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禍話リライト「つらら女」

 俺の親戚のおじさんから聞いたんだけどさ。
 おじさんは寒い地方の出身で、若い頃、近所につらら女が出るって噂を聞いたんだって。なんか、山道があって峠の茶屋みたいなのがあって、そこに出るんだって。つらら女が。
 で、友達と一緒に行ってみたらしいんだ。
 つらら女って言ったら雪女の別名みたいなもんだろ、出てきてもお湯かけりゃいいんだ、ってことで魔法瓶というか保温できる容器にお湯入れて、それを持ってね、行ったんだって。
 つらら女が出る時間ってのも決まっててさ、ボロボロになってる峠の茶屋のまわりをぐるぐる歩いてればそのうち出てくるんだと。
 だからおじさんたちもその時間にぐるぐる回って、そしたら本当に出たらしいんだ。
 ……ただ、あのー、つらら女って名前からな、おじさんは雪女みたいな着物の女とか風呂に入ったら溶けちゃうとかそういうのを想像してたんだけど。違って。
 ボロボロの服着た女がね、顔面につららが突き刺さってる状態で出てきたんだって。
 みんなウワーって逃げたって。
 お湯かけて抵抗とか無理じゃん。
 地元の人に聞いてみたら、むかし行き倒れみたいになった女がいたらしいよ。食べ物くれませんかって茶屋に行ったけど店が閉まってたんで軒下で寝て、そしたら軒のとこのつららが落ちてきて顔に刺さって死んだって。
 それ以来、夜中になると女が茶屋のまわりをぐるぐる回って食べ物くれって言うとかで。それで峠の茶屋は廃業しちゃったんだってさ。

※「震!禍話 第十五夜」より

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