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"仕立て屋のサーカス" 長崎・波佐見公演



"仕立て屋のサーカス"、本当は4月の横浜に行くはずだった。しかし、曽我大穂さんに教えてもらった日程か違っていた。結局、その時は、飛行機のキャンセルがもったいなく、そのまま渋谷で"さらさ"さんのライブを聴いた。8月の金沢は台風接近で飛行機が飛ばなかった。そして3度目の正直で、長崎・波佐見へ。

ここからかつて実家のあった町まで車で20分ほど。波佐見には、母親に昭和50年代前半に連れてこられたかすかな記憶がある。焼物の町なので、陶器市にでも連れてこられたのか…。

サーカスを一番最初に見たのは、やはり昭和50年代、全国巡業でやってきた矢野大サーカス。強烈だった。
中国の広州で、見世物小屋的なサーカスを見たこともあったし、カナダのバンクーバーで、シルク・ド・ソレイユも見た。

バルセロナから1時間ほどのマンレサという小さな街で開催される、舞台芸術のショーケース「Fira Mediterrània」で披露されたサーカス/ circo。(2019年10月)

直近だと、2019年、スペインのマンレサという小さな町でみた、circo。街の広場で、大道芸のような小規模のサーカスチームが、シンプルな舞台装置を据えつけて、お笑いを交えたパフォーマンスを披露していた。もの凄い大ウケでサーカスの見方が変わった。"仕立て屋のサーカス"は、ヨーロッパでの公演を何度も行っているだけに、こうしたところが下地としてあるのかもしれない。

"仕立て屋のサーカス"の公演会場には、市がたつ。
私はイタリアのワインをいただき、パエリアを喰らい、本屋で久々に目にした片岡義夫の小説を手に取った。子どもたちは賑やかに会場中を走りまわっている。中央には布で覆われた舞台。その上にも観客が陣取り、食事や会話を楽しむ。天井からは何本もの布が垂れ下がっている。会場には耳慣れない外国の音楽が延々と流れている。
ここに広がる風景は町そのものだ。そこには人々の日常の営みがあり、コミュニティのようなものが自然発生的に生まれているようにも感じる。曽我さんは、サーカスがやってくる町(空間)そのものも作りたかったのだなと改めて感じた。

ライブでも芝居でもない、不思議な舞台。曽我大穂さんは、CINEMA dub MONKSや、ソロ活動で積み重ねてきたパフォーマンスを、よりサーカスに寄せたアレンジで披露する。服飾家のスズキタカユキさんは、ミシンを走らせ、布にハサミを入れ、結び、広げ、会場中を忙しく行き来する。
一応の段取りはあり、それぞれの表現は細部まで計算されているのだが、即興性や偶然性のための余白部分が多く残されたパフォーマンスからは目が離せない。それでも日常的な睡眠不足と久々のアルコール摂取で二度ほど寝落ちした。でも、おそらくそうしたことさえも織り込み済みと思えるように自由なムードのまま、時は流れていくのだった。

終演後、曽我さんに打ち上げに誘われたものの、宿に膨大な宿題を抱えたままだったので遠慮した。それでも氷点下に迫る極寒の夜道を歩きながら、行けばよかったかなと、少しだけ後悔した。

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仕立て屋のサーカス
Circo de Sastre / シルコ・デ・サストレ
2024年 沖縄公演
出演:曽我大穂(Daiho Soga)・スズキタカユキ(Suzuki Takayuki)ほか

仕立て屋のサーカス / Circo de Sastre
2014 年に設立。音楽家「 曽我大穂 」が主宰・演出し、服飾家など様々なジャンルの制作プロジェクトチームで構成される、サーカスのような舞台芸術グループ。
職人やパフォーマーの動き、舞台装置そのものが、音・布・光と一体となり、目まぐるしく変化する「ものづくりの物語」を演出。
歴史家、文化人類学者、映画製作者、地方自治体、美術館、出版社など、さまざまなパートナーとともに、2014年の初演以来、金沢21世紀美術館、 神奈川芸術劇場、京都芸術センター、海外ではフランス、スペイン、インドネシアで6,000人を動員し、各地で熱狂的な支持と拍手喝采を浴びている。

公式サイト:https://www.circodesastre.com/

日程:2024年2月3日(土)・4日(日)
会場:ミュージックタウン音市場(沖縄市上地1-1-1 3F)
時間:2/3(土)<昼>開場12:00 開演13:00
   2/3(土)<夜>開場17:30 開演19:00
   2/4(日)<昼>開場14:30 開演16:00

詳細
https://www.otoichiba.jp/event/240203circodesastre/


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