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終わってる部屋の掃除をした

俺の部屋は終わっている。


初めてオモコロに載った記事の冒頭


2回目


その次


最新

終わりたくて終わっているわけではない。
どうしても「自室の掃除」という行為を行えず、つもりにつもっていったゴミだの要らんもんが積み重なってこうなっている。
ただ自堕落な人間というには明らかにラインを超えているので、精神科のお世話になれば何らかの病名が付くことは明らかなのだが、現状命に関わる訳でも治療すれば治る訳でもなさそうなのでそのままにしている。

していた。あの日まで。


ある日、電話がかかってきた。

「◯◯(この部屋の賃貸管理会社)の者ですが」
「えっ」
「基本的に平日日中はご不在ですよね」
「はい」
「今度火災報知器の交換工事がありますので、日中にマスターキーでお部屋に入らせて頂きたいのですが」
「えっ」

マズイ。

ぶっちゃけ、退去時にウン十万と修繕費を取られる事自体は覚悟しているのだが、それはそれとしてオーナーに部屋の現状を知られたら即座に退去命令を出されてもおかしくない。(いや実際には家賃をえげつない位滞納してたりしない限り無理ではあるが)

掃除をするしかなくなった。

目標ラインは「一般的には汚いと言われる部屋」。きれいな部屋まで高望みはしないけど「人間が住んでる範疇」にまではしないといけない。

部屋を掃除しよう。

そもそも、この部屋の掃除を困難にしている理由は2つある。
1つ目が先程述べた俺の性根、
そして2つ目が「物がありすぎて掃除するスペースが作れない」というもの。

掃除するとなればゴミをごみ袋に詰めたり、紐で縛ったりして外に出して……となるだろうが、まずそれが困難なのが俺の部屋だ。
「箱入り娘」というスライドパズルがある。僅かなスペースをやりくりして奥のデカいブロックを外に出すパズルだが、それをイメージして欲しい。俺の部屋はアレに全マス駒が入っていて余剰スペース0の状態だ。

単純に「まとめたゴミを置いておくスペース」すらもなく、部屋の外に持ち出すのも苦労するので全然掃除出来ない。物を整理するには物を動かす必要があるのに、それをするスペースがないから掃除が出来ない。

俺が取った解決策は「気が狂いそうになりながら家の端っこから順番にゴミを捨てていく」という方法。さっきのパズルで言えばまず入り口の2マスを排除してゲームを成立させる感じ。

最初っからそうしろじゃねえんだ。出来てたらこうはなんねぇんだよ。
世の中の掃除術とか収納術は「そういう事ができる人」という地盤があってのものだ。
常識的に考えてそうなる前になんとかなるはずの事がなんとかなってない時点で特殊な生物だと認識して欲しい。

ちなみに俺の住居はいわゆる玄関がキッチンに直結しているよくある1Kの部屋だが、そのKの部分から作業に取り掛かった。Kの部分を記事に写した事はない。俺が記事で見せている俺の部屋は「比較的見せていい領域」だけであり、キッチンはその範疇から外れていたから。

こうしてキッチンに鎮座していた諸々の恐ろしい物を撤去し、まずは「ゴミを外に出せる状況」を作り上げた。

ちなみに今後も作業中の写真はほぼない。
まず作業中にいちいちスマホ取り出して撮影するのが大変なのもあるが、そこには本当の意味で見るに堪えない光景が広がっているからだ。

堆積しているゴミをめくると床にたどり着くが、一定の確率で数十の虫のコロニーがそこにある。
ゴキブリみたいなキャッチー(?)でポピュラーな虫ではない。体長数mmの、小さなミルワームのようなうにょうにょした奴らだ。
そいつらがいてもいなくても、地層の最下層には概ね砂のようなサラサラした粉が堆積している。
文字だけの情報だとしても、状況からして、これを真正面から「砂だな」と判断する人はいないだろう。

俺の部屋掃除は、そういう「負の汚さ」で構成されている。例えばこれがゴキブリの群れだとかネズミの死骸みたいなド派手に最悪な物が出てくるなら「やべー!」と多いに盛り上がる事ができる(同時に多くの物を失いながら)が、実際には決して大きなイベントは起きず、それでいて100人中100人がしっかり不快になる光景しか広がらない。

俺の部屋はマクロ視点では派手に終わってるが、作業中の手元にクローズアップすると存外に地味で、それでいてただ確実に嫌な気分になる。

こうして掃除した結果が初日の写真だ。

この時点でゴミを回収しにきたトラックのドライバーが二度見する位のごみ袋が出ているが(俺の住んでるアパートは前日からぶっ込んでおいて大丈夫なケージみたいなものがある)ぱっと見の進捗は限りなく0に近い。

