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無罪

愛について考えろといった

愛について考えてない人間なんていないと言われた。
愛については、経験から知るんだよ、と言われた。

私だけが、愛について考えていると思っていた。
愛についてが何か分からないまま、人々は愛を歌っているのだと、ぺらぺらの白紙の回答用紙を答え合わせする気持ちで眺めていた。
全て間違えていた。
月だと思って毎日祈っていたものは、太陽の抜け殻だった。
私だけがアルファベットを読めると思っていたのに、他の子達はとっくにフランス語を読んでいるような恥ずかしさが私の心臓をバーナーで炙った。炎の中、綺麗なものは燃えるのだと、黒くなっていく腕を眺めて思った。焦げ付く匂いがした。臭い、鼻をつまむ。

私の語る愛は、全て誰かと誰かの間に生まれた愛であることに気付いてしまった。
可哀想だと思っていた死刑囚達が、観客に変わる
私は死刑台に立つ。
死刑にしてくださいと、神様に祈る。
愛を盗んで、愛を捏ねくり回して1人遊びの玩具にしてしまった罪で、死刑になりたかった。
その、罪の名前を私にして欲しかった。

無罪と、冷酷な鐘がつげる。
観客達がつまらなそうに帰っていく。
エンターテイメントにならないのですか?私の、罪は、娯楽にしてもらえないのですか?泣き喚く私を横目に、ギロチンが片付けられる。

愛について考えて、愛について書いても、愛の前髪も掴めなかった。
愚かだね、って、笑った君が、1番私を愛していること、一生気付かないように、星を飲み込んだ。
無罪と書かれたインクの匂いが私の体に疎に染み込んでゆく、藍色になる。

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