【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 「モグラたちに気をつけて」:前編(No.0191)


 今は夏です。この季節はとても暑いです、当然のことです。
それにしても今年の夏はとても暑い。
その暑い中でみんな、なにかしかの用事があって、陽に照らされてふらふらしながらも出たり入ったりとしなければなりません。


しかしここにいる3匹のモグラたちが住むこの地面の中はというと、決してそんなことは無いのです。


地面を少し掘っただけで、すぐに冷たく感じるほど外とは温度が違います。
外を歩き回る他の動物たちと違って、涼しい地面の穴の中を行ったり来たりで生活できる彼らは、冬も夏も季節は関係なくなかなかに快適な生活を営んでいるのです。
気取った彼らはそれぞれが地面で拾ったペットボトルのキャップを頭に被り、ヘルメットの代わりにして洒落込んでいる始末です。


そんな生活が当たり前になっていつからか、彼らは地表で暮らしているものたちを小馬鹿にするようになりました。


赤いヘルメットがいいます。「奴らは馬鹿だ。ここはこんなに涼しいのに暑い思いしてあっちへふらふら、こっちへふらふらと歩き回っている。」


青いヘルメットがいいます。「俺たちは長いこと作ったこのトンネルがあるから、何処へ行こうとあっという間さ。雨も風も関係なしさ。」


黄色いヘルメットがいいます。「知能が低いんだ。陽にあたっているから頭が馬鹿になっているのさ。そうだ、空ばっかみて足元を見ない奴らをからかってやろう。足元の大切さを我々賢いモグラたちが教えてやるのさ。」


モグラたちは自分たちの生活に使っているトンネルを巧みに使い、あっちこっちへ走り回り落とし穴を作りました。
この落とし穴は地面の中から地表に向かって登りながら掘っていき、地表スレスレで掘るのを止めて作るので、外からでは全く見分けのつかない精巧な代物でした。


モグラたちはそこかしこに作ったこの落とし穴の様子を、地面の中から伺っていました。


当然こんなに精巧な落とし穴です。


誰も彼もがハマりました。
ズッポリ片足を捕られた動物たちが躓くさまを見てはモグラたちは大はしゃぎでした。


「モッモッモッ。愉快だ愉快だ。もっとやろうもっとやろう。」
「グッグッグッ。これで地表を歩く間抜けたちも足元に注意がいくだろう。感謝しろ感謝しろ。グッグッグッ。」
「馬鹿な奴らめ。痛い思いをしないと解らないなら我々モグラ様たちが教育してやるまでさ。ラッラッラッ。」


モグラたちは毎日毎日落とし穴をせっせとこさえ、その穴にハマり困ったり苦しんだりしているものたちの様子を見ては嘲笑い楽しんでおりました。


あるとき、いつもどおり落とし穴にハマる地上の連中の様子を楽しもうと、3匹がトンネルで様子を伺っていました。
しばらくすると地面の下に足音が響いてきました。


きたきた、と喜んだ3匹は、ズボッとハマり情けない声で慌てふてめく姿を今か今かと待ち構えていました。


しかし、その足音はモグラの落とし穴にハマること無くそのまま過ぎていってしまいました。

驚いたモグラたちは、

「なんてことだ。我々の落とし穴に落ちること無く行ってしまったぞ。」
「こんなこと今まで無かったぞ。どういうことだ? 我々の落とし穴がイマイチだったに違いない。」
「そうだ、そうに違いない。ならばもっと沢山、もっと精巧に作るのだ。あの足音の奴はきっとまた来るぞ。次は悲鳴を聞かせてもらう。ラッラッラッ。」

つづく

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