あの、これは本当に部屋が終わってる人しか知らない事なんですけど(ここからAIひろゆき)
数年間蓄積されたゴミって一種のデフラグというか、最適化状態なんですよ。
圧縮とも違うんですけど、積み上げられてるうちに効率的に、隙間なく詰まっていくんですよね。
なので、掘り起こして袋に詰める、という作業を行うと「増える」んですよねゴミって。
服をしまう時って綺麗に畳んだ時とくしゃくしゃ丸めた時で体積違うじゃないですか。僕の家の掃除って、いうなれば畳まれた服をくしゃくしゃにしながら袋詰めする作業に等しいんですよね。

そういうのはともかく、質量的な成果(捨てたごみ袋の量)に対して実質的な達成度(部屋が綺麗になる領域)があまりにも少ないので心が折れそうになっていた。誰か助けてくれ。家には上げたくないから俺んちの外からなんとかする手段で。

次の日のツイート。

今考えると金色のガッシュのデモルト戦(天井の石から放たれる体力と魔力を回復する光を常に浴びながら戦うボス戦みたいな)と言いたかった。
どっちにしろ謝った方がいい。

掃除してると当たり前みたいに記憶にすらないものがどんどん発掘されていく。年単位で昔のものとかも。現在だとデザインが変わったお菓子とか、とっくに終売になった飲料のペットボトルとか。ゴミばっかじゃねーか。

見た目的な成果が上がってきたように見える。

が、実際には「終わり」が部屋の片方に寄っているだけ。
いや、寄せたら床が見えるようになっただけマシではあるのだが、多分まともな部屋の人から見たら月の残業時間が200時間から180時間になりました!位の改善でしかない。

懐かしいものがどんどん発掘される。

やたらPS2のソフトが出てくるのは、昔ゲーセンのコミュニティ大会に参加したりしていた頃に
「賞品としてアレなゲームを投げつけて複雑な気持ちにさせる」という嗜みがあった為。PS2は手頃なそういうソフトが豊富だった。

全然進んでない。

アイマス(ミリ+765)グッズが諸々出てくる。当時激ハマりしていた為。

あと同人誌ね。

東方→アイマスと渡り歩いたので凄まじい数と恐ろしい多様性の同人誌が数百、いや数えてないが4桁ある。自分で刷った時に届いたダンボールの大きさを考えると……

特にミリマスがまだメジャーではなかった頃は、アイマスオンリーやコミケですら余裕で数え切れる程のサークル数しかなかったので
「ミリ本出してるサークル全部買う」をマジでやってた。だからある意味すげぇ貴重な本とかも持ってた。友達に貸してから返してもらってないので手元には残ってないが。
いや貴重かどうかで言えば俺は中小規模サークルからものべつ幕なしに回っていて、8~9割の本が再販とかされないので、ここにあるほとんどの本がこの世に数十冊しかない貴重な本だ。同人ってマジでそう。50部売れるサークルはもう中堅と言っていいレベルな気がする世界だけど、それでも読んだ事ある人は50人しかいない。すごいね。

俺の本もそうか。noteに公開した日記は千人以上の人が読むし、書いた記事は月間PV2千万のオモコロに掲載される。
でも俺が必死こいて書いて身銭切って刷った本はどうあがいても数十人の手にしか渡らない。
じゃあ頒布した時の満足感が日記や記事の数百分の1かというと全くそんな事はない。
俺のサークルまで来て、新刊一部下さいと声をかけられ、幾ばくかのお金と交換する形で俺の本を渡す。
トぶぞ。マジで。
俺も買う側に回ってた時期が長いからわかるが、そのサークル主を特に寵愛しているでもなしに「なんとなく欲しいから下さい」というのがあると思う。
でも、その「なんとなく下さい」を受け取るサークル主が手にする幸福はそちらが差し出した金銭の数十倍の出力を持っている。こんなに効率のいい他者肯定はおそらく存在しない。日常生活に上乗せして心身を削る数週間も、確実に赤字になるのがわかっていながら費やす費用も、灼熱、あるいは極寒の中スペースで座り続ける時間も、全部その瞬間にペイできると断言できる。

頒布数を読み間違えて大量の残部を持ち帰る事になると凹むし、大手サークルみたいに人がひっきりなしに来る訳でもないけど、やっぱり、同人誌を頒布して「一部ください」と言われると死ぬほど嬉しくて、次も頑張ろうってなるので、一次だろうと二次だろうと創作に興味があるなら一度飛び込んで欲しい世界だ。それが買い専であっても。

