはまた聞きました。


「母は何処から来たのですか?」


カエルはまた答えました。


「私の母が作りました。」
「あなたの母はどこから来たのですか?」
「母の母が作りました。誰でも母が作るのです。」


おたまじゃくしは暫く黙ったあと、こう聞きました。


「それでは、一番最初の母は誰が作りましたか?」
「けろけろ」


カエルは何処かに飛んでいってしまいました。


そのおたまじゃくしも、今や立派なカエルとなりました。
目の前にはかつての自分のようなおたまじゃくしが沢山生まれ始め、カエルの周りに集まり始めました。


おわり




[side:D]


私が4歳の時に弟が産まれました。
親や周りの振る舞いから、どうやらこの赤子は自分ととても似たものである事がわかり、病院から母が戻ると同時にこの赤子も我が家にやって来て、私へ接する以上にこの赤子へ愛を注いでいました。


父母が赤子に夢中であっても私自身もこの赤子が決して憎く思う事は無く、同じように幼いながらも赤子へ愛に似たものを持っていたと思います。


しかし私にはもっと強い関心事があり、それがあってか両親の愛の方向性に対しても嫉妬を思う事は無かったのです。


それは、この赤子が一体何処からやってきたのか?と言う事でした。
気づいたら病院で母の隣にいた赤子をみんなが口々に可愛いと褒めそやすのですが、何処からやってきたとは一言も話してくれなかったのです。


ある日、私は眠る赤子を見守る母に尋ねました。


「お母さん、この子は一体何処からやってきたの?」


母は子供らしい質問に笑って答えました。


「コウノトリさんが運んできたのよ。」
「鳥?が持ってきたの?」
「ええ、そうよ」


母の答え方には大いに疑問がありましたが、私はその答えを真剣に受け止めたのでした。


それから私は、父母と買い物に行ったり幼稚園に行ったりと外へ出る度に、空を飛んだり道や木に止まる鳥たちに目を奪われるようになりました。
私はその鳥たちの中に、弟を運んできた鳥がいるのだと思い、必死になって探したのでした。
何故ならその鳥は、きっと私のことも運んできた鳥に違いないからでした。


今にして思えば母がついた嘘には納得がいきますし、当然なんの恨みもありませんが、あの頃は本当に必死になって探していました。
もし仮にあの時に母が嘘をつかなければ確かに私はあんな苦しむことは無かったでしょう。
しかし、ではどう言えば良かったのか、と考えてみてもやはり答えは出ないのでした。


おわり




大変手探りですが、こんな感じに考えています。


つづく

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