Help!
「だ、誰かぁ〜」
俺は非常に困っていた。
約3時間前。
「あそこに小さく見える無人島で写真撮ったらバエルんじゃね?」
そんな浅はかな考えで小さな小舟に身一つで乗り込んだ俺。
意気揚々と漕ぎ出したものの、横風と波にお煽られて、小舟はあっという間に無人島とは別の方向に流されてしまった。
「こ、困ったな…」
食料も水さえも持っていなかった俺は、自分の計画性のなさに愕然としていた。
しかも、
「さ、寒い…」
今日は1月18日。
もちろん季節は冬。
当然のように海面は冷え、しかも強い風まで吹いている。
さらに最悪なことに、
「ゆ、雪?!」
今朝のニュースで言っていた。
今日は今年一番の寒波が到来する日で、滅多に雪が降らない地域でも積もる恐れがあるだろう。って…
一応お腹にカイロは貼っているものの、それくらいじゃまかないきれないぐらいの寒さに、俺は身を縮めて震えていた。
「ど、どうしよう。
このままじゃ俺、遭難してし…」
最悪の状況を想像して硬直する体をなんとか奮い立たせて、
「だ、大丈夫。大丈夫だ」
オールを持って漕ぎ出した。
とは言え、あたりは見渡す限りの地平線。
雪で視界が悪くなっているのもあるが、無人島どころか岩陰すらも見えないのだ。
しかし、だからと言ってこのまま何もせずに諦めるわけにはいかない。
「と、とにかく、まっすぐ漕いで岸を目指そう」
目印なんか何もなかったが、とにかく自分の信じるまっすぐに向かって必死に漕ぐ。
漕ぐ。
漕ぐ。
次の瞬間。
ビュウ!!!と大きい風が吹いたかと思うと、俺はオールを落としてしまった…
「あぁ…どうしよう…」
もうお手上げだ、どうすることもできない。
こうなってしまうともう諦めの境地だった。
俺はこのまま海の藻屑になるんだ…
あぁ寒い、手足の感覚が無くなってきた…
なんだか眠いし、もうこのまま寝ちゃおうかなぁ…
あ、あそこで手を振っているのはばあちゃんだ。
いなぁ、ストーブの前に陣取って、あったかそうだなぁ。
俺も早くそっちに行きたいよ…
え?何か言ってる?
こっちに早く来いよとかかな?
なになに?
「・・・だよ」
何?聞こえないよ!
「・・・したら・・・だよ」
聞こえないってば、もっとおっきい声で言ってよ!
「海で遭難したら118だよ!!!」
「は?!」
俺は謎のばあちゃんの言葉に眠気も吹っ飛んで飛び上がった。
そうだ、俺、スマホ持ってたんだった!
慌ててポケットからスマホを取り出して電波を確認する。
「やった!普通に通じるじゃん!」
なんで今までスマホを持ってることに気づかなかったのだろうか…
全く、自分のアホさに笑いが出るよ。
そうして俺はここから一番近くにいるであろう人に助けの電話をかけた。
プルルルルル
プルルルルル
ガチャ
「あ、ばあちゃん?
実は今海で遭難してて、助けて!」
「孫よ、海で遭難したら118じゃ!」
* 1月18日 118番の日 *
海上保安庁が2011年から実施。
海上保安庁への緊急通報用電話「118番」を広く知ってもらうための活動が行われる。
海で遭難したり事故に遭ったり、何かあったときは「118番」!
みんな覚えたかな?!
[ あとがき ]
ちょっと短めの話になっちゃいましたが、海難事故は118を伝えられて良かったです!(別になんの関係者でもないw)
ちなみにばあちゃんは生きてますw
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