まぁあと、これは同人誌に限らないんですけど、感想のツイートとか貰えるとですね、威力倍増っていうんですか?うっすらアイコン覚えて認知しちゃう位に嬉しいはずなんでね、サークル名とか作家名とか本の名前添えて感想ツイートしていただけるとですね。ひへへ。

話を掃除に戻すか。

この時点で床のゴミの8割は除去出来た。多分8年ぶりくらいの出来事だ。

なので椅子を買い替えた。この部屋に越してきてからずっと使っていた椅子なので干支一週分部屋にいた奴だ。今まで床が終わり過ぎていて椅子を外に出す事も新しい椅子を入れる事も出来ていなかった。

誰だよテメーは。

マジな話をすると古い方の椅子は世間一般基準では完全に壊れていた。
左の肘掛けは数年前にブチ折れていたし、体重をかけるとグラグラしていたし、高さを調整するガス圧?が急に抜けてストンと椅子が落ちたりしていた。
いつかド派手にぶっ壊れて怪我しかねなかったし、そもそもライターを齧っていながら「家で椅子にまともに座れない」という状況が許容されるべきではないので急務だったのだ。

買ったのは安物だったが座り心地の進化がすごい。実際ガラケーからiPhoneXR(Xs廉価モデル)に乗り換えたようなもんだ。背中を預けてもぶっ倒れない安心感がある。普通の椅子には確保されてるべき安全性だが。

だいぶましになってきた。

ちなみにこのあたりで盛大に体調を壊した。
38度に届かない位の熱が出たのだが、同時に蕁麻疹とか出てたので間違いなく掃除の影響だと思う。
実際、念のため発熱外来に向かったがインフルもコロナも陰性だった。
「家が汚い」というのは人間からの視点で、いや確かに部屋にはホコリはたっぷり溜まっているのだが、堆積したゴミの底に沈んでいる奴らは中に舞う事はない。有効飛散粒子自体の割合が少ないからいくら部屋が汚かろうとアレルゲンの飛散量自体は大したことはない。

が、部屋を文字通りひっくり返すような大掃除をしたものだからそいつらが宙に解き放たれた。掃除機の類はあまり使わず、床拭きシートで拭き取る事であまり飛散させないようにしたのだが、家に存在するすべてのアレルゲンが牙を剥いてきたらマスク程度では防ぎようがない。

あ、ちなみにハウスダストアレルギー持ちです。花粉も駄目。

このへんからツイートが減っているが掃除を完全にサボった訳ではない。
ただ劇的な変化が訪れるフェイズはもう終わったので、あんまり上げる意義を感じなくなっただけだ。

あと、「収納」の為のグッズを買い始めた。人生で初であり、こういうBOXの名前が分からず「服 収納 5段」とかでAmazonを検索した。
「収納グッズは質量を減らす訳ではない」という認識から一切購入していなかった。
事実ではある。今までの家で収納グッズ買ってもただでっけぇゴミが増えるだけ。
ただ、家がここまできて「もしかして物って床に置かないほうがいいのか…?」という事に気が付きはじめた為、なんか重なってるケースとか色々買い始めた。お金が飛ぶ。そして買った事ないから「こういう奴」が欲しい時なんて検索していいのかすごく困った。

同人誌用のBOXも買った。
あと7箱は欲しい。安くねぇんだけどな。

まぁ、という事で掃除は一旦の区切りがついた。

実際はまだ汚い部分はある。机の上とか終わったままだし。
ただ、元の戦闘力が10万とか20万で戦っていた所を100まで弱体化させたので、10とか20は誤差過ぎてマジで気づけない。身体を100のスケールに慣らさないとこれ以上綺麗には出来ない。

という訳で掃除は一旦の区切りとしたい。ちまちま綺麗にしていく予定ではあるけど。
ようやく人としての生存権を取り戻した感じはある。
ある程度綺麗になった事で床にデカいゴミが落ちっぱなしになくなった。というか落ちっぱなしにしとくのよくないなと思えるようになった。
10万汚れてる所に10汚れても誤差だから無視出来てしまうが、100汚れてる所が10汚れるのは許容すべきではないスケール感だからだろうか。

という訳で極端に終わってる部屋ではなくなり、ライターとしてのアイデンティティを一つ失った形とはなりますが、今後とも御愛顧の程よろしくお願いします。

ちなみに工事が入ったのは掃除を始めてから3日後の午前中です。

この部屋の状態の時ですね。

全然間に合ってねぇじゃねえかよ。

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