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短編小説

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気軽に読める短編小説。昔のものから最新のものまで、PCの中に眠っていたものを取り出してお届けします!
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#失踪

【短編小説】MISSING 3.どこにもいない人、Nowhere Man

遅い梅雨が始まった。今日も朝からざあざあと雨が降り出した。翼が濡れるとこんなに重いとは知らなかった。羽が乾く間もなく雨が降る。雨が止んでいる少しの間も、空気は湿気を含んでいる。体が弱ってきていた。 そのまま屋上に身を潜めて一日を過ごしたが、結局家に帰ることはできなかった。家には黄色い帯が張回され、警察が最低一人、常にその場を監視していた。住民たちは僕が人を殺したと言った。誰かは僕が行方不明になったと言った。また違う誰かは僕が自殺したとも言った。それもそうで、ここ数か月間僕を見

【短編小説】MISSING 2.失踪、Missing

その日以来、夜の空を飛ぶ日が多くなった。都会の夜は眠れない人も多いけど、ある瞬間になると、みんな眠りにつく。待っている間、そのような瞬間は必ず一度はやってきた。都市の夜は相変わらず美しかった。一つずつ街の明かりが消えて、まだ眠っていなかった窓の明かりも全て消える。その時が、僕が一日を始める時間だ。夜が明けるまではわずか1、2時間しか残っていないが、僕は外出の準備をする。 そうしている間、翼は少しずつより元気になって輝いていた。空を飛びことも一層楽になり、夢のように角度を調整し

【短編小説】MISSING 1.翼、Flying

空を飛ぶ夢を見る。それはどういう意味だろうか。重力を軽く遡って空を飛ぶ。空気が割れて髪の毛がひらひらとなびく。そして夢は青色に変わる。視界の中には青空が果てしなく続くだけだ。朝になって目を覚ますと、窓の外に青空が見える。生まれたての空だ。一晩中、僕はあそこを飛び回っていただろうか。ぼうっとしているうちに、また眠りにつく。そしてまた空に飛んでいく。ゆらゆら… この頃は眠りにつくのが怖い。睡眠の通路に足を踏み入れた瞬間、必ず現われるその青色がうんざりするほど長い。起きると肩が痛