22.生贄になっても構わない。
ラクロスの育成コーチ時代の教え子たちが、いよいよ4年生になりました。
個人的にとってもリーグ戦を楽しみにしていたのですが、このコロナ騒ぎの中、なかなか思うように練習ができないようで、何人かの教え子に連絡を取ってみると、みな口をそろえて「ラクロス全然できてないです」とのこと。
ラストシーズンなのに思うように練習もできず、シーズン当初に計画していたスケジュールもままならないままリーグ戦に臨まなければいけないと思うと、もし自分が今の4年生だったらすごく不安になるのは間違いありません。
とはいえ、何かしらしてあげられたらなあとは思うので、ここはひとつ、元コーチらしく「4年生の心の持ちよう」についてちょっとしたアドバイスをしようと思います。
4年生になると、周りは後輩だらけですから、自分が上手くなってリーグ戦で活躍することはもちろん、「後輩に何を遺せるか」ということを何かしら考えると思います。同じポジションの後輩に技術的なアドバイスをしたり、ごはんに連れていったり、人によって何をするかは様々だと思いますが、もし、チーム全体のことを考える余裕があるのならば、「後輩たちが楽しく、生き生きとプレーできて、かつ勝てるチームになれるだろうか」ということをちょっと考えてられるとすごく良いことだと思います。
僕が4年生だった時のことを話しますと、僕らの学年は弱い代だとしょっちゅう先輩から言われており、実際、3年生の時のリーグ戦経験者は数人程度という状況で、例年と比べて実力・経験共に劣っているのは明らかでした。
とはいえ、僕が入学してからの3年間、あれだけ「強い強い」と言われていた先輩たちは、結局一度もファイナル4に進むことはできず、優勝争いからはしばらく遠のいていました。
毎年悔し涙を流しては引退していく先輩たちの姿をみていると、どうも僕には、引っかかるものがありました。毎年、リーグ戦が近づくと、Aチームの内部はギスギスとし始め、幹部とそうでない選手との間に溝が生まれ、その溝はリーグ戦で勝てないことによりさらに深まり、結局わだかまりは最後まで残り、追いコンでは何人かの先輩が「今の戦略・戦術では勝てない」と苦言を発する、という有様でした。
僕はこの様子を見ていて、ずっと「もっと伸び伸びとやればよいのになあ」と思っていましたし、弱いと言われている自分たちの代が、今までと同じことをやっていても到底勝てる気はしなかったので、どうせなら僕らの代で戦術やらなんやらガラリと変えてしまおうと思いました。もしそれで失敗しても構わないと腹は括れていましたし、僕らの代で結果が出なくても、これをきっかけにチームが変わって、後輩たちが伸び伸びとプレーしてくれれば良い、言い換えれば僕らは生贄になってもいいやくらいの気持ちで、ラストシーズンに臨みました。
チームとしては、主将の立川を中心にかなり立て直しをしてくれました。例年と比べるとかなり自由度も上がりましたし、リーグ戦期のギスギス感もそれほど感じなかったので、良かったんじゃないかなと思います。結果として僕らの代はファイナル4には進めませんでしたが、その次の年、後輩たちがファイナル4に進んでくれたのはすごく興奮しましたし、ちょっと胸が熱くなりました。
僕個人としては、具体的に何か形に残したことは多くはないですが、いろいろと意識していたことはあります。いちばん意図的に行ったのは、ゴーリーの地位を下げることです。下げるというと悪く聞こえますが、むしろそれまでがゴーリーが威張りすぎなんじゃないかと思うところもありました。「DFはゴーリーの奴隷だ」なんて言葉も聞くくらいで、ミスしたらものすごい罵倒を浴びせられる先輩DFたちの姿も見ていましたので、自分はそういうキャラじゃないし、それじゃあDFも伸び伸びプレーもできないだろうと思い、あんまり罵倒はしないように心がけました。もしDFにミスがあっても、ビデオ反省でいじって笑いにして、恥ずかしがって反省してくれたらいいなくらいに考えていました。
お陰でゴーリーが変に威張るという雰囲気は無くなりました。が、そうなると今度はチーム内におけるゴーリーのカリスマ性みたいなものが弱まってしまうのか、有望な新人がゴーリーに集まらなくなってしまったみたいでした。ですので禊ぎの意味も込めて、僕がコーチの時には有望な1年生をゴーリーにしました。彼ならビシッと厳しい言葉を放ったとしてもキャラに合ってますし、それに実力もありますから、ちょっと下がってしまったゴーリーの地位を再び高めてくれるでしょう。
ちょっと自分を良く書きすぎたかもしれません。4年生のリーグ戦を振り返ると、もっとシュートセーブできただろうとか、クリース外の目立つプレーに走りすぎてるんじゃないかとか、お前偉そうなこと言ってるけど、東大戦とか結構敗因だぞとかぞ、いろいろと戒めてやりたくなることもあります。
が、4年生にとって大事な心構えにフォーカスすれば、先にも言った通り大事なことは「後輩たちに何を遺せるか」の1点につきます。自分より上の代が、良い成績を残せていないならなおさらのことです。自分たちの代で失敗したくない、という気持ちもあるかもしれませんが、上手くいってない時こそ、ちゃんとチームを冷静に見つめ直して、極端な考えかもしれませんが「自分たちの代が犠牲になったってかまわない」くらいの気持ちでやると、割と腹が括れて思いっきりやれるもんです。
「自分たちの代が結果を残す」ことだけ考えるんじゃなくて、来年、再来年と後輩たちことも頭の片隅で考えて行動できると、良いんじゃないかと思います。そしてそういう人は、だぶんステキな大人になります。モテるかはちょっとわかりませんが。
ちょっと押しつけがましく、説教臭い内容になってしまいましたが、これにて締めさせていただきます。